アイルランド旅行記その1 ダブリン空港は緑だった


 

 日本からアイルランドへ直通便はありません。日本国内にアイルランドの
お金もないし、「地球の歩き方アイルランド編」は、注文せんと書店には
なく、情報量は少なく、しかも古い。学生に聞いてもアイルランドがどの
位置にあるのか、独立国なのか、正確に知っている子は少ないのです。
 今回CHILDREN'S LITERATURE NEW ENGLAND の開催校となったのがアイル
ランドのトリニティーカレッジであり、その全体テーマが「神話とメタフ
ァー」であったため、毎夏あるこのセミナーも例年になく大勢が詰めかけ
200人の参加者(多くはアメリカ人の、図書館司書関係者)を見ました。
講演者は、日本では未紹介のアイルランドの作家たちの他、お馴染みのア
ラン・ガーナー、スーザン・クーパー、タウンゼント、サラ・エリスらが
顔を連ねていました。一週間のこのセミナーに参加したのち、ついでにア
イルランドを探検すべく、夏休みにはいるか入らないかという7月8日、
ヒースロー乗り換えで、エアリンガス(おお緑のひこーきだ)に乗り、ダ
ブリンに向かったのでありました。
 エアリンガスの感想は1)機内食のステーキに歯が立たなかった
2)機内放送がさっぱり聞き取れず落ち込んだ 3)結構薄汚く、しょぼ
くれた飛行機だった 4)乗務員はとっても親切だったのですが、これら
の印象はすべてそのままアイルランド全体を象徴していると言えるでしょう。
 一時間でダブリンに着きます。緑のパッチワークのような牧場が下に広が
ります。と思ったらそれが空港でした。(「畑におりる気かいな」と真剣に
思ったぞ。)飛行機から降りてから、ターミナルまでとぼとぼ歩くってのも
はじめてやなあ。
夜だったので、といっても8時半はまだ日が照ってますが、タクシーで寮に
行ってもらいました。バカに話し好きの運ちゃんでしたが、これはアイルラ
ンドどこへ行ってもそうなのです。ダブリンの街の印象はなんといっても、
バイリンガル表示の珍しさ。AN LAR/CITY CENTRE (ほんとはLAR のAの上に
アクサンティブみたいなのがついている)というぐあいです。運ちゃんの話
では、子供はみんなゲール語を習うのだそうです。地方によってはゲール語
オンリー(特に西のほう)、第二外国語として習うところもあるとか。美術
館に行ってもゲール語のパンフはちゃんとおいてあるし、展示の説明もバイ
リンガルなのでした。
 このあと私は一週間トリニティー大学に、少し離れたアパートから毎日、
ダブリン唯一の目抜き通り、グラフトン・ストリートをうろちょろしながら
通いました。ダブリンは大都会だが、どこか鄙びて田舎臭い。親しみ深くし
ょぼくれてて、徹底的にゴミが汚い。(帰国してから大坂の街が実に清潔に
見えた)車が路上駐車じゃなくて、ほとんど捨ててある。(We don't park cars,
just abandon.と観光バスの運転手も言っておった)
セミナーが終わった次の日、私は西のスライゴーに向けて汽車に乗りました。
イエーツの故郷スライゴーまで、汽車で二時間、これで国を横断してしまうの
ですから、小さな国です。そして、ゴールウェイ、アラン島、リムリック、
キラーニー、コークをまわって、2週間後またダブリンに戻ったわけですが、
それぞれに街は違う顔があり、面白く思いました。
 赤茶けた煉瓦色のダブリンを東京とすれば、古い町、黒っぽく濡れたスライ
ゴーは奈良かな。小さいけれどスペイン風で、文化活動の盛んなゴールウェイ
は京都、リー川の港町コークは商業都市で大阪、キラーニーは観光地でおしゃ
れで軽薄な倉敷か、大きいんだけどどこか面白味に欠ける現代都市リムリック
ですが、名所旧跡への足がかりがいいという点でこれは名古屋だな。でもなん
と言ってもアラン島の言葉を絶するすさまじいまでの風景は、いくら観光客が
いても衝撃的でした。
 
 

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