<L.Aイングルウッド゙の第一旅館も中国人経営>
その時もクーポンブックを片手にL.Aでの最終日の宿捜しに車を走らせていたときのこと。
その頃から、L.A最終日は、翌朝少しでもゆっくりしようと空港の近くに宿を取っていたので、LA空港に近いイングルウッド辺りを流していたのです。クーポンブックに「第一旅館」というのがあって、値段の安さと入口の大きさにひかれて、ちょっと聞いてみるかと入ってみた。入口は大きくて、駐車場はその奥で広そう。とりあえず入口横に車を停めて、フロントへ。香港映画に出てくるような昔の男前風の中国系のお兄さんが「部屋はあるよ、クーポンも使えるよ」と鼻歌交じりにふんふんと答える。「部屋を見せて」というと、彼は鍵束を手に、ついて来いと手招きする。ここでまず、『あら、付いてくるのね』と、要注意信号。でもホテル自体は結構大きくて、パティオ風の中庭があったり噴水があったりして、決して中華風ではない。エレベーターで部屋へ。部屋も広いし、結構きれいだし、冷蔵庫だって付いてるし、テレビもリモコン付きだし、いいんじゃないのとフロントへ戻って手続き。が、その時バスルームをチェックするのをうっかり忘れていたのです。部屋に戻ってバスルームをチェックするとシャワーがちょろちょろしか出ない。これは困る、とフロントへ戻り、兄さんに訴えると、またもやふんふんと部屋へやって来て、あれこれシャワーをさわっていたけれど、どうもならず。彼は私達を振り返り、相変わらずのポーカーフェイスで、『OK、チェンジ ルーム』と歩きだした。あわてて荷物をかき集め、後を追う私達。廊下を横切り別の部屋へ、しかも兄さんは鼻歌まじり。ルームチェック、だめ、チェンジルーム。ルームチェック、だめ、チェンジルーム。「ねぇ、今夜はここ、全室空いてるの?もう疲れてきたよぉ。」しかしさらにバスルームチェック、兄さんがシャワーをひねる。そのとき真っすぐ向いているシャワーヘッドから真横にいる兄さんにまともに水が出た。おいおい。さすがのミスターポーカーフェイスもむっとした顔をしてる。
温厚な友達も、眉間にしわが・・・。「キャンセルしてよそにいく?」と言った途端に彼は少しあわてて、「大丈夫だから、部屋はあるから」と、エレベーターに乗り、別の部屋へ。
でも、もうその頃は私達から泊まる気はうせ、何とか難癖つけてキャンセルしてよそへ行こうと斜めに構えていたので、姑のように(?)部屋をチェックししていた。すると、どこからかオヤジがやって来て、いきなり日本語で謝りだす。『すいません、すいません、とてもすいません』最後のこの部屋はバスルームはOK。ところがテレビのリモコンがみあたらない、それを訴えると『とてもすいません』と消えたおやじが、リモコン片手に戻ってくる。『ワルイオキャクサン、モッテカエッタデスネ、すいませんね』悪いお客さん? え?でも「リモコンってどれでも使えるの?(使えたのです、それが)
もうこうなったら、どうしてもキャンセルしてよそへ行きたい私達が苦し紛れに、
『最初の部屋には冷蔵庫があった。』と訴えると、またもや『すいません、すいません』と消えた二人(どうもこの2人親子らしい)。どうなることかと、その部屋でぼうぜんと立ちすくむ私達の耳にチャップ、チャップと近づいてくる音が。まさか・・・
果たして廊下の向こうから、親子が冷蔵庫を2人で運んでくる姿が。うそでしょ。と目が点の我々の前でふたりして冷蔵庫を部屋にセッティングして、額の汗をふき『OK?』と言われた日にゃうなづくしかないでしょう。そして息子は再びポーカーフェイスで、おやじは『すいません、すいません、とてもすいませんねぇ』と後ずさって消えていったのでありました。
友人は『もう二度と中国系の宿には泊まりたくない』と、いまだに言っています。
そしてその後しばらくは2人の間で『とてもすいません』が流行った事は言うまでもありません。これはどうも『Very sorry.』の直訳らしいけど。
<旅の記録1996.秋;1泊$40+tax;同行者:T>