「膀胱尿管逆流症による腎臓の萎縮」に至るまでのこと
2001.7.1


 想は1歳6ヶ月にして左側の腎臓が機能しなくなりました。 正確に言うと 〜動いてはいるが腎臓としての機能ははたしていない〜 という状態です。 原因は尿の逆流でした。 尿管が先天的に太かったらしく、一方通行で排尿されなければいけないのに膀胱から腎臓に戻ってきてしまい、ダメージを与えていたのです。 症例としては珍しいものではないそうです。 手術で逆流を止めることもできます。 しかし想の腎臓はもう手遅れで、手術しても回復しないと診断されました。 これからひとつの腎臓だけで生きていかなければなりません。
こう診断された時、ショックで涙が止まりませんでした。 もっと早く、ちゃんと検査していれば、片方の腎臓だけで生涯を過ごすことなどなかっただろうに、、、。 私は申し訳ない思いで一杯で、病院からの帰り道、想を抱きながらボロボロに泣いて歩けなくなりました。 その時想はいつになくおとなしく抱かれていて、ほとんど私の顔を見ませんでした。 子供なりに何かを察したと思います。 あれは確かに意識して目を背けていました。 パパの泣いてる顔を見ちゃダメだと思ってくれているのが私にはわかりました。
 想は6ヶ月を過ぎた頃からしょっちゅう熱を出しました。 もちろん新米パパママはその度にオロオロしてすぐに病院に連れて行くのですが、たいがい“風邪”と診断されます。 様子をみましょうと言われ、2、3日すると熱は引いてきて、想は元気一杯になります。 この繰り返しと、「あまり心配しすぎないように」とか「男の子は弱いから熱がよく出るものだ」とか言われたりするものですから、こんなものなのかなという感じで過ごしてきました。
 しかし1歳になった時、また熱が出て病院につれて行くと、尿に菌が交じってるので尿路感染症だと言われました。 これは女の子によくある病気なのですが、男の子には珍しいので、一度精密検査をしたほうがしたほうがいいと言われ、そこで紹介してもらった医大病院で診てもらったところ、尿の逆流が発見されたのです。
 後悔をしてもどうしようもないのですが、私たちはとにかく病気には敏感で、ちょっとのことでも病院に連れて行っていたのに、目先のことだけしか見てやれず、大丈夫大丈夫という言葉を鵜呑みにして安心していたことを深く悔いています。 葉についた小さな虫を駆除するのに必死で、根っこが傷んでいるのに気づかなかった、、、。
 残った右側の腎臓にダメージがあるとこれは大事なので、次に高熱が出たら即尿が逆流しないように尿管を手術します。 それまでは薬で熱が出るのを防ぎ、成長にあわせて尿管が細くなるのを待ちます。 食事や運動に制限はありません。
 こんな状態ですが、想はいたって元気です! むしろ元気すぎて困っています、、、。 もし手術するようなことがあったとしてもすぐに元気になり、そんな記憶もないまま成長していくのだろうと思います。
 最後に、想の病状を案じ、私たち夫婦の落ち込みようにエールを送ってくれた皆様に感謝いたします。 夫婦は随分元気になり、私もようやくHPに残せるくらいに復活いたしましたので安心してください。 なかでも00年入社の会社の後輩31人には深く深く感謝しています。 皆様どうもありがとうございました。


   [病気の履歴]

    10〜11ヶ月 :  3日間発熱(38℃〜40℃)の後、3日平熱、また発熱の繰り返しが1ヶ月続いた後、1〜2日
                 間発熱後、6〜7日平熱、また発熱・・・の繰り返しが1ヶ月続く。

    1歳2ヶ月   :  38.5℃の発熱。初めて「尿路感染症」の診断。とりあえず様子を見ることに。

    1歳5ヶ月   :  38℃台の発熱。再び「尿路感染症」の診断。近くの大学病院に紹介状を持っていく。
                熱が下がるのを待って、検査が始まる。
                @造影検査/血管から造影剤を入れるパターンと、尿道から造影剤を入れるパターンで膀胱
                         付近のレントゲン撮影。
                →ここで膀胱から腎臓への逆流が発見されたので、腎臓の状態を見る検査を受けることになる。
                ARI検査(レノグラム、腎シンチ)

    1歳6ヶ月   :  検査の結果、左側の腎臓が萎縮し、機能が非常に低下していた。
                一旦手術により逆流を止めるという方針になったが、さらに大きい大学病院を受診し、とりあえず
                薬を用い、成長によって逆流が自然治癒するかどうかを経過観察することになる。

                手術によるリスク/逆流が再発したり、手術によって尿管が細くなったことで腎臓から膀胱に
                            尿が下りなくなることもある。    
                投薬によるリスク/尿路感染(腎盂・腎炎)による発熱があった場合(※)、一旦入院して右側
                            (良い方 ) の腎臓へのダメージを軽くし、その後手術をすることになる。
                            また、抗生剤(ホスミシン)を飲みつづけるので、抗生剤が効かなくなる
                            こともある。
                どちらにしてもリスクが伴うが、左側の腎臓の萎縮は手術しても治らない。
                1ヶ月に1度受診して、半年に1度検査をしながら1年間様子を見ることに。
                ※尿路感染(腎盂・腎炎)による発熱を繰り返すことで、どんどん腎臓にダメージがかかる。

    2歳0ヶ月   :  造影検査。今回は尿道から造影剤を入れて、逆流の状態を診る。
                結果、右側の逆流は完治、左側の逆流は4から3のレベルに改善されていることがわかった。
                →1日1回の投薬が2日に1回になる。
                1歳5ヶ月の時以来尿路感染症に1度もかかっておらず、今のところ安心している。
                また右側の逆流のように左側も完治する可能性が見えたように思う。あくまで自然治癒を期待。

    3歳4ヶ月   :  1年以上経った発熱。尿路感染の再発。高熱が一向に下がらず入院(1週間)する。
                これ以上腎臓にダメージをかけるわけにはいけない。3歳になっても発熱するようでは自然治癒
                の望みが低いと言われていたので諦めざるを得ない。手術の決意を固める。
                手術していただく病院を再考(熟考!) 結局かかりつけの大学病院にストレートに「子供の入院
                に適した病院を紹介してください」と相談し、いくつか紹介をいただいた。
                最初に訪問した病院の先生に、「手術は100%大丈夫。ご心配なく。」と言う心強い言葉を頂き
                とても安心した気持ち(自然治癒を望み、手術を躊躇していた気持ちは全くなくなりました)で
                お世話になる事を決める。

    3歳9ヶ月   :  いよいよ手術。詳細はココで!

    4歳4ヶ月   :  術後7ヶ月の傷口です。わかりますか?

        わかる?!
                 

                           
トップへ  手術のこと  もどる