1978年、学校を卒業して数年。そのまま近畿に居を構えた人、関東に移った人、あるいは故郷に帰った人、
皆、それぞれの考え、思いを抱いて社会に旅立って数年。みんなどうしていたんだろうか。
こんばんは。チョットお邪魔します。あら、嫌な顔なさらないで。
タバコなど一服なさって下さい。ステレオをお聞きになっててもよろしいですわ。
もう遅いからとなりに迷惑にならない様になさっててね。
こんど人が林立する大都会から、一面田んぼの田舎に引っ越しされたTさん。
三食、昼寝付き、晩酌付きの都会の天国、聞くところによると夜のバイト、
バー、キャバレー、クラブなどはそんなんやったらしいが、から一気に田舎の地獄へ落ちられたのです。
『毎度、こちらH建材店、田舎の出張所でございます。はい。
生コン5立方でございますか。A 、B、C 1対2対3のミックス、
それにぐり石と砂粒を練り合わせたもの。ハイ直ぐ手配いたしますでございます。
えっ、私でございますか。私、名うての手配師でございます。
失敗ばかりやらかすんですけどね。どうぞお見知りおきを。毎度おおきに!』
『どうしたこっちゃろか。昼になるといつもの癖で直ぐ眠とうなる。
職業病やろか。眠いのこらえて目え開けとくのしんどいわ。
けど眠るわけにゃいかんし、目え醒める様な可愛い子ちゃんはおらんし。
ま、このまましとこうか、しばらくするとまた失敗してビックリして目え覚ますやろ。
もう、目え覚ますのこれしかない、うん。』
『朝、8時出社、5時退社。けど残業もするんでっせ。
夜遅うてもかまわんけど、朝はしんどいわ。なにせ田舎やし、毎日車で行ってまんね。
わしの車、あんさんも知っての通りぼろでっしゃろ。いつエンコするか思ていつもひやひやしてまんね。
それで夜もろくろく寝られんと、いつも昼寝しまんね。』
彼の生活の一端を示せばこういうことでございます。
彼も今頃になって田舎へ帰るということは、多分親に責められたんでございましょうね。
『これ、Hや、いつまで水商売やるつもりなんじゃ。もうええ加減に家に帰ってこい。
まったくもう、頼りない長男じゃからに。都会で暮らしても食うだけで精一杯じゃろが。
お前の貯金を見てみ。財形貯蓄や、定期や言うとるけど、幾ら貯まったんじゃ。
ちょっと貯まった思たら、居眠り運転でおかましたり、駐禁に引っかかったり、いっこうに貯まりゃせんじゃろが。
それに、聞くところによると、お前、Mさんにお金を借りとるそうじゃのう。
はよ戻してあげんかい。Mさんもええお人やさかい黙っておられるけど、
いつまでも人の行為に甘えとってもいかんぞ。こんど行く時はお土産なぞ持っていってあげなさい。
はよういっちょ前の男になりんしゃいよ。』
『しっかりせにゃあかんぞ。近頃頭のてっぺんもはげてきとるごたるし、
母ちゃん、もう心配じゃ。母ちゃんがお前んためにええ嫁ごみつけたる。
よう気の付く愛嬌のある娘がええじゃろね。早よお母ちゃんに孫の顔ば見せておくれや。
それだけが楽しみじゃからのう。』
とかなんとか言われたんでございましょう。
後から読み返してみるとちょっと過激だったかな、そのまま掲載しようかどうしようかと思いつつ、
考えるの邪魔くさいためある程度当時のまま載せています。
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