目 次 (詳細)
第1章 酸化チタンはいかにして光触媒になったか 第2章 光と半導体の基礎理論 第3章 光触媒の反応機構 第4章 酸化チタン光触媒の高活性化の試み 第5章 光触媒の固定化手法と材料開発 第6章 光触媒効果の測定と評価法 第7章 光触媒の未来 付録 光触媒の参考資料 |
表紙カバーより
理工系学部教育を終了し、各自の専門分野で一定の専門知識があり、これから光触媒を研究しようと志す、大学院生、技術者、研究者のための光触媒入門。酸化チタンはいかにして光触媒になったのか、その歴史的、学問的背景を含め光触媒を理解するための基本をわかりやすく解説。日本で発展したこのすばらしい技術を研究するにあたって、科学的、論理的に正しい道筋をつけることができるように、重要な論文、最新の論文を読みこなすための基礎知識が本書から得られるように書かれている。
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正誤表 (2014.6.19)
ページ |
誤り |
訂正 |
3 | 表1−1の中、密度の単位(g cm3) |
(g cm-3) |
3 | 表1−1の中、ルチルの移動度1 |
0.1、有効質量と移動度に関しては下記のQ&A参照 |
8 | 3行目、八面体の8つの稜 |
八面体の12個の稜 |
8 | 12行目、互いに直行する |
互いに直交する |
8 | 表1−2の中、ブルッカイトの引用文献(8) |
(2) (大谷文章先生発見)詳しくは下記参照 |
9 | 図1−2の中、アナターゼの縦軸[100] | [001] |
25 | 図2−1の右の図の横軸中のA-1は |
αー1 |
34 | 10行目、波長に対する粒径の比 xは20 |
xは10 (横澤拓磨君発見) 注:xは(15)式で計算 |
43 | 式(22)は等式=ではなく |
比例式∝ (大谷文章先生発見) |
49 | 図2-18(引用文献18)の中で (O2/O2・-)の酸化還元電位は-0.563ではなく |
-0.33(還元電位)あるいは -0.28 (引用文献が古かった?) (内藤一也君 発見) |
61 | (2)T. Sekiyta, et al. J. Phys. Chem. Solid, 61, 1237 (2000) |
(2)T. Sekiya, et al. J. Phys. Chem. Solid, 61, 1237 (2000) |
62 | 文献(20)の中で;菊 地真一 |
菊 池真一 (高橋安明氏発見) |
67 | 下から3行目、昇温しても、 解離しないで表面に存在する |
昇温しても、脱離しないで表面に存在する |
69 | 下から11行目;図2−1 8 |
図2−19 (高橋安明氏発見) |
69 | 下から2行目;TiOH(ターミナル型)からH+が外れてTiO-が生じる |
OH-が外れてTi+が生じる |
76 | 4行目; ポリルビニルアルコール |
図2−1ポリビニルアルコール (高橋安明氏発見) |
78 | 図3-12; 超酸化水素のpKa 4.88 |
4.8 |
84 | 7行目 ; pKaが 4.88 |
4.8 |
86 | 下から6行目 引用文献(52) |
(51) (内藤一也君発見) |
88 | 下から7行目 イソブチン |
イソブタン (大西洋先生発見) |
95 | 3.8節、(a)光励起過程酸化 @チタンに光が...... |
(a)光励起過程 @酸化チタンに光が.. (平川力氏発見) |
98 | (12)式の中で、kh |
ke |
98 | 下から5行目、それぞれゼロとなり、(11)〜(14)式から |
(11)、(12)式から |
99 | 図3−28の説明文中,、アセトアルデヒド生成 |
ホルムアルデヒド生成 |
102 | (27)式の分子中、 khKD[Dad][SD]0 |
khKD[D][SD]0 (中林 亮 氏発見) |
103 | 図3−29の縦軸, 反応物質濃 |
反応物質濃度 |
106 | (34)式の中で、 k=k0exp(・・・). |
K=K0exp(・・・) |
109 | 9行目; γas |
γAS (高橋安明氏発見) |
110 | (17)O.I.Micic, et al. J.Phys.Chem. 91, 13264 (1993). |
(17)O.I.Micic, et al. J.Phys.Chem. 97, 13264 (1993) |
119 | 最下行、(001)面に 正が現れやすいということ |
(001)面に 正孔が現れやすいということ |
142 | 引用文献(2)の文献名: Cat. Let., |
Cat. Lett., |
143 | 引用文献(31)の著者名: M.C.Hidalgo,Colon, J.A.Navio, |
M.C.Hidalgo, G.Colon, J.A.Navio, |
153 | 13行め、 膜厚を調製する。 |
膜厚を調整する。 |
156 | 下3行め、 無過熱 |
無加熱 (高橋安明氏発見) |
185 | 上から4行目の照射強度;10Wcm−2 |
10Wm−2 |
187 | 中ほどの式の2つ目の積分、[NO]2dt |
[NO2]dt |
194 | 中段6行目、 平板法 |
傾板法 (高橋安明氏発見) |
210 | 図7-5キャプション、 光触媒の光活性を説明する |
光触媒の高活性を説明する |
214 | 図7-8キャプション、 タリウム |
タンタル(大西洋先生発見) |
215 | 下から5行目、 ノニフェノール |
ノニルフェノ−ル (高橋安明氏発見) |
234 | 光触媒フォーラム と光触媒製品技術協議会、 |
この2つの団体は合併されて光触媒工業会となっている |
237 | 索引中、 隠ぺい制 |
隠ぺい性 |
ブルッカイトの結晶構造については、「Crystal Chemistry and Refractivity」H.W.Jaffe(Dover,1988)のp.282に記述が有り、本書ではそれを図示したものである。「光触媒のしくみ」(参考資料3、p115)や「図解光触媒のすべて」(参考資料9、p119)ではこの表記の結晶構造を踏襲している。JCPDSカードでは表1−2で指数、hと、kが入れ替わり、図1−2の軸も[100]と[010]が入れ替わる。しかし、今後はJCPDSに従うのが適当と思われる。ブルッカイトの詳しい記述は、
「光触媒標準研究法」(大谷文章著、東京図書、2005)を参照されたい。
質問と回答
吉田征央君(電気通信大学)からの質問 (2010.2.4)
Q1:P59の量子サイズ効果の節の励起子サイズでアナターゼTiO
2は2.5nm、ルチルTiO
2は0.3nmと算出してありますがボーア半径の式に代入したのは電子の有効質量ですから、励起子のボーア半径ではなくて電子のボーア半径を算出したことにはならないのでしょうか? 励起子のボーア半径を出すなら電子と正孔の有効質量の換算質量をボーア半径の式の有効質量のところに代入するのだと思うのですが、どうなのでしょうか?
A1:疑問はもっともで、厳密にはそうですが、下記の質問にもあるように、文献の有効質量が電子か正孔か不明な点があります。ここで、測定されるのは、軽い方の有効質量です。換算有効質量の計算では、片方の有効質量が大きいとあまり効いてきません。報告されている有効質量の値のバラつきを考えると、およその計算には、小さい有効質量を、換算有効質量としても大差ないと思われます。
匿名希望の読者からの質問 (2007.2.5)
Q1:疑問点は、金属担持光触媒の還元力についてです。p132 図4-12によりますと、二酸化チタン(n-type)に金属が担持されると、触媒活性が向上します。特に、仕事関数の大きな金属(Pt)ほど、活性があがります。ここで、ひとつ疑問が湧きます。例えばPtが担持された場合、仕事関数が大きいことから電荷分離が促進されやすいと考えますが、仕事関数がこれほど大きくてはPtに移動した電子の持つ還元力がそもそも低下してしまうのではないか?という疑問です。Ptの仕事関数: ca. 5.4 eV (酸化還元電位に換算して、+0.9 V, p132 図4-12により概算)水素還元:2H
+ + 2e
- → H
2 (標準電極電位 0 V) 一般に、金属と半導体が接合した場合、界面にバンドの曲がりが生じることは存じておりますが、還元反応が起こるのは水溶液と金属の界面ですので、反応に関与する電子はフェルミ準位まで緩和しているのではないだろうかと考えました。
A1:その疑問はもっともだと思います。実際は,酸化反応で正孔が使われることにより,酸化チタン全体に負の電荷が蓄積されることで,伝導帯の電位は負にシフトし,0.0 V (vs.SHE,pH=0 で)より負になることで,白金表面では水が還元されます。詳しくは,種々の金属を担持した酸化チタン粒子の電位を測定した相樂隆正先生の論文(Sagara,et al.
J.Phys.Chem. 91, 1173(1987) が参考になるかと思います。貴君の仮説「Ptに移動した電子は、フェルミ準位に緩和する前に反応するので、還元力は二酸化チタンの伝導帯に近い。よって、反応する電子は十分な還元力を持つ。」に関しては,金属中での電子エネルギ―の緩和は,どの反応よりも速いと考えます。また,「そもそも、半導体と接合した金属のフェルミ準位は、金属単体のフェルミ準位とは異なっている。」に関しては,ここで想定しているフェルミ準位は仕事関数ですので,金属単体のフェルミ準位のことです。しかし,光が当たる前の準位であり,反応が起こると粒子自体が電荷を帯びてきてフェルミ準位が上昇すると考えています。
Q2: p51の2行目後半で、「pHと平行して金属酸化物のバンドの電位も同じだけ高くなるので」の箇所はどのように解釈すればよいのでしょうか? 水の分解に必要な電圧 1.23 Vは、(24')式と(25')式のいずれもが同じpH依存性を示すので、引き算すれば、pH依存性はなくなると解釈しましたが、バンドの電位のpH依存性はどのように関与するのでしょうか? そもそもバンドの電位のpH依存性というものがあるのでしょうか? あるとして、それは二酸化チタンに特有のことなのでしょうか?
A2:金属酸化物の表面は種々のOH基で覆われていると考えられます。したがって,水中ではH
+が表面から解離することができ,その場合表面に同数のO
-が残されます。pHが高いとき(NaOHなどがあるとき)はNa
+の数に対応して,酸化物の表面がO
-になりますので,全体に電位が上がります。したがって金属酸化物(同様の考えで硫化物の一部)の表面の電子準位はpHとともに,59mV*pH 上昇します。溶液に接触している半導体のバンドの端はpinning(ピン止め)され,変化できません。フラットバンドポテンシャルはpHとともに上昇することは実験的に調べられており,光電気化学の分野では30年以上前からそのように考えられてきました。
今井宏明先生(慶応大学理工学部)の質問(2005.3.9)
Q: 3ページ表1-1の物性値において、有効質量(正孔)ルチル20、アナターゼ:1、移動度(正孔?)ルチル1、アナターゼ4〜20となっていますが、これらのデータの引用文献はどれになるのでしょうか?表のタイトルに(2)〜(4)の引用文献が表示されており、(2)「酸化チタン」技報堂、(3)Landolt-Bornstein III/17g 9.15.2.1を調べたのですが、わかりませんでした。また、移動度のデータは正孔と考えてよろしいでしょうか?電子のデータは明確ではないのでしょうか?
A: 表1−1の有効質量と移動度の値は基本的には1章の文献(4)からの引用です。ルチルの移動度は1ではなく0.1でした。この文献(4)には原論文は引用されていませんが、2章の引用文献(11)には引用が有り、アナターゼはJ.Appl.Phys.75、2042(1994)、ルチルはPhys.Rev.Lett.39,1490(1977),および、J.Appl.Phys.32,2211(1961)に基づくものと思われます。何れも、電子についての有効質量と移動度とされています。従って、表の中に(正孔)の有効質量と書き入れたのは引用としては間違っています。しかし、2章の文献(28)の実験から、正孔の有効質量のほうが小さいとされています。どちらを取るべきか迷う所ですが、アナターゼとルチルの反応性の差や、電子捕捉反応のほうが正孔捕捉反応より遅い(p.76、参照)ことを考えると、正孔の有効質量が電子の有効質量より小さいとする方が適当と考えました。引用はしませんでしたが、J.Phys.Chem.92,5196(1988)でも既にそのような結論が出されています。
高橋安明氏(株式会社 O.T.A)の質問(2005.2.4)
Q1:p,151-7行目 600〜800℃とありますが600℃を越えるあたりからルチル化が始まるのではないかと思います。先生のp,153−5 行目では400〜500℃と書かれていますが。
A1ディップ法では比較的多くの薬剤がついているので、高温で処理するものと思います(5章文献2)。一度出来たアナターゼ結晶は確かに600度付近からルチルとなりますが、表面の吸着物質などによりさらに高温までアナターゼで存在することが知られています(5章、文献9)。スピンコート法では薬剤の層が薄くなリ反応物が少ないので、比較的低温の反応で薬剤(有機物)の分解が可能になると考えられます。
Q2:p.216−下6行目でトリクロロエチレン20ppmvとありますが、最後のvは何の略語でしょうか?ppmだけなら耳にしますが、ppmvは初めて出合ったものですから。
A2一般のppmは物質の重量比で100万分の1ですが、ppmvは体積(volume)で100万分の1という意味です。
Q3:p,217の環境ホルモンのことですが、雌が雄化するとの記述ですが、雄が雌化では?
A3:イボニシ貝では雌が雄化するように報告されています。
http://www.home-tv.co.jp/chikyu/eco/0007/04.htm
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