McKinney v. Anderson  刑務所内の受動喫煙は「残虐で異常な刑罰」

刑務所における受動喫煙は修正第8条の「残虐で異常な刑罰」に該当し違憲

 

マッキニー 対 アンダーソン
McKinney v. Anderson

924 F.2d 1500(1991)
第9巡回区合衆国控訴裁判所
United States Court Of Appeals for the 9th Circuit
1991

 原告(控訴人)のウィリアム・マッキニー(William McKinney)は、ネバダ州のカーソン(Carson)市にある州刑務所の受刑者であった。彼は、非喫煙者であるが、同室の受刑者が1日5箱のタバコを吸うヘビー・スモーカーであった。刑務所では、監房内でタバコを吸うことは制限されていなかった。彼は、たえず環境タバコ煙(ETS)※1にさらされ、鼻血、頭痛、胸の痛み、精力減退などに悩まされていた。彼は、刑務所側に独居房に移すか、非喫煙者と同室することを繰り返し要求したが、拒否されつづけた。彼は、監房内でETSにさらされつづけることが、合衆国憲法修正第8条※2の禁止する「残酷で異常な刑罰」に該当するとして、刑務所長などを訴え、損害賠償と差し止め命令※3による救済を求めた。
  ※1環境タバコ煙(Environmental Tobacco Smoke: ETS): タバコを吸うことに

    よって発する主流煙を吐き出した煙と、吸っていない時に燃焼を続けること

    で生じる副流煙により周囲に拡散される有害な煙である。環境たばこ煙にさら

    されることは、受動喫煙と呼ばれる。
  ※2 合衆国憲法修正第8(The Eighth Amendment to the Constitution of the

    UnitedStates)「過大な保釈金は要求されてはならず、過重な罰金は科され

    てはならない。また、残酷で異常な刑罰は科されてはならない。」

    (Excessive bail shallnot be required, norexcessive fines imposed, nor

     cruel and unusualpunishments inflicted.)
  ※3 差し止め命令による救済(injunctive relief):被告に一定の行為をなすことを

    禁じ、または、すでに生じた違法状態の排除のため一定の作為を命じる裁判所

    の命令。この事件では、原告をタバコの煙にさらされない監房に収容するよう

    に刑務所側に命じる命令。


≪Par.1≫
[1] The parties agree that two-thirds of the inmates at Carson City smoke. [2] The state does not dispute that McKinney is confined to a six-foot by eight-foot room with poor ventilation and that his roommate smokes five packs of cigarettes a day. [3] The state also admits that, other than in the infirmary and the culinary, there is no restriction on smoking in the prison.


[第1文]
 The parties agree that two-thirds of the inmates at Carson City smoke.

〈語句〉
● party 名)当事者  partyには他に、1.パーティ、2.(登山などの)一行、
     3.政党

   法律関係の文では「当事という意味で使われるとが多い。

・agree that… …ということに同意している
・two-thirds 名)3分の2 「3分の1」(one-third)が2つあるので複数形に

        なる。 two-thirds of~ 3分の2の~
・inmate 名)(刑務所の)収容者、在監者
・Carson City カーソン市 ネバダ州の州都
・smoke 自)喫煙する


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   parties agree { that two-thirds…smoke }
     S    V     O 

     「当事者は {  } ということに同意する。」
  
● 文型の多重構造
   that節の中の文型は two-thirds smoke 第1文型。
               S     V  

   「3分の2が喫煙する」
   smoke を名詞の「煙」と読むとthat節内に動詞がなくなり、また直前の

   Cityとのつながりがつかないので動詞として使われていることが分かる。

 
〈訳〉
 当事者は、カーソン市の収容者の3分の2が喫煙することに同意している。



[第2文]
  The state does not dispute that McKinney is confined to a six-foot by
  eight-foot room with poor ventilation and that his roommate smokes five
  packs of cigarettes a day.

〈語句〉
● state 名)州 ここでは刑務所の所在するネバダ州  
  state には他に、1.国家、2、状態、3.述べる、などの意味がある。
   それぞれの 意味でよく使われる。

・dispute that… …ということに異議を唱える、争う
・is confined to~ ~に閉じ込められている
● six-foot by eight-foot  幅6フィート奥行8フィートの 
  foot は後続の名詞を修飾する形容詞として機能 単数形になる。

・poor 形)乏しい、不十分な
・ventilation 名)換気
・roommate 名)同室者
・five packs of~ 5箱の~
・cigarette 名)(紙巻き)タバコ
・a day 1日につき


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  state does not dispute ① { that McKinney…ventilation }
   S         V   and        O   
                  ② { that his roommates…a day }


 「州は { ①  } ということと { ②  } ということに異議を唱えていない。 」

● room with poor ventilation
  (乏しい換気をともなった部屋→)「換気の乏しい部屋」


〈訳〉
 マッキニーが幅6フィート奥行8フィートの換気の悪い部屋に閉じ込めら

 れていること、彼の同室者が日に5箱のタバコを吸うということについて

 州側は争っていない。



 [第3文]
 The state also admits that, other than in the infirmary and the culinary,
  there is no restriction on smoking in the prison.

〈語句〉
・state 名)州、ネバダ州
・admit that… …ということを(事実であるとして)認める
・other than~ ~の他に、以外に
・infirmary 名)医務室
・culinary名)調理室
・restriction on ~に対する制限
・prison 名)刑務所


〈文法〉
● admit that… は、第1文のagree that…、第2文のno dispute that…と同様の意
 味であり、州が争っていない事実について記述している。


〈訳〉
 またネバダ州は、刑務所内では医務室と調理室を除いて喫煙の制限はない

 ことも認めている。




≪Par.2≫
[1] Unlike the general population, prisoners are not free to avoid or leave places where smoking is allowed. [2] Prisoners cannot simply leave their cells when their cellmates decide to light up. [3] In addition, because smoking is permitted virtually everywhere in the prison, and because it is undisputed that a clear majority of the prisoners are smokers, McKinney is almost constantly exposed to ETS at elevated levels. [4] A reasonable factfinder could conclude that the adverse health effects associated with ETS exposure would be especially severe for McKinney.


[第1文]
  Unlike the general population, prisoners are not free to avoid or leave
  places where smoking is allowed.

〈語句〉
・unlike 前)~と違って
・general population 名)一般住民
・prisoner 名)受刑者、囚人
・be free to do~ 自由に~できる
・avoid 他)~を避ける
● leave 他)~を立ち去る
  ※ leave には「~を置き忘れる」という意味もあるが、置き忘れた物から
   「立ち去る」という意味である。

・allowed 形)許されている


〈文法〉
●     avoid ↖       
       or   places ←〔where smoking is allowed〕
      leave  ↙

  ※ 関係副詞whereの先行詞のplacesを後続部分にもどすと
      smoking  is  allowed  in places   
  後続部分に in などの場所を表す前置詞の意味を加える場合、関係代名詞
  の which ではなく、関係副詞の where が使われる。whereは、in which で

  書き換ることもできる。


〈訳〉
 一般の人々と異なり、受刑者は、喫煙が許されている場所を避けること

 も立ち去ることも自由にできない。



 [第2文]
 Prisoners cannot simply leave their cells when their cellmates decide to
 light up.

〈語句〉
・prisoner 名)受刑者、囚人
・leave 他)~を立ち去る
・cell 名)1.(刑務所の)監房、2.細胞
・cellmate名)(刑務所監房の)同房者、同室者
・light up (タバコに)火を付ける


〈文法〉
● cannot simply は、「どうしても(絶対)~できない」という否定を強調する

 表現である。「~するという単純なことすらできない」という意味である。


〈訳〉
 受刑者は、同房者がタバコに火をつけることにした時、単に監房から立ち

 去るということすらできない。



[第3文]
 In addition, because smoking is permitted virtually everywhere in the
 prison, and because it is undisputed that a clear majority of the prisoners
 are smokers, McKinney is almost constantly exposed to ETS at elevated
 levels.


〈語句〉
・in addition 加えて、その上
・smoking 名)喫煙
・permitted 形)許されている
・virtually 副)ほとんど、事実上
・everywhere 副)どこでも、いたる所で
・prison 名)刑務所
・undisputed形)議論の余地のない、争われていない
・a clear majority of~ 過半数の~
・prisoner 名)受刑者、囚人
・smoker 名)喫煙者
・constantly 副)絶えず、四六時中
・be exposed to~ ~にさらされている
・ ETS 名)環境タバコ煙(Environmental Tobacco Smoke)
・elevated 形).高められた、高い
・level 名)水準、レベル


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
    McKinney is exposed
     S     V   C  「マッキニーは、さらされている。」
 
● 2つの because の節の後、主文 McKinney is…が続く。このような場合、
  「コンマ+S+V…」の形を探。そこが主文のはじまりである。

● 2つ目の because 節の中にit~thatの構がある。
   it is undisputed  {that a clear…smokers }
    (それは争われていない、{  } ということは→)
      「{  } ということは争われていない。」


〈訳〉
 それに加えて、喫煙は刑務所内のほとんどどこでも許されているから、

 また受刑者の過半数が喫煙者であることに争いがないから、マッキニー

 は、ほとんどつねに高レベルのESTにさらされている。



[第4文]
 A reasonable factfinder could conclude that the adverse health effects
 associated with ETS exposure would be especially severe for McKinney.


〈語句〉
・reasonable 形)合理的な、通常の判断能力を備えた
● factfinder 名)事実認定者
  証拠にもとづいて事実を認定する人。裁判官、または陪審員。
   reasonable factfinderは、「合理的な事実認定者」と訳せるが、そう訳す

  と、通常以上に「合理的である」という印象を受ける。しかし、この表現は、

  判断能力などに特段の問題のない「通常の事実認定者」という意味である

  ので、「通常の判断能力を備えた事実認定者」と訳す。

・conclude that…  …であると結論する
・adverse 形)不利な、不都合な
・health 名)健康
・effect 名)効果、影響
・associate A with B AをBと結び付ける 
・exposure 名)露出、さらされること
・especially 副)とりわけ
・severe 形)厳しい、深刻な


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  factfinder conclude { that the adverse…McKinney }
    S      V      O 「事実認定者は { } と結論する。」

● A reasonable factfinder could….
  could は仮定法過去であり、「通常の判断能力を備えた事実認定者であれば

  ~できであろう」という仮定の意味が主語にこめられている。

● 文型の多重構造:that節内は、第2文型:
   effects←〔associated with ETS exposure〕 would be severe
    S                        V   C
  associate の後に目的語がないので、過去分詞の形容詞的用法であることが

  わかる。
    B← 〔associated with B 〕「Bと結びつけられたA」

● health effect 「健康への効果」 は、名詞の並列であるが、vegetable soupなど

 と同様に前の名詞が形容詞的な働きをしている。


〈訳〉
 通常の判断能力を備えた事実認定者であれば、ETSにさらされることと結

 びついた健康に有害な影響は、マッキニーにとってとりわけ深刻であると

 結論できるはずである。




≪Par.3≫
[1] Our prior cases demonstrate that the difference between constitutional and unconstitutional conditions of confinement can turn on the air that the prisoners breathe. [2] In Hoptowit v. Spellman (1985), we held that housing inmates in units with inadequate ventilation and airflow is unconstitutional. [3] In Spain v. Procunier (1979), we held that denying prisoners fresh air and opportunities for regular outdoor exercise violates the Eighth Amendment.


[第1文]
 Our prior cases demonstrate that the difference between constitutional and
  unconstitutional conditions of confinement can turn on the air that the
  prisoners breathe.


〈語句〉
・our われわれの=合衆国最高裁の
・prior 形)(時間的に)前の、先の
● case 名)(訴訟になった)事件、ケース
  prior case 先例

・demonstrate that… …ということを実証する
・constitutional 形)1.合憲の、2.憲法の
・unconstitutional形)違憲の、憲法に反する
・condition 名)条件、状態
・confinement 名)収監、監禁
・turn on(~の上で回る→)~しだいで変わる、~に依存する
・breathe 他)~を吸う、自)呼吸する


〈文法〉
基本構造:第3文型
  cases demonstrate  { that the difference…breathe }
    S     V            O
   「ケースは、{  } ということを実証する。」

● 文型の多重構造
  that 節内の構造:第1文型
    difference turn  on  air  「違いは空気しだいである。」
     S    V    


air に関係代名詞が付いている。
    air ←〔that the prisoners breathe〕「受刑者が吸う空気」
        

〈訳〉
 合憲の収監条件と違憲の収監条件の相違は、受刑者が吸う空気しだいで変

 わりうるということをわれわれの先例が実証している。



[第2文]
 In Hoptowit v. Spellman (1985), we held that housing inmates in units

 with inadequate ventilation and airflow is unconstitutional.

〈語句〉
● Hoptowit v. Spellman判決
 換気、水道設備、照明などが不十分な施設に収容することは、「残酷で異常な

 刑罰」にあたり修正第8条に違反するとした1985年の第9巡回区連邦控訴

 裁判所の判決。

・hold that…  …であると(裁判所が判断を示す→)判示する
● house 他)~を収容する、~に住居を与える
   ※ 英単語の名詞は、その意味に対応した動詞として使われることが多い 。
   例) Mary watered  the flowers.「メアリーはその花に水をやった。」 
      Tom oiled  his bicycle.「トムは、自分の自転車に油をさした。」  

・inmate 名)収容者、在監者
・unit名)構成単位  ここでは、刑務所の区画 
・inadequate 形)不十分な、不適切な
・ventilation 名)換気
・airflow 名)空気の循環、空気量
・unconstitutional 形)違憲の


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
   we held { that housing…unconstitutional }
     S   V     O  

     「われわれは、[  ]であると判示した。」

● 文型の多重構造:
   that の内部は、第2文型
    [housing inmates…] is unconstitutional
       S        V      C 

      「 [   ] は違憲である」

   主語は目的語をとる動名詞である:housing inmates
                       v     o
       「受刑者を収容すること」

● we held that…is unconstitutional
  時制の一致では、is は主節のheld(過去)に合わせてwas にするところであ

  るが、この判決が書かれた時点でも妥当することであるので(違憲であるの

  で)現在形である。
   例えば、Yesterday she said that she wassick. という文の場合、
   was は、彼女が病気だったのが昨日のことであったからと説明できる。  
   したがって、一般的な真理などは that 節内の動詞を現在形にする。
   例)The teacher told me that the earthisround. 
  ※ 拙稿「時制の一致について」『英語教育 』(1993年11月号)

    76-77頁、参照。


〈訳〉
  1985年のホプトウィット対スペルマン事件において、われわれは、

  換気と通風の不十分な区画に在監者を収容することは違憲であると判

  示した。



[第3文]
 In Spain v. Procunier (1979), we held that denying prisoners fresh air and
 opportunities for regular outdoor exercise violates the Eighth Amendment.


〈語句〉
● Spain v. Procunier 判決
 刑務所内で暴力事件を起こすなどした受刑者を収容する特殊な刑務所において、

 原告が屋外での運動を認められていなかった事例で、屋外で運動させて新鮮な空

 気を吸わせないことは、「残酷で異常な刑罰」にあたるとした1979年の第9

 巡回区連邦控訴裁判所の判決。

・deny O1+O2  O1にO2を拒む、与えない
・prisoner 名)受刑者、囚人
・opportunity 名)機会
・regular 形)規則的な、定期的な
・outdoor 形)屋外の
・exercise 名)運動
・violate 他)~に違反する
・Eighth Amendment 名)(合衆国憲法)修正第8条


〈文法〉
第2文とまったく同一の構造をしている。
  基本構造:第3文型
   we held { that denying…Amendment }
    S    V     O  

   「われわれは、{  } であると判示した。」

  that節の内部の基本構造:
   [denying…exercise]  violates Eighth Amendment
       S        V      O 

     「[   ]は、修正第8条に違反する」

    主語は目的語をとる動名詞である。denying prisoner air
                      v      o    o
               「受刑者に空気を与えない。」

● held that の内部の動詞 violates は、第2文と同様の理由で violated になら

 ない。


〈訳〉
 1979年のスペイン対プロキュナーにおいて、われわれは、新鮮な空気

 と定期的な屋外運動の機会を受刑者に与えないことが修正第8条に違反す

 ると判示した。




≪Par.4≫ 
[1] Under Hoptowit and Spain, it is established that conditions in a prison that threaten a prisoner's health constitute cruel and unusual punishment. [2] Scientific evidence is clear that exposure to ETS can have serious adverse health consequences. [3] If housing nonsmokers and smokers in the same prison cell or allowing unrestricted smoking in other parts of the prison exposes nonsmoking inmates to a level of ETS that poses an unreasonable risk to their health, the Eighth Amendment is violated.


[第1文]
 Under Hoptowit and Spain, it is established that conditions in a prison that
 threaten a prisoner's health constitute cruel and unusual punishment.

〈語句〉
・Hoptowit  Hoptowit v. Spellman判決
・Spain  Spain v. Procunier判決
・established 形)確立されている
・condition 名)条件、状態
・prison 名)刑務所
・threaten 他)~をおびやかす
・prisoner 名)受刑者、囚人
・health 名)健康
・constitute 他)~を構成する
・cruel 形)残酷な
・unusual 形)異常な
・punishment 名)刑罰

〈文法〉
● 基本構造:第2文型 it~thatの構文
   it is established { that conditions…punishment }.
    S  V     C
    (それは確立されている、{  } ということは)
   →「{  } ということは確立されている。」
 ・
● 文型の多重構造:
  ・that節の内部は、第3文型である。
   conditions constitute  punishment.
     S      V      O 

    「状態は刑罰を構成する」

  ・it~thatの構文のthat節内の主語であるconditionsにさらにthatがある。
     直後に動詞(threaten)が続いているので関係代名詞であることが

    分かる

関係代名詞の先行詞がa prisonであるとすれば、threaten ではなくthreatens

 となっているはずであるから、先行詞がconditionsであることが分かるし、また

 「受刑者の健康をおびやかす」物は何かと考えると、先行詞が「刑務所」ではな

  くその「状態」であることが分かる。
   conditions 〇 ↖
      S     〔that threaten a prisoner's health〕constitute
     prison × ↙                    V

 

    関係代名詞節の中に必ず動詞が1つある(threaten)ので、2つめの動詞
  (constitute)がit~thatのthat節内の第3文型の動詞であることが分かる。
    主語に関係代名詞が付いた場合は、2つ目の動詞を探しながら文を読む。


〈訳〉
 ホプトウィット判決とスペイン判決のもとで、受刑者の健康をおびやかす

 刑務所内の条件が残酷で異常な刑罰を構成するということが確立されてい

 る。



[第2文]
  Scientific evidence is clear that exposure to ETS can have serious adverse
  health consequences. 

〈語句〉
・scientific 形)科学的な
・evidence 名)証拠
・clear 形)明らかな
・exposure to~ ~にさらされること
・ETS 名)環境タバコ煙
・serious 形)深刻な
・adverse 形)不利な、不都合な
・health 名)健康
・consequence 名)結果、重大性


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
  evidence is clear
    S   V  C 「証拠は明白である」

● that以下は、evidence の内容を説明する同格節「~という科学的証拠」
 thatの後に第3文型の完全な文が続いており、同格以外で説明が付かない
   evidence = { that  exposure have consequences} 
                S     V     O


〈訳〉
 ETSにさらされることが健康を害する深刻な結果をもたらしうるという科

 学的証拠は、明らかである。



[第3文]
  If housing nonsmokers and smokers in the same prison cell or allowing
  unrestricted smoking in other parts of the prison exposes nonsmoking
  inmates to a level of ETS that poses an unreasonable risk to their health,
  the Eighth Amendment is violated.

〈語句〉
・house 他)~を収容する
・nonsmoker 名)非喫煙者
・smoker 名)喫煙者
・prison 名)刑務所
・cell 名)(刑務所の)監房=prison cell
・allow 他)~を許す
・unrestricted 形)無制限の
・smoking 名)喫煙
・expose A to B  AをBにさらす
・nonsmoking 形)禁煙の、非喫煙者の
・inmate 名)収容者、在監者
・level 名)水準、レベル
・ETS 名)環境タバコ煙
・pose 他)(問題など)を引き起こす
・unreasonable 形)不合理な
・risk 名)リスク
・health 名)健康
・Eighth Amendment 名)(合衆国憲法)修正第8条
・violate 他)~に違反する


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
   Eighth Amendment is violated
      S        V   C  「修正第8条に違反する。」
    文頭のif節が長く続くが、「コンマ+S+V」の形になっているので、

    これが主文であることが分かる。

  
● if 節内の基本構造:第3文型
   [housing...or allowing...prison]  exposes... inmates to~
           S          V     C
  主語の範囲を確定するには動詞を探す。exposes に3単現のsが付いている

  ので基本構造の動詞であることが分かる。その前までが、前置詞句などを含

  めた主語である。

  和訳の方法として、「 [ ] が在監者を~にさらす」を「 [ ] によって在監者

  が~にさらされる」と訳すと読みやすくなる。

● if 節の主語は、目的語をとる動名詞であり、2つある。
    ①housing nonsmokers  
       v     o     「非喫煙者を収容すること」
    ②allowing smoking
       v     o      「喫煙を許すこと」

● to a level of ETS 〔that poses...health〕 
   level 〇 ↖    
         〔that poses...health〕
   ETS × ↙                    

   関係代名詞の that の先行詞が level であるか ETS であるかは、語彙や文法

  の知みでは決定できない「 文法判断の限界 」である。このような場合、

  結局、ちらが筋の通ったストーリーになるかによって確定する。
   ここでは、ETSが健康にリスクをもたらすという一般論を繰り返す必要は

  なく、ETSの水準を説明していると解釈する方が論理的である。「健康に不

  合理なリスクをもたらす水準」


〈訳〉
 非喫煙者と喫煙者を同じ監房に収容することによって、あるいは刑務所の

 他の場所において無制限に喫煙を許すことによって、非喫煙者の在監者が

 健康に不合理なリスクをもたらすレベルのETSにさらされる場合、修正第

 8条の違反となる。



【解説】
  この判決は、監房の同室者が吸うタバコから発生する環境タバコ煙(ETS)に原告をさらすことが合衆国憲法修正第8条の禁じる「残酷で異常な刑罰」(cruel and unusual punishments)にあたるとした珍しい判決である。つまり、狭い部屋に閉じ込められたまま四六時中タバコの煙を吸うことを強制される、いわば「タバコの煙の刑」が「残酷で異常」であるということである。刑務所で受刑者がタバコを吸えること自体が驚きであるが、この判決18年後の2009年にネバダ州は、州刑務所内での喫煙を禁止した(この訴訟の舞台となったカーソン市の州刑務所は財政的理由から2012年に閉鎖された)。カリフォルニア州では、2004年、当時州知事であった俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが、州立刑務所内での喫煙を禁止する法案に署名し、翌年から施行された。
 「残酷で異常な刑罰」であると度々主張されてきたのは、死刑である。1審で死刑判決を受けた被告人が、上訴のさいに死刑を免れるために、死刑が修正第8条によって禁じられた「残酷で異常な刑罰」であると申し立てるのである。合衆国最高裁は、ジョージア州の死刑を決定する刑事手続きが不適切であるとして違憲判決を下したことはあるが、死刑自体が残酷で異常な刑罰であると判示したことはない。

 

2018年03月04日