Hochberg v. O'Donnell's Restaurant オリーブの種で歯が欠けてレストランを訴えた事件


マティーニに入っていたオリーブの種を噛んで歯が欠けレストランを訴えた事件

ホッチバーグ 対 オドネル・レストラン
Hochberg v. O'Donnell's Restaurant

272 A.2d 846 (1971)
コロンビア地区連邦控訴裁判所
District of Columbia Court of Appeals
1971



 原告のホッチバーグ(Hochberg)さんは、被告のレストラン(O'Donnell's Restaurant)でウォッカ・マティーニを注文した。それを飲んでいる時に、中に入っているオリーブに切り口があるのを見た。それからそれをつまんで口に入れ、強く噛み、叫び声を上げた。奥歯が欠けてしまったのである。一緒に食事をしていた人達にオリーブの種で歯が欠けたことを説明した。レストランの支配人がテーブルに呼ばれ、支配人は歯の一部とオリーブの種を見せられた。ホッチバーグさんは、奥歯の治療にかかった50ドルほどのお金を支払ってもらいたくてレストランを訴えた。
 ホッチバーグさんは、レストラン側に「黙示の保証」の違反があったと主張した。他方、レストランは、次の場合は、黙示の保証違反にならないと主張した。すなわち、料理にある物体が含まれている時、その物体が、それの見つかった食べ物の自然な一部であるか、その食べ物のタイプと自然に結びついている場合である(つまり、オリーブに種が入っているの自然なことであるのでレストランは責任を問われない)。
 第1審の裁判所がレストラン勝訴の判決を下したので、ホッチバーグさんが控訴した。

「黙示の(品質)保証」(implied warranty)
 商品の品質について、「~を保証します」と明示された保証がなくても、商品の品

 質を買主が信頼するのが正当であるという理由で、認められる品質保証。
  拙稿「英米契約法から学ぶこと」(特集「自己責任がわかる」)『法学セミナー 』

  (2001年9月号) 44-47頁参照。



≪Par.1≫
[1] Both parties agree there is a split in the authorities throughout the country as to what test should be applied where an injury is suffered from an object in food or drink consumed in a restaurant. [2] Some courts hold there is no breach of implied warranty on the part of a restaurant if the object in the food causing the injury was "natural" to the food served (if the object was "foreign" to the food there may be a recovery.) [3] On the other side are authorities which hold that the test is what should reasonably be expected by the consumer to be in the food served to him.



[第1文]
  Both parties agree there is a split in the authorities throughout the country
  as to what test should be applied where an injury was suffered from an
  object in food or drink consumed in a restaurant.

〈語句〉
● party 名)(訴訟)当事者
  both parities 「両当事者」は、原告のホッチバーグさんと被告のオドネル・

  レストランのこと。

・agree that… …ということに同意する、意見が一致する
・split 名)1.対立、不和、2.(ボーリングの)スプリット
・authority 名)(後の判決の指針となるような権威ある)先例、判決
・throughout 前)~の至るところの、~じゅうの
・as to ~について
・test 名)基準 
・apply 他)~を適用する
・where 接)…する場合に
・injury 名)1.負傷、2.被害
・suffer 他)(傷や苦痛など)を被る、受ける
・object 名)物、物体
・consume 他)~を消費する consumed 形)消費された


〈文法〉
●基本構造:第3文型 
  parties agree {(that) there is…restaurant}  
   S    V      O 
   「 当事者は、{  }ということに合意している。」  
  agree のすぐ後に there is~ という構文が続くので that が省略されているこ

  とが分かる。
   there is a split 「(意見の)対立がある」は、ボーリングのスプリット

   イメージすると分かりやすい。        

● as to A 「Aに関して」
 A にあたる部分は、 whatから文末までである。where…は、意味から appliedを

 修飾している(「…場合に適用される」)。

  したがって、〔what~where~restaurant〕は一体となって asto の目的語にな

  っている。

● where an injury was suffered
 「傷が負われた」と訳すと不自然な日本語になるので、日本語では主語が省略

  できる利点を活かして「傷を負った場合」と能動で訳す。

food or drink←〔consumed in a restaurant〕
  過去分詞の形容詞的用法 「レストランで消費される食べ物や飲み物」
   consumedが他動詞として機能していないことは、次の2点から分かる。
     ① injury was suffered までですでに第2文型の英文が完成している。
     ② consumed の後に目的語ない。


〈訳〉
 レストランで消費される食べ物や飲み物の中に入っている物体によって傷

 を負った場合、どのような基準が適用されるべきであるかについて、国中

 の先例が2つに分かれていることについて両当事者は意見が一致している。



[第2文]
  Some courts hold there is no breach of implied warranty on the part of a
  restaurant if the object in the food causing the injury was "natural" to the
  food served (if the object was "foreign" to the food there may be a
  recovery.) 

〈語句〉
・hold… …であると(裁判所が判断を示す→)判示する
・breach 名)(契約、法律などの)違反、不履行
・implied warranty 黙示の保証
・object 名)物、物体
・cause 他)(損害など)の原因となる、~を引き起こす
・injury 名)2.負傷、2.被害
・natural 形)自然の 
・serve 他)(食べ物など)を出す、給仕する
・foreign 形)1.外国の、2.異質な
・recovery 名)損害の回復、損害賠償


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  courts hold {there…if…recovery.}
    S     V    O  「裁判所は、{ } と判示する」
  {  } の中にthere isの構文があるのことも第1文と同様である。

● if 節の中の文型は、第2文型である。
    object  was  "natural"
      S      V     C   「物体は自然であった」

object in the food 〔causing the injury〕
   causing は、現在分詞の形容詞的用法であり、一見すると foodを修飾して

  いるように見えるが、実は objectを修飾している。いずれを修飾しているか

  は文法的に決定することはできず、文法判断の限界である。
   このような場合、どちらの方が論理的な話になるかで決定する。
 
      × food ↖  
           〔causing the injury 〕was "natural" to the food
      〇 object ↙ 
 
   後続の文から「食べ物は、その食べ物とって『自然』」であるというのは、

  非論理になるのでobjectを修飾していることが分かる。具体例を考えると

  分かりやすい。
     例)焼き魚の中にその魚の骨が入っている場合。

● if 節は、there is no breach を修飾している「もし~ならば違反はない」
  「食材にとって自然な物体が入っている場合、それを食べた人が傷を負った

   としても品質保証に違反しない」(オリーブの実に種が入っているのは自

   然である)。

Some court…は、慣例的に「~する裁判所もある」と訳される。


〈訳〉
 負傷の原因となった食べ物の中の物体が、出された食べ物にとって「自

 然な」ものであった場合、レストランの側に黙示の保証の違反はない

 (その物体が食べ物にとって「異質」であった場合、損害を回復しうる)

 と判示する裁判所がある。



[第3文]
  On the other side are authorities which hold that the test is what should
  reasonably be expected by the consumer to be in the food served to him.

〈語句〉
・on the other side 他方、もう一方の側に
・authority 名)(後の判決の指針となるような権威ある)先例、判決
・hold that… …であると(裁判所が判断を示す→)判示する
・test 名)基準
・reasonably 副)合理的に、無理なく、然るべく
・be expected to do~ ~することが期待されている
・serve 他)(食べ物など)を出す、給仕する


〈文法〉
●基本構造:第1文型
  are authorities←〔which hold that…him〕
   V     S  「〔…と判示する〕先例がある。」

 be動詞には、「ある、いる、存在する」という意味がある。
 文頭に On the othersideという副詞句があるので、V→S と倒置されている。
  倒置の文にするためには、
(1)強調する語を文頭におく(ふつう後ろにあるものが一番前に出てくると目

   立つ
(2)残りの文を疑問文の語順にする。
  
  on the other side という表現は、ボーリングのスピリットのイメージによく

  適合する。

●文型の多重構造:
  which 以下の関係代名詞節の中に、
   hold {that the test…him}  という 第3文型がある。
    v     o
  さらのそのthat節の中に、test is {what…him}
                  s   v    c    という第2文型がある。

● what should~は、A should reasonably be expected…to be in~ 
 「Aが~の中にあると期待されて然るべきである」という文のAにあたるものが
  what になっていると見る。「~の中に何があると期待されるか」

● reasonably という副詞は、法律の文書ではよく見かける。
 reason は、動詞では「理由を考える、推論する」という意味である。
 rasonable は「理由が分かる」という原意である。しがって、reasonably

 expect~は 「~であると期待しても、その理由が他の人にも分かる」とい

 う意味で、結局、第3者が客観的判断しても正しいことであるということを

 表している。

● be expected by the consumer
  自然な日本語にするために能動で訳す。「消費者が期待する」

● the food ←〔served to him〕
    過去分詞の形容詞的用法「彼に出された食べ物」


〈訳〉
 他方、基準は、出された食べ物の中に何が入っていると消費者が期待して

 然るべきであるかであると判示する先例がある。




≪Par.2≫
[1] We think the better view in cases involving injury from an object in food served in a restaurant is to apply the reasonable expectation test rather than restrict the test, as the trial court did, to whether the food is wholesome or contained a foreign substance. [2] In our view it is unrealistic to deny recovery as a matter of law if, for example, a person is injured from a chicken bone while eating a sliced chicken sandwich in a restaurant, simply because the bone is natural to chicken. [3] The exposure to injury would not be much different than if a sliver of glass were there.


[第1文]
  We think the better view in cases involving injury from an object in food
  served in a restaurant is to apply the reasonable expectation test rather
  than restrict the test, as the trial court did, to whether the food is
  wholesome or contained a foreign substance.

〈語句〉
・We われわれ=控訴裁の裁判官
・view 名)見解、意見、考え
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース
・involve 他)1.~を伴う、含む、2.~を関与させる、巻き込む
・injury 名)2.負傷、2.被害
・object 名)物、物体
・serve 他)(食べ物など)を出す、給仕する
・apply 他)~を適用する
・reasonable expectation test 合理的な期待の基準
・A rather than B BよりむしろA
・restrict A to B  AをBに制限する
・test 名)基準
● trail 名)事実審理(第1審);裁判官や陪審員の前で、原告・被告、弁護人、

     証が主張、証言を行ういわゆる「裁判」

 

・trial court 名)事実審裁判所       
・wholesome 形)健全な、衛生的な
・contain 他)~を含む
・foreign 形)異質な
・substance 名)1物質、2.実体


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
  We think { [that] the better…substance }
    S   V     O   「われわれは、{ } と考える」

● thinkの { 目的語 } の内部の基本構造:第2文型
   view is 〔 to apply…substance 〕
    S   V    C   「見解は、〔…を適用すること〕である。」  

主語を探す時は動詞を探す
  think{ 目的語 }内の動詞は、isであることが明白であるので(is 動詞は動詞

  としての用法しかないので)、その前の restaurant までが大きく見た場合の

  (前置詞句などを含めた)主語であることが分かる。

●形容詞句の多重構造
  view in cases←{ involving injury… in a restaurant〕 } 
    { involving ~ in food←〔served in a restaurant〕 }   

● to apply~ rather than restrict…
  「…制限することではなくむしろ~を適用すること」

● restrict A to B 「AをBに制限する」
    A = the test
    B = whether…substance

● as the trial court did
 「事実審裁判所がしたように」は、直前の動詞である restrict を修飾する。


〈訳〉
 レストランで出された食べ物に入っている物体から生じた傷害に関わるケ

 ースでは、事実審裁判所が行ったように、その食べ物が衛生的であるか、

 異質な物質を含んでいるかということに基準を限定することではなく、

 むしろ合理的な期待の基準を適用するほうが良い考えであるとわれわれは

 考える。



[第2文]
  In our view it is unrealistic to deny recovery as a matter of law if, for
  example, a person is injured from a chicken bone while eating a sliced
  chicken sandwich in a restaurant, simply because the bone is natural to
  chicken.

〈語句〉
・view 名)見解、意見
・unrealistic 形)非現実的な
・deny 他)~を拒否する
・recovery 名)損害の回復、損害賠償
●as a matter of law 法律問題として
 例えば、「原告の歯は本当にオリーブの種が原因で欠けたかどうか」という問

 題は、事実の認定に関する事実問題(question of fact)であるが、認定された

 事実にもとづいて損害賠償が認められるかどうかは、法律の解釈に関わる法律

 問題(question of law,matter of law)である。

・is injured from ~によって負傷する
・chicken 名)鶏
・bone 名)骨
・sliced 形)スライスされた、薄切りの
・simply because 単に…という理由で
・natural 形)自然の 


〈文法〉
● it is unrealistic to deny… :it~to… の構文 
  it~to…の構文は、例えば、It is difficult to finish the work in a day. という

  文合、「その仕事を一日で終わらせるのは難しい」と訳すが、英語が言っ

  ているのは、くまで「それは難しい、その仕事を一日で終わらせるのは」で

  ある。

   つまり、はじめに「それは」と言って、「何が」という疑問をもたせて、

  あとからto不定詞で説明する用である。同じような用法に so that の構文

  がある。

   The work was so difficult thatI couldn’t finish it in a day.

   「その仕事はそれほど難しかった。一日で終わらせることができない

    ほど。」

    →「その仕事は非常に難しかったので私はそれを一日で終わらせるこ

      とができなかった。」   

● while [he is] eating~「彼が~を食べている間に」

● simply because the bone…が修飾しているものとして文法的に可能性がある

 のは、4つある(文法判断の限界)。
  ①it is unrealistic  ②deny  ③is injured  ④eating

 「単に骨が鶏にとって自然であるという理由で」と論理的につながるのは、

  ②「損害賠償を拒否する」である。


〈訳〉
 われわれの見解では、例えば、ある人がレストランでスライスチキン・

 サンドイッチを食べている時に鶏の骨で傷を負った場合、単にその骨が

 鶏にとって自然なものであるという理由で、法律問題として損害賠償が

 認められないというのは非現実的である。



[第3文]
 The exposure to injury would not be much different than if a sliver of glass
  were there.

〈語句〉
・exposure 名)晒す(晒される)こと、露出
   expose A to B 「AをBに晒す」 
・different than = different from ~と異なる
・sliver 名)薄片、破片(silver 銀、ではないので注意)
 
〈文法〉
● a sliver of glass were thereは、仮定法過去である。第2文の鶏の骨がサン

 ドイッチに入っている例を受けて、その骨がガラスの欠片であった場合を仮定

 している。


〈訳〉
 傷害にさらされる程度は、ガラスの破片が含まれていた場合と大差がない

 であろう。




≪Par.3≫
[1] Naturalness of the substance to any ingredients in the food served is important only in determining whether the consumer may reasonably expect to find such substance in the particular type of dish served. [2] Because a substance is natural to a product in one stage of preparation does not mean necessarily that it will be reasonably anticipated by the consumer in the final product served. [3] It is a different matter if one is injured by a bone while eating a chicken leg or a steak or a whole baked fish. 

[第1文]
  Naturalness of the substance to any ingredients in the food served is
  important only in determining whether the consumer may reasonably
  expect to find such substance in the particular type of dish served.

〈語句〉
・naturalness 名)自然さ
・substance 名)1物質、2.実体
・ingredient 名)(料理の)材料、食材
・serve 他)(食べ物など)を出す、給仕する
・determine 他)~を決定する、確定する
・consumer 名)消費者
・reasonably 副)合理的に、無理なく、然るべく
・expect to do~ ~することを期待する
・substance 名)1物質、2.実体
・particular 形)特定の
・dish 名)料理 


〈文法〉
● 基本構造:第2文型
  Naturalness is important
     S      V   C     「自然さは重要である。」
 主語を探す時は動詞を探す:is が基本構造の動詞であることが明白であるので、

 その前の served までが大きく見た場合の(前置詞句などを含めた)主語である

 ことが分かる。

Naturalness of the substance to~
 意味的にはof の前後で S V の関係があり、このような of を「主格の of 」と
 呼ぶことがある(the substance is natural to ~)。
  「物質が~にとって自然かどうかは」と訳す。

● food ←〔 served 〕:served は過去分詞の形容詞的用「出された食べ物」
    serve の後に目的語がなく、すぐ is がつづくので分かる。

● in determining A「Aを決定するにさいして」
  Aにあたる部分は whether the consumer…served である。

●dish served: served は過去分詞の形容詞的用法「出された料理」


〈訳〉
 物質が、出された食べ物の食材のいずれかにとって自然であるかどうか

 は、された特定のタイプの料理にそのような物質が入っていることを

 消費者が期待して然るべきであるかどうかを確定するさいのみに重要で

 ある。



[第2文]
  Because a substance is natural to a product in one stage of preparation
  does not mean necessarily that it will be reasonably anticipated by the
  consumer in the final product served.

〈語句〉
・substance 名)1物質、2.実体
・natural形)自然な
・product 名)生産物、製品
・stage 名)段階
・preparation 名)準備
・mean that… …ということを意味する
・not necessarily (部分否定)必ずしも~ない
・reasonably 副)合理的に、無理なく、然るべく
・anticipate 他)~を予期する、予想する
・consumer 名)消費者
・final product名)最終生産物、最終製品
・serve 他)(食べ物など)を出す、給仕する


〈文法〉
● 基本構造:第3文型
{Because a substance…preparation} does not mean {that it will be…}
        S                V     O
 Because は、副詞節であるので、主語にはなれないが、ここでは that 節

 「~ということは」と同様の使い方がされている。

  そう分析しないとdoes not meanの主語が見つからない。ただ、that 節とは

  異なり、「~であるからと言って」という意味がこめられている。

● mean that…内の it になりうるのは、substance, product, stage, preparation

  の4つある(文法判断の限界)。論理的に考えて、つまり、「最終品に入って

  いることが消費者によって予期される」かどうかが問題になるものは何かと考

  えると、substance「物質」であることが分かる。

● final product ←〔 served 〕 
  served は過去分詞の形容詞的用法「出された最終品」

                

〈訳〉
 ある物質が準備の一段階の製品にとって自然であるからと言って、その物

 質が出される最終品に入っていることを消費者が予期して然るべきである

 ことには必ずしもならない。



[第3文]
 It is a different matter if one is injured by a bone while eating a chicken leg
  or a steak or a whole baked fish.


〈語句〉
・matter 名)問題、事柄
・is injured 負傷する
・bone 名)骨
・steak 名)ステーキ
・whole 形)全体の、まるごとの
・baked fish 名)焼き魚

〈文法〉
● 文頭の It の中身は、「それは別問題である」という文の「それ」にあたるも

  のが It前にないので、後続のif one is …である。「もし…であるとしても、

  それは別の問題である。」

  この文のように、後続の if 節の内容を文頭のit で先に示すことがある。
  例)It will be very helpful if you carry my baggage.
  (それは助かります。もしあなたが私の荷物を運んでくれれば。→)
   「あなたが私の荷物を運んでくれれば大変助かります。」

●while [he(=one) is] eating~


〈訳〉
 鶏の足、ステーキ、あるいは焼き魚まるごと一匹を食べている時に、骨で

 負傷したとしても、それは別の問題である。




≪Par.4≫
[1] Turning to the facts of this case, it appears the crucial consideration for the purpose of this review is that appellant saw the hole in one end of an olive and therefore assumed it had been pitted, chewed the olive and injured his tooth on the pit.  [2] This narrows the problem to whether on these facts he was reasonably justified in expecting there was no pit in the olive and could chew without care.


[第1文]
  Turning to the facts of this case, it appears the crucial consideration for

  thepurpose of this review is that appellant saw the hole in one end of

  an oliveand therefore assumed it had been pitted, chewed the olive

 and injuredhis tooth on the pit.

〈語句〉
・turn to ~に考えを向ける
・fact 名)事実
・case 名)(訴訟になった)事件、ケース
・it appears that…=it seems that… …のように見える、思える
・crucial 形)決定的な、鍵を握る、2.命にかかわる
・consideration 名)考慮、考慮事項
・for the purpose of ~の目的のために
・review 名)(裁判所による)審査、審理
・appellant 名)控訴人 ここでは第1審で敗訴したホッチバーグさん
・olive 名)オリーブ
・assume 他)想定する、思い込む
・pit 他)~の種を取り除く、名)(果物の)種  
・chew 他)~を噛む
・injure 他)~に傷を負わせる
・tooth 名)歯


〈文法〉
● Turning to…は、意味上の主語が筆者である独立分詞構文=If we turn to…。
 この場合の筆者は、この判決を書いている裁判官である。
  分詞構文は、その意味上の主語が主節と同じであるのが通常であるが、

 この文の主節の主語は、後続の形式主語の it であるので、それが turning

 の主語だとすると意味不明な文になる。 
  分詞構文は、文脈に合う適当な接続詞を補う 。何が適当かは自分で考える
      ・Feeling sick,  Mary went to school.  
       「 体調が悪かったけれども 、メアリーは学校に行った。」
       ・Feeling sick,  Mary was absent from school.  
        「体調が悪かったので、メアリーは学校を欠席した」  
    これらの例文では同じFeeling sickでも文脈によって含意が異なる。

● 文型の多重構造
  it appears  { [that]… } の{ }内の基本構造: 第2文型
     consideration is {that appellant…on the pit}
         S     V   C 

     「考慮事項は、{ that…ということ}である。」

  この that 節の内部の文型=第3文型
     appellant saw hole
        s     v   o  「控訴人は、穴を見た」 

● that 節の主語 appellant の動詞が並列されている。
     ① saw and assumed  
     ② chewed 
     ③ injured….
 saw と assumed は一体のものであり、③ injured の前に並列の and がある。

● had been pitiedが過去完了形になっているのは、オリーブを見て噛む前に」

 という含意がある。


〈訳〉
 このケースの事実に立ち戻ると、この審査の目的にとって決定的に重要な

 考慮事項は、控訴人がオリーブの端に切り口があるのを見て、それゆえ種

 が抜かれていると想定して、オリーブを噛んで、種で歯を損傷したという

 ことであるように思われる。



[第2文]
 This narrows the problem to whether on these facts he was reasonably
  justified in expecting there was no pit in the olive and could chew without
  care.

〈語句〉
・narrow 形)狭い、他)~を狭める
・problem 名)問題
・on 前)~にもとづいて
・fact 名)事実
・reasonably 副)合理的に、無理なく、然るべく
・justify 他)~を正当化する、正当であると説明する
・expect 他)~を期待する
・pit 名)種
・olive 名)オリーブ
・chew 他)~を噛む
・care 名)注意、配慮


〈文法〉
● This narrows A to B 「このことは、AをBの範囲まで狭める」
    A = the problem
    B = whether…care
  →「このことによって、問題が…かどうかに狭められる。」
   This は、前文の内容を受けている。

● on these fac tの on は、「~にもとづいて(on the basis of)」という意味で

 ある。

● whether節内の構造
        ↗ was reasonably…
     he
       ↘ could chew…

in~ing ~することにおいて
  was justified in expecting [that]…
    「…ということを期待することにおいて正当化された」
     →「…ということを期待することは正当であった」
   expecting は、[ that ] there was…という節を目的語を取る動名詞   


〈訳〉
 これによって、次のことに問題が絞られる。すなわち、これらの事実にも

 とづいて、控訴人が、オリーブに種がないと期待したことが然るべく正当

 化され、注意せずに噛むことができたかどうかということである。



【解説】
 ホッチバーグさんがオリーブの種が抜かれていると予期したことが合理的であったか否かという問題について、陪審に判断させるために、控訴裁判所は事件を事実審裁判所に差し戻した。種が抜かれていると期待して然るべきであったと陪審が認定した場合は、「黙示の保証」の違反があったのでレストランは損害賠償責任を負うことになる。しかし、残念なことに、控訴裁判決の後、ホッチバーグさんはレストランと和解したので(和解金1,000ドル)、地裁の陪審の判断を見ることはできなかった。
 レストラン側は、食べ物の中にその食べ物にとって自然な物体が含まれていて、それで負傷したとしても、レストランは責任を負わないと主張した。つまり、オリーブの実にとって種は自然のものであり、それで歯が欠けてもレストランに責任はないということを一般化して主張したのである。
 しかし、そのような一般化は、自己のケースのみならずより広く一般的に妥当することであると言うことによって自己の主張を強化できるが、他方、両刃の剣のような危険もある。例えば、フグにはテトロドトキシンという猛毒が自然に含まれているが、フグ料理を食べてこの毒にあたって死亡しても、レストランは責任を負わないことになってしまい不合理である。この判決が言うように、消費者の期待(予期)を基準とする方が合理的である。刺身に骨が入っていることは予期されていないから、客がその骨で口を切った場合、レストランは責任を負うが、焼き魚の場合は負わない。

 (原告のPhilip R. Hochbergさんは、現在、メアリーランド州で弁護士をされており、この事件の説明には、Hochbergさんからemail で直接教えて頂いた内容が含まれています。Hochbergさんは、愛すべき人柄の人で、事件にまつわるおもしろい話をして下さったが、プライバシーに関わらない範囲で説明内容を補いました。)

2018年03月04日