樹木

高木 高さ10m以上

イチョウ

イチョウは中国原産の落葉高木で、日本では街路樹や公園樹として広く植えられる。
樹冠は大きく広がり、樹皮は灰褐色で深い縦割れが入る。葉は扇形で、秋には鮮やかな黄色に色づく。
雌株は独特の匂いをもつ銀杏の実をつけ、種子は食用として親しまれる。
耐火性・耐煙性に優れ、都市環境にも強いことから、古くから寺社や街路に植えられてきた。
寿命が長く、巨木になることも多い、日本を代表する樹木のひとつである。

『日本書紀』の「一書(あるふみ)」には、スサノオノミコトが自分の体毛を抜いて、様々な樹木を生み出したという「植樹神話」が記されています。

クスノキ

クスノキは日本の暖地に多く見られる常緑高木で、公園や神社の大木として親しまれる。樹冠は大きく丸く広がり、樹皮は灰褐色で厚く、縦に浅い割れ目が入る。葉は厚く光沢があり、三行脈と呼ばれる3本の葉脈が基部から伸びるのが特徴。春に黄緑色の小さな花をつけ、秋には黒紫色の実を結ぶ。材には独特の香りがあり、防虫効果が高く、昔から家具や仏像に利用されてきた。成長が早く寿命も長い、日本を代表する大樹である。

タイサンボク(泰山木)

この木は、北米原産の常緑高木「タイサンボク(泰山木)」です。
その名は、大きな花や葉を付け堂々とそびえ立つ姿を、中国の名山「泰山」に例えたという説や、
大きな盃のような花の形から「大盃木(たいさぼく)」が転じたという説があります。
最大の特徴は葉にあり、表面は深い緑色で強い光沢を放ち、裏面は鉄錆色の細かな毛で覆われています。
この鮮やかな対比は、風に揺れるたびに独特の情緒を醸し出します。
また、樹皮は成長とともに灰色で重厚な質感を増し、地を這うように広がる根元は「象の足」を思わせる力強さがあります。
初夏の開花に先駆け、大樹としての風格を湛える今の姿は、まさに泰然自若とした魅力に満ちています。

シラカシ(白樫)

これは、ブナ科の常緑高木である「シラカシ(白樫)」です。
春に木全体が黄色や赤茶色に色づいているのは、春の芽吹きとともに古い葉を落とす、常緑樹特有の「新旧交代」のサインです。
枝先から垂れ下がる黄緑色の紐のようなものは、風に花粉を乗せて飛ばすための雄花です。
また、樹皮は成長とともに灰黒色で滑らかな質感を増し、白い地衣類が付着して独特の斑点模様を描きます。
その材は極めて硬く頑強で、古くから道具の柄や建築材として日本人の暮らしを支えてきました。
派手さはありませんが、冬の防風林や秋のどんぐりなど、一年を通じて静かに恩恵を与えてくれる、頼もしい大人の樹木といえるでしょう。

モッコク(木斛)

これは、江戸時代から「庭木の王様」と称されてきた「モッコク(木斛)」です。
ツバキ科(またはモッコク科)に属する常緑高木で、自然状態では10m〜15mほどに成長しますが、庭木としては数メートルに整えて楽しまれます。最大の特徴は、新旧の葉が入れ替わる際に見せる深い赤色の紅葉です。
艶やかな深緑の葉の中に、熟成した古い葉が鮮やかに染まる姿は、落ち着いた庭園に彩りを添えます。
また、樹皮は灰褐色で滑らかであり、緻密に茂る葉と相まって非常に品格のある樹形を形作ります。
モッコクは、江戸時代に選定された「庭木五木」の一つに数えられます。
これは、当時の庭園に欠かせない格調高い五つの樹木(モッコクアカマツイトヒバカヤイヌマ)を指し、
中でもモッコクは、その凛とした佇まいから主役を担う存在でした。
初夏に咲く香りの良い花や秋の赤い実など、一年を通じて「静の美」を体現する名木です。



ソメイヨシノ(染井吉野)

日本の春の象徴とも言える「ソメイヨシノ(染井吉野)」
枝に葉がほとんど見られず、淡いピンク色の花だけが木全体を覆うように咲き誇る姿は、ソメイヨシノ最大の特徴です。
江戸時代末期に江戸の染井村で作られたこの品種は、すべて一本の原木から接ぎ木で増やされたクローンであるため、
一斉に開花し、一斉に散るという潔い美しさを持っています。
植物学的にはエドヒガンとオオシマザクラの交雑種で、成長が非常に早く、若木のうちから見事な花を咲かせます。
青空を背景に、霞がかったように広がる薄紅色の梢。その下で多くの人々が春を祝う光景は、まさに日本の文化そのものと言えるでしょう。

ヤマザクラ(山桜)

ソメイヨシノが全国に広まる前、日本の「花見」といえばこのヤマザクラを指していました。
最大の見どころは、淡い白やピンクの花弁と、力強い赤みを帯びた若葉が同時に展開する色彩のコントラストです。
その独特の美しさは「吉野の桜」として古事記や万葉集の時代から和歌に詠まれ、多くの文人に愛されてきました。
植物学的には非常に長寿な樹種として知られ、数百年を生き抜く巨木も少なくありません。
均質に咲き揃う園芸種とは異なり、一本ごとに開花時期や葉の色が微妙に異なる個性が、野趣あふれる情緒を醸し出します。古人が「山に咲く、ありのままの姿」に神性を見出したように、若葉の赤が混じる枝先を見上げると、生命の力強さと日本の原風景を感じることができます。
華やかな八重桜とはまた違う、静謐で奥深い春の主役といえるでしょう。

シダレザクラ(枝垂桜)

これは、細い枝が優雅に垂れ下がる姿が印象的な「シダレザクラ(枝垂桜)」
その中でも八重咲きのヤエベニシダレ(八重紅枝垂)と思われます。
糸のようにしなやかな枝に、鮮やかな桃色の花が降り注ぐように咲く姿は、まるで滝が流れるような躍動感と気品を兼ね備えています。
平安時代から観賞用として愛され、京都の平安神宮など名所のシンボルとしても知られる、日本を象徴する風景の一つです。
植物学的にはエドヒガンの変種とされ、非常に長寿で生命力が強いのが特徴です。
年月を重ねるほどに枝ぶりは複雑な造形美を見せ、満開時には樹冠全体がピンク色の霞に包まれたような幻想的な趣を放ちます。風に揺れる花枝を見上げれば、古人がなぜこの桜を「糸桜」と呼び、詩歌に情熱を傾けたのかが伝わってくるようです。
ソメイヨシノよりも少し遅れて見頃を迎えるこの桜は、春の終わりの名残を惜しむ、情緒豊かな大人のための花と言えるでしょう。

桜 一葉(イチヨウ)

一葉(イチヨウ)は、ソメイヨシノが散った後の4月中旬に見頃を迎える八重桜の一種です。
最大の特徴は、その名の由来となった花の構造にあります。
花の中央から1〜2本の細い葉のようなもの(雌しべが葉化したもの)が突き出しており、重なり合う20〜40枚の花弁の間から顔を覗かせます
内側が白く、外側が淡いピンク色のグラデーションを描く姿は、春の光を包み込むような優美さがあります。
江戸時代から東京の駒込周辺で親しまれてきた歴史があり、花と同時に芽吹く若葉の緑が、薄紅色の花をいっそう引き立てます。
ソメイヨシノの潔い散り際とは対照的に、一輪一輪が重厚な存在感を放つこの桜。
春の喧騒が落ち着いた頃、静かに季節の移ろいを慈しむ時間は、まさに大人ならではの贅沢な愉しみと言えるでしょう。

桜 関山(カンザン)

この桜は、八重桜の代表格として名高い「関山(カンザン)」という品種です。
最大の特徴は、華やかな濃いピンク色の花と、それと同時に芽吹く力強い赤茶色の若葉とのコントラストにあります。
花弁は50枚以上に及ぶこともあり、枝を埋め尽くすように密集して咲く姿は、
まるで花の重みで枝がしなっているかのような圧倒的な存在感を放ちます。
病害虫に強く、非常に丈夫な性質を持つことから、明治時代以降、世界各地の公園や街路樹として広まりました。
また、この花を塩漬けにしたものが「桜湯」として祝宴の席で振る舞われるなど、私たちの暮らしに最も身近な八重桜でもあります。
一葉の淡い優美さとは対照的に、生命の躍動を謳歌するような力強い美しさをもった一木と言えるでしょう。

 サザンカ
   

サザンカ
サザンカは冬に咲く花で、寒さの中でも元気に花びらを広げます。ピンクや白の花が多く、葉っぱはギザギザしています。
ツバキに似ていますが、花びらが一枚ずつ落ちるのが特徴です。
公園や庭でよく見られ、寒い季節に明るい色でまわりを元気にしてくれる花です。
「ひたむきさ」や「困難に打ち勝つ」という花言葉があり、がんばる気持ちを応援してくれる花でもあります。


ヤブツバキ    

ヤブツバキ
ヤブツバキは冬から春にかけて赤い花を咲かせる木です。葉っぱはツヤがあり、年中緑色で、寒さや風にも強いです。
花は丸くてしっかりしていて、花びらが散らずに花ごとポトンと落ちるのが特徴です。
そのため時により、首を落とされるとの連想から嫌がる人もいます。
公園や神社、山のふちなどでよく見られ、鳥が花の蜜を吸いにくることもあります。
日本に昔からある木で、ツバキ油のもとにもなります。寒い季節でも元気に咲く、たくましい花木です。

ボケ(木瓜)

ボケ(木瓜)
ボケ(木瓜)は、早春に葉より先に花を咲かせる落葉低木で、
まだ冬の名残がある景色の中に鮮やかな色を添えてくれる植物です。
赤や桃色、白など多彩な花色があり、枝ぶりの力強さと花の可憐さが対照的で、庭木として古くから親しまれてきました。日当たりを好み、丈夫で育てやすいことから、和風・洋風どちらの庭にもよくなじみます。
花が終わると光沢のある葉が茂り、秋には黄色い実をつけるなど、一年を通して変化を楽しめる魅力的な植物です。


生垣

ピラカンサ

ピラカンサ(Pyracantha 和名では常盤山査子 トキワサンザシ)
ピラカンサは常緑低木で、秋から冬にかけて枝いっぱいに赤や橙色の実をつけるのが特徴です。
細長い葉は一年中緑を保ち、冬の庭を明るく彩ります。
実は小鳥たちの貴重な食料となり、自然と生き物を呼び込む庭木としても人気です。
名前はギリシャ語の火(pyro)+トゲ(akantha)に由来し、燃えるような実の色と鋭いトゲを表しています。
丈夫で育てやすく、公園や生け垣でもよく見られます。

ベニバナトキワマンサク

日本の山で見かけるマンサクは黄色だが、この中国由来のマンサクは赤色である。
色彩のルーツを辿ると、日本のマンサクは『山の黄色(落葉)』中国のトキワマンサクは『里の白色(常緑)』が本来の姿でした。
しかし現在、私たちが街中で目にするのは、中国で発見された突然変異種をルーツに持つ品種改良された『ベニバナトキワマンサク』です。
この赤い花は、植物の突然変異が人間の美意識と合致し、都市景観を塗り替えた幸福な例と言えるでしょう。

レッドロビン

日本自生のカナメモチと、大型のオオカナメモチを掛け合わせてアメリカで生まれたハイブリッド品種が、この『レッドロビン』です。
かつて日本の生け垣はマサキやウバメガシが主流でしたが、レッドロビンはその圧倒的な色彩の変化と、病害虫への強さから、
瞬く間に都市景観の主役に躍り出ました。
初夏には、赤から緑へとグラデーションを描く葉の間に、白い小さな花を傘状に咲かせる姿も見られるでしょう。
生まれたばかりの若葉は組織が柔らかく、太陽の強い紫外線にさらされるとDNAが損傷するリスクがあります。
アントシアニンは、光合成を担うクロロフィルが整うまでの間、有害な光を吸収して内部組織を守る「日焼け止め」の役割を果たしています。
バラ科特有の光沢のある葉の上で、赤い色素を持つアントシアニンが紫外線を跳ね返し、生命を守っている。
そう考えると、単なる『赤い生け垣』が、過酷な都市環境で生き抜くための精緻なハイテクスーツを纏っているようにも見えてきます。
赤から緑へ。その色の変化は、木が大人へと成長していく力強いプロセスそのものなのです。