樹木

様々な桜

ソメイヨシノ(染井吉野)

日本の春の象徴とも言える「ソメイヨシノ(染井吉野)」
枝に葉がほとんど見られず、淡いピンク色の花だけが木全体を覆うように咲き誇る姿は、ソメイヨシノ最大の特徴です。
江戸時代末期に江戸の染井村で作られたこの品種は、すべて一本の原木から接ぎ木で増やされたクローンであるため、
一斉に開花し、一斉に散るという潔い美しさを持っています。
植物学的にはエドヒガンとオオシマザクラの交雑種で、成長が非常に早く、若木のうちから見事な花を咲かせます。
青空を背景に、霞がかったように広がる薄紅色の梢。その下で多くの人々が春を祝う光景は、まさに日本の文化そのものと言えるでしょう。

ヤマザクラ(山桜)

ソメイヨシノが全国に広まる前、日本の「花見」といえばこのヤマザクラを指していました。
最大の見どころは、淡い白やピンクの花弁と、力強い赤みを帯びた若葉が同時に展開する色彩のコントラストです。
その独特の美しさは「吉野の桜」として古事記や万葉集の時代から和歌に詠まれ、多くの文人に愛されてきました。
植物学的には非常に長寿な樹種として知られ、数百年を生き抜く巨木も少なくありません。
均質に咲き揃う園芸種とは異なり、一本ごとに開花時期や葉の色が微妙に異なる個性が、野趣あふれる情緒を醸し出します。古人が「山に咲く、ありのままの姿」に神性を見出したように、若葉の赤が混じる枝先を見上げると、生命の力強さと日本の原風景を感じることができます。
華やかな八重桜とはまた違う、静謐で奥深い春の主役といえるでしょう。

シダレザクラ(枝垂桜)

これは、細い枝が優雅に垂れ下がる姿が印象的な「シダレザクラ(枝垂桜)」
その中でも八重咲きのヤエベニシダレ(八重紅枝垂)と思われます。
糸のようにしなやかな枝に、鮮やかな桃色の花が降り注ぐように咲く姿は、まるで滝が流れるような躍動感と気品を兼ね備えています。
平安時代から観賞用として愛され、京都の平安神宮など名所のシンボルとしても知られる、日本を象徴する風景の一つです。
植物学的にはエドヒガンの変種とされ、非常に長寿で生命力が強いのが特徴です。
年月を重ねるほどに枝ぶりは複雑な造形美を見せ、満開時には樹冠全体がピンク色の霞に包まれたような幻想的な趣を放ちます。風に揺れる花枝を見上げれば、古人がなぜこの桜を「糸桜」と呼び、詩歌に情熱を傾けたのかが伝わってくるようです。
ソメイヨシノよりも少し遅れて見頃を迎えるこの桜は、春の終わりの名残を惜しむ、情緒豊かな大人のための花と言えるでしょう。


桜 一葉(イチヨウ)

一葉(イチヨウ)は、ソメイヨシノが散った後の4月中旬に見頃を迎える八重桜の一種です。
最大の特徴は、その名の由来となった花の構造にあります。
花の中央から1〜2本の細い葉のようなもの(雌しべが葉化したもの)が突き出しており、重なり合う20〜40枚の花弁の間から顔を覗かせます
内側が白く、外側が淡いピンク色のグラデーションを描く姿は、春の光を包み込むような優美さがあります。
江戸時代から東京の駒込周辺で親しまれてきた歴史があり、花と同時に芽吹く若葉の緑が、薄紅色の花をいっそう引き立てます。
ソメイヨシノの潔い散り際とは対照的に、一輪一輪が重厚な存在感を放つこの桜。
春の喧騒が落ち着いた頃、静かに季節の移ろいを慈しむ時間は、まさに大人ならではの贅沢な愉しみと言えるでしょう。

桜 関山(カンザン)

この桜は、八重桜の代表格として名高い「関山(カンザン)」という品種です。
最大の特徴は、華やかな濃いピンク色の花と、それと同時に芽吹く力強い赤茶色の若葉とのコントラストにあります。
花弁は50枚以上に及ぶこともあり、枝を埋め尽くすように密集して咲く姿は、
まるで花の重みで枝がしなっているかのような圧倒的な存在感を放ちます。
病害虫に強く、非常に丈夫な性質を持つことから、明治時代以降、世界各地の公園や街路樹として広まりました。
また、この花を塩漬けにしたものが「桜湯」として祝宴の席で振る舞われるなど、私たちの暮らしに最も身近な八重桜でもあります。
一葉の淡い優美さとは対照的に、生命の躍動を謳歌するような力強い美しさをもった一木と言えるでしょう。

カラミザクラ(唐実桜) カラミザクラの実 6月頃撮影

カラミザクラ(唐実桜)は中国原産の実桜で、公園樹としてよく植えられます。
観察では、まず赤い小さな実が多数つき、葉は細長く鋸歯が強いことが確認されました。
続いて樹皮にはサクラ属特有の横縞があり、若木らしい滑らかな質感が見られました。
さらに実を採取して測定すると直径約8mmで、果肉が薄く種が大きい典型的な特徴を示しました。
葉裏を調べると毛がほとんどなく、つるっとしており、これもカラミザクラの決定的な性質です。
これらの観察結果が揃ったことで、この木はカラミザクラであると確定できます。


高木 高さ10m以上
クスノキ(楠)
モミジバフウ(紅葉葉楓)
トウカエデ(唐楓)
ケヤキ(欅)
メタセコイア
ヒノキ(檜)
イチョウ(銀杏)
ヒマラヤスギ
クロマツ(黒松
シラカシ(白樫)
アラカシ(粗樫)
シダレヤナギ(枝垂れ柳)
エノキ(榎)
モッコク(木斛)
タイサンボク(泰山木)
クロガネモチ(黒鉄黐)
ヤブツバキ(藪椿)



小高木・低木 10m未満

アベリア

アベリアは庭木や公園でよく植えられる低木で、初夏から秋まで長く花を咲かせます。
白〜淡いピンクの小さな筒状の花が枝先にまとまって咲き、枝はしなやかにアーチ状に広がります。
葉は小さく光沢があり、常緑に近い性質で一年を通して姿が乱れにくいのが特徴です。
丈夫で手入れが簡単なため、生け垣や植え込みとして広く利用されています。

カイヅカイブキ(貝塚伊吹)

カイヅカイブキ(貝塚伊吹)は、イブキの園芸品種で、
成長に伴い枝が螺旋状にねじれながら上方に伸びる独特の樹形が特徴です。
その姿は貝殻が重なり合うように見えることから名付けられました。
幼木や枝の勢いが強い部分には鋭い葉が見られ、子供の頃に触れると指先が痛むような鋭さを感じることがあります。
剪定に極めて強く、生垣や庭のシンボルツリーとして人の背丈から数メートル程度に制御して楽しむことが一般的です。
耐潮性や耐風性にも優れ、日本の景観に古くから馴染んでいる樹木です。


キョウチクトウ(夾竹桃)

キョウチクトウ(夾竹桃)は初夏から夏にかけて、ピンクや赤などの華やかな花を咲かせる常緑低木です。
細長い葉が竹に、花が桃に似ていることからその名がつきました。
非常に生命力が強く、大気汚染や乾燥にも極めて強いため、かつては公害に強い樹木として道路沿いや公園によく植えられました。
非常に強い毒性を持つ植物として知られています。
枝や葉を折ったときに出る白い液体に触れるのは避け、もし触れたらよく洗い流してください。
剪定した枝を焚き火にくべることも危険とされています。

クチナシ(梔子)

クチナシはアカネ科の常緑低木で、6月から7月にかけて純白の花を咲かせ、非常に甘く強い香りを漂わせます。
ジンチョウゲ、キンモクセイと並び「三大香木」の一つとして親しまれています。
秋に熟す果実は割れないため「口無し」が名の由来とされ、
古くから天然の黄色染料や漢方薬(山梔子)として利用されてきました。

 サザンカ
   

サザンカは冬に咲く花で、寒さの中でも元気に花びらを広げます。ピンクや白の花が多く、葉っぱはギザギザしています。
ツバキに似ていますが、花びらが一枚ずつ落ちるのが特徴です。
公園や庭でよく見られ、寒い季節に明るい色でまわりを元気にしてくれる花です。
「ひたむきさ」や「困難に打ち勝つ」という花言葉があり、がんばる気持ちを応援してくれる花でもあります。

サンゴジュ(珊瑚樹) 初夏の白い花

サンゴジュ(珊瑚樹)は、初夏に小さな白い花を円錐状に密集させ、秋には鮮やかな赤い果実をたわわに実らせるスイカズラ科の常緑低木です。その名は、冬に赤く熟した果実が珊瑚の枝飾りのように見えることに由来します。
光沢のある厚い葉が密生するため、古くから生垣や防火樹として親しまれてきました。
初夏に花が咲き誇り、秋に赤く輝く果実が楽しめる、四季の移ろいを感じさせてくれる樹木の一つです。

サツキ(皐月)

サツキ(皐月)はツツジの一種ですが、旧暦の5月頃に咲くことからその名が付きました。
一般的なツツジより開花が遅く、新葉が伸びてから花をつけるのが特徴です。
緑の葉の中に控えめに咲く姿には、初夏の訪れを慈しむような、上品で静かな趣が感じられます。

シャリンバイ

シャリンバイは、初夏に梅に似た白い花を咲かせるバラ科の常緑低木です。
枝先に葉が輪生し、車輪のように見えることからその名がつきました。
秋には緑から黒紫色へと実が変化し、鳥たちの糧となります。
親しみやすい樹木ですが、実の種子にはアミグダリンという成分が含まれるため、小さなお子様が口にするのは避けるべきです。

ジューンベリー(アメリカザイフリボク)

ジューンベリー(アメリカザイフリボク)は、バラ科ザイフリボク属の落葉小高木です。
春には優雅な白い花を咲かせ、初夏に赤から紫黒色へと色づく果実を楽しめることから、果樹と庭木の両面で人気があります。
果実は生食やジャムに加工でき、季節ごとに花、実、紅葉と移ろいゆく趣深い景観を提供します。
強健で育てやすく、シンボルツリーとして家庭の庭にも適しており、四季の自然の営みを身近に感じさせてくれる魅力的な樹木です。

ソテツ

ソテツは日本の暖地でもよく見られる常緑の裸子植物で、強い日差しや乾燥に耐える丈夫な植物です。
幹はゆっくり成長し、年を重ねるほど風格が出ます。
葉は硬く光沢があり、南国風の雰囲気を演出します。
庭木としても人気があり、手入れは比較的簡単で、古い葉を切り落とす程度で美しい姿を保てます。

トベラ

「トベラ(扉)」はトベラ科の常緑低木で、初夏に香りの良い白から淡黄色の花を咲かせます。
名前の由来は、節分に枝を扉に挟んで魔除けとしたことからきています。
潮風や乾燥に強く、日本の海岸沿いによく自生しており、街路樹や公園の植栽としても非常にポピュラーな存在です。
光沢のある厚い葉が特徴的で、耐陰性もあり育てやすいため、
日本の気候に適した、古くから親しまれている馴染み深い樹木の一つと言えます。

ドウダンツツジ(満天星躑躅)

ドウダンツツジ(満天星躑躅)は、春に可憐な白い壺形の花をつける落葉低木です。
花はスズランに似た形で、縁がわずかにギザギザしているのが特徴です。
ドウダンツツジは公園や庭園の生け垣としてよく利用され、
秋には真っ赤に紅葉するため、四季を通じて楽しめる樹木です。

ネズミモチ(鼠黐

ネズミモチ(鼠黐)は、モクセイ科イボタノキ属の常緑小高木です。
初夏に円錐花序を出し、白い小花を密生させて咲かせます。
名前の由来は、秋に熟す黒紫色の果実がネズミの糞に、葉がモチノキに似ていることからきています。
大気汚染や潮風に強く、刈り込みにも耐えるため、公園の生垣や都市緑化によく利用されます。
清楚な白い花と深い緑の葉のコントラストが美しい、日本の景観に馴染み深い樹木の一つです。

ピラカンサ

ピラカンサ(Pyracantha 和名では常盤山査子 トキワサンザシ)は常緑低木で、
秋から冬にかけて枝いっぱいに赤や橙色の実をつけるのが特徴です。
細長い葉は一年中緑を保ち、冬の庭を明るく彩ります。
実は小鳥たちの貴重な食料となり、自然と生き物を呼び込む庭木としても人気です。
名前はギリシャ語の火(pyro)+トゲ(akantha)に由来し、燃えるような実の色と鋭いトゲを表しています。
丈夫で育てやすく、公園や生け垣でもよく見られます。


ベニバナトキワマンサク

日本の山で見かけるマンサクは黄色だが、この中国由来のマンサクは赤色である。
色彩のルーツを辿ると、日本のマンサクは『山の黄色(落葉)』中国のトキワマンサクは『里の白色(常緑)』が本来の姿でした。
しかし現在、私たちが街中で目にするのは、中国で発見された突然変異種をルーツに持つ品種改良された『ベニバナトキワマンサク』です。
この赤い花は、植物の突然変異が人間の美意識と合致し、都市景観を塗り替えた幸福な例と言えるでしょう。

ボケ(木瓜)

ボケ(木瓜)は、早春に葉より先に花を咲かせる落葉低木で、
まだ冬の名残がある景色の中に鮮やかな色を添えてくれる植物です。
赤や桃色、白など多彩な花色があり、枝ぶりの力強さと花の可憐さが対照的で、庭木として古くから親しまれてきました。日当たりを好み、丈夫で育てやすいことから、和風・洋風どちらの庭にもよくなじみます。
花が終わると光沢のある葉が茂り、秋には黄色い実をつけるなど、一年を通して変化を楽しめる魅力的な植物です。


ヤマボウシ(山法師)

ヤマボウシ(山法師)は初夏に枝一面を覆うように、十字に開いた白い花を咲かせるミズキ科の落葉高木です。
私たちが「花びら」のように見ている部分は、実は葉が変化した「総苞片」と呼ばれるもので、その中心に小さな花が密集しています。
枝が層状に広がる美しい樹形は、庭木や街路樹として古くから人々に愛されてきました。
秋になると、イチゴのような赤くて丸い実をつけます。
この実は食用にもなり、甘く熟すととてもおいしいのが特徴です。
新緑から紅葉まで四季折々の変化が楽しめ、特に白く清楚な花は初夏の訪れを告げる風景として、多くの人の心を癒やしています。

レッドロビン

日本自生のカナメモチと、大型のオオカナメモチを掛け合わせてアメリカで生まれたハイブリッド品種が、この『レッドロビン』です。
かつて日本の生け垣はマサキやウバメガシが主流でしたが、レッドロビンはその圧倒的な色彩の変化と、病害虫への強さから、
瞬く間に都市景観の主役に躍り出ました。
初夏には、赤から緑へとグラデーションを描く葉の間に、白い小さな花を傘状に咲かせる姿も見られるでしょう。
生まれたばかりの若葉は組織が柔らかく、太陽の強い紫外線にさらされるとDNAが損傷するリスクがあります。
アントシアニンは、光合成を担うクロロフィルが整うまでの間、有害な光を吸収して内部組織を守る「日焼け止め」の役割を果たしています。
バラ科特有の光沢のある葉の上で、赤い色素を持つアントシアニンが紫外線を跳ね返し、生命を守っている。
そう考えると、単なる『赤い生け垣』が、過酷な都市環境で生き抜くための精緻なハイテクスーツを纏っているようにも見えてきます。
赤から緑へ。その色の変化は、木が大人へと成長していく力強いプロセスそのものなのです。