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 葡萄酒日記

その5 「テロワール」

 「テロワール」とは、葡萄を栽培する土質を意味します。 たいていの果物用葡萄の栽培は、一つの葡萄の木を横に大きく枝を伸ばし、 一つの木にたくさんの房をつけ収穫しています。 ところが、葡萄酒用の葡萄栽培は果物用とは異なり、 葡萄の木を密に植え、そして背丈を低くします。 産地により異なりますが、だいたい1m以下です。 なぜ、そのような植え方をして、葡萄を収穫するのでしょうか。 それは、地下に深く深く葡萄の根を張らすためです。 よい葡萄畑では、葡萄の木が地上に60cm、地下に根が6mというものもあります。 つまり、見えている部分の10倍が地下にあるわけです。 地下のいろいろなミネラル分が、根から葡萄の果実に運ばれます。 ここが、葡萄酒の面白いところと、私はいつも思っています。 そして、よい畑の葡萄の木では葡萄の房を剪定し、 極端なところでは、葡萄の木一本に、 葡萄の房をたった3〜5房にするところがあります。 葡萄の木一本でグラス一杯の葡萄酒しか造らないところもあります。 それは一つ一つの葡萄の房に、地下のエキス分を凝縮させるためで、 よい葡萄酒は体によいのはこのためだと思います。 葡萄酒はもともと薬であったことが理解されます。 有名な葡萄酒「ロマネ・コンティ」を造っている、 ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社の社長ヴィレーヌ氏は、 「葡萄酒は土地の表現である」と言っています。 つまり、葡萄酒が媒体となって、その土地の特質、個性を味わいます。 フランスの葡萄酒に関しての法律で、 「A.O.C.(appellation d'origine controlee)」というものがあります。 これは、「原産地呼称法」といいまして、この法律で決められたことに合致し、 その栽培されたところの葡萄でとれたものでのみで造られた葡萄酒に、 この「A.O.C.」をつけることが許されています。 葡萄酒のエチケット(ラベル)にAppellation 〜Controleeとかかれています。 この〜の部分に地方名、地区名、村名、畑名が入ります。 たとえば、Appellation Bordeaux Controleeと表記されます。 この真ん中の〜のところが小さければ小さいほど一般的によい葡萄酒となり、 ちなみに一番小さい「A.O.C.」は、 ブルゴーニュの「ロマネ・コンティ」の隣の畑である 「ラ・ロマネ」というたった0.8haの広さの畑です。 ここで製造される葡萄酒は年産約3500本しかありません。 世界からひっぱりだこですから、めったにお目にかかれません。 私も今までに幸運なことに1回だけ飲む機会に恵まれましたが、 とても美味しかった記憶があります。
土質で面白い地区はフランスの「シャブリ」というところで、 白の葡萄酒で有名です。 ここの土質は「キンメリジャン」という面白い名前のついた土壌で、 粘土質と泥灰質が交互に層をなしています。 ここは、太古は海で貝殻が多く堆積してできたといわれていて、 「シャルドネ」という白葡萄品種とこの独特の土壌の組み合わせにより、 すっきりした辛口の葡萄酒ができます。 この「シャブリ」の葡萄酒と「生牡蠣」が相性がよいといわれています。 私はレモンをかけずに、 「牡蠣」そのものと「シャブリ」の葡萄酒を合わせて食べるのが好きです。 レモンをかけるとせっかくの葡萄酒の個性が消えてしまい、 たいへんもったいないと思うからです。
私の私見で申し訳ないですが、 日本料理と「シャブリ」の葡萄酒はとても相性がいいと思います。 とくに、生魚を用いたお寿司にぴったり合います。 ただ、葡萄酒と醤油の相性が悪いので、私は塩を少しつけていただいています。 葡萄酒と塩はほんとによく合います。 血圧の高い方にはあまりおすすめ出来ませんが。
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