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 葡萄酒日記

その34 「ソーテルヌ」

フランスのボルドー市から南東約40kmに、世界3大甘口葡萄酒の産地の一つ「ソーテルヌ」があります。 他の二つはドイツの「アイスワイン」、天才ピアニストのリストが生まれたハンガリーの「トカイ」。 このハンガリーの「トカイ」は、かのフランスの太陽王ルイ14世が「王様の葡萄酒」、「葡萄酒の王様」と絶賛しました。 リストの「ハンガリー・ラプソディー」を聴く度に「トカイ」を想います。 この曲で人口に膾炙しているのは、第2番と第6番。私の大好きなのは第2番です。 この第2番は、映画「オーケストラの少女」に使われてから特に有名になりました。

さてこの「ソーテルヌ」ですが、一番はなんといっても私が葡萄酒に目覚めた「シャトー・ディケム」。 大相撲にたとえると横綱がこの「シャトー・ディケム」。大関なくて関脇もなく、小結もなし。 前頭筆頭が「シャトー・スデュイロー」です。 1994年に1924年のこの「シャトー・スデュイロー」を頂く機会に恵まれましたが、 70年前の葡萄酒とは思えない素晴らしい琥珀色した余韻のとても長い貴腐葡萄酒でした。 「シャトー・ディケム」は、甘露の滴とよくたとえられます。甘くて甘くなく、繊細、精緻。 どのような形容詞を使っても使い切れないほど、筆舌に尽くせない素晴らしい葡萄酒です。 皆様この世の葡萄酒と思えない「シャトー・ディケム」をお試しください。

このソーテルヌの葡萄酒は、普通の葡萄酒と異なり、ボトルを抜栓してからも、1週間は大丈夫です。 神酒「シャトー・ディケム」はこの「葡萄酒日記」その20で既に書いていますが、不作年には出荷しません。 したがってビンテージに欠番が存在します。最近では、1991年がそうです。

さて、ソーテルヌ地区では晩秋、シロン川に霧が漂います。 この霧により「ボツリヌス・ピューチュール菌」が葡萄の表皮に繁殖し、葡萄の皮に穴を穿けます。 葡萄の水分がこの穴から蒸発し、糖度の増した葡萄が出来ます。これがいわゆる「貴腐葡萄」です。 この「貴腐葡萄」を発酵させて造られたのが「ソーテルヌ」です。 ソーテルヌ最高峰「シャトー・ディケム」は、葡萄の木1本から僅かグラス1杯しか出来ません。繊麗で貴重な有り難い葡萄酒です。 ベートーヴェン交響曲第7番第2楽章を聴きながら1990年の「シャトー・ディケム」を賞味したときは最高の酔いでした。
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