その21 「シャトー・ランシュ・バージュ」
1996年にボルドー・メドック地区のポイヤック村を訪れました。
そのとき宿泊したところはオーベルジュの
「コルディアン・バージュ」というこじんまりしたホテルで、
まわりが葡萄畑にとり囲まれていて、葡萄酒の里にふさわしい宿でした。
当時レストランはミシュランの一つ星をとっていて、
本格的なフランス料理を食べる事ができ、
「ポイヤック」と名がついた有名な羊の肉料理をいただきました。
そのときのソムリエが、現在パリで話題を呼んでいる
レストラン「ひらまつ」に勤務されている石塚秀哉氏で、
葡萄酒選びを親身になって手伝ってくれました。
そしてすっかり親しくなり、彼の奥さんの佳子さんが親切にも、
自家用車でボルドーのシャトーをいくつも案内してくれました。
訪問したのは8月でしたから、もう葡萄の木に実が鈴なりに実っていました。
葡萄の実は思っていたより小振りで、今年は例年になくよい天気が続いており、
きっと素晴らしいヴィンテージになると、もっぱら噂されていました。
事実現在ヴィンテージ・チャートで1996年は高い評価を受けています。
オーベルジュの「コルディアン・バージュ」と
「シャトー・ランシュ・バージュ」のオーナーは
ミッシェル・カーズ氏でホテルで温かく迎えてくださいました。
この「シャトー・ランシュ・バージュ」は1855年の格付けは第5級ですが、
実力、価格とも第2級並です。
特にアメリカでは「Lynch-Bages」を英語読みで
「ランチ・バッグ」というあだ名で呼ぶほど人気があります。
シャトーの醸造設備は近代的で、発酵用タンクはコンピューター制御されていますが、
記念館には以前使っていた、直径3mほどの木製の大きな発酵樽が保存されていました。
特に目を引いたのはカーブにあった一枚の絵で、
宇宙船につまれた葡萄酒の絵でした。
「シャトー・ランシュ・バージュ」の葡萄酒がなんとアポロ宇宙船につまれ、
宇宙に行った最初の葡萄酒という事で、
アストロノーツもこの葡萄酒を宇宙で味わったそうです。
宇宙で飲む葡萄酒はどのような味わいだったのでしょうか。
「コルディアン・バージュ」のレストランのオープンテラスで、
夜風を肌に感じながら、「シャトー・ランシュ・バージュ」をいただいた事は、
宇宙でいただくのに勝るとも劣らない至福の時でした。
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