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 葡萄酒日記

その20 「シャトー・ディケム」

黄金色の葡萄酒、この世の葡萄酒とは思えない液体、 ソーテルヌの最高峰、それは貴腐葡萄酒「シャトー・ディケム」です。 ボツリヌス・プリチュール菌が造り出す葡萄酒で、 葡萄の皮にこの菌が穴を開け、この穴を通して水分が蒸発します。 葡萄の実は糖度を増し、この葡萄を発酵させると甘口の葡萄酒が出来ます。 甘口と言ってもどこかの葡萄酒のように甘ったるくなく、すっきりした甘口です。 馥郁とした香り、まさに甘露の滴です。

葡萄酒の命は「香り」ですが、この「シャトー・ディケム」の「香り」は、 大変エレガントで余韻がとても長く、「アカシアの蜂蜜」の「香り」がします。 いつまでも鼻腔に香りが立ちこめていて、脳裏にこの香りが焼き付いています。

「シャトー・ディケム」の畑はボルドー市から南のソーテルヌ地区でも 一番いい小高いロケーションに位置しています。 畑の広さは100haと広めでありますが、平均年産産出量はわずか6万6千本です。 近くを流れるシロン川から晩秋に霧が漂い、この天の賜の霧により貴腐葡萄ができます。 この神業により造られた貴腐葡萄を人間の手により選別され、最高の房だけが摘まれます。 したがって一本の葡萄の木からグラス一杯の葡萄酒しか出来ません。 すなわち一本のボトルの葡萄酒を造るのに、何本もの葡萄の木が必要です。 それに樽は全て新樽を用い約3年間樽熟成させています。

このシャトーが造る辛口の葡萄酒があります。 それは「イグレック」という葡萄酒でエチケット(ラベル)に「Y」と書かれています。 私はこの1985年のヴィンテージのものを、1995年にあるレストランで初めていただきましが、 それはこの世の葡萄酒というより神からの恵みの「液体」と思いました。 鳥肌が立ち、目から鱗が落ちました。 葡萄酒は奥が深いとそのときつくづく思いました。

シャトー・ディケム
シャトー・ディケム


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