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 葡萄酒日記

その19 「クリュッグ」

この世にこんな素晴らしい葡萄酒が存在するのでしょうか。 それは、1979年のプレステージ・シャンパーニュ 「クリュッグ・コレクション・マグナム」です。 これは、先日奈良のあるホテルにて催された、 オーナーのアンリ・クリュッグ氏醸造40周年記念を祝う会に 出席したときにいただいた葡萄酒です。 名鐘のように余韻が長く、大変芳ばしい香りが鼻腔内に残っていました。 そして、繊細で粟のような小さな気泡がいつまでも立ちこめているのが印象的です。

「クリュッグ」は創業1843年以来、シャンパーニュとしては、小さな会社で、 年産約50万本(大手モエ・エ・シャンドン社は2500万本)しか生産しない、 こだわりの家族経営の醸造会社。 昔ながらに木樽を用いて発酵させて葡萄酒を造っています。 世界中からひっぱりだこですから、酒屋さんで見かけることはまれです。 なにしろ約50種の葡萄酒をブレンドして造ります。 これは芸術としかいいようがありません。シャンパーニュの面白いところは、ここにあります。 気候により、葡萄が出来のいい年もあれば、不作の時もあります。 毎年均一の美味しいシャンパーニュを造るために、醸造家は努力しています。 いろいろな年の葡萄酒、いろいろな種類の葡萄酒を貯めておいて、それをブレンドします。 ここが醸造家の腕の見せどころ。 なんと代表的な銘柄の「クリュッグ・グランド・キュヴェ・ブリュット」でも 6〜10年熟成した葡萄酒をもちいて造ります。 このためにほとんどのシャンパーニュには「ヴィンテージ」(収穫年)が表記されていません。 「ヴィンテージ」が表記されているものは、「ヴィンテージ・シャンパーニュ」といい、 いい年の葡萄酒のみ用いて造られています。したがって、価格も特別なものとなります。 「ヴィンテージ」のないものは一般に「ノン・ヴィンテージ」といいます。 ところが「クリュッグ」は「マルチ・ヴィンテージ」といっています。 「ノン」より「マルチ」のほうが積極的なイメージが沸きます。 さすが「クリュッグ」は表現にもこだわりが窺えます。

「クリュッグ」の愛好家を「クリュッギスト」と呼んでいます。 世界中に多くの熱烈なファンがいて、このファンに答えるべく、 醸造家は美味しいシャンパーニュを造り続けています。 いい愛好家がいるからこそ醸造家は頑張ってよい葡萄酒を造るのです。
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