h29/12/30:更新真空管アンプに挑戦
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- 物置から、40年以上前に作った真空管アンプが出て来ました。出力管は7189Aで、6AN8(3極5極管)を用いたもっとも簡単なアルテック型位相反転のPPアンプでした。
- 分解してみると、さすがにコンデンサーは使用に耐えないと思われますが、トランスは導通があり、使えそうです。製作した簡易テスターで調べてみると、真空管も何とか使えそうですから、再度組みなおしてみようと思いました。
- 主要なパーツは、以下です。
- 電源トランス:TANGO ST-250 : 2次側 170v 倍電圧整流 250mA
- 出力トランス:TANGO CRD-8 × 2 : 一次側8KΩのPP用です。
- チョークコイル:TANGO MC-5-250 5H 250mA
- 真空管:7189A × 4, 6AN8 × 2
- シャーシ:アルミ1.5mm厚の昔流行ったマッキントッシュ型
(当時は加工ツールが貧弱だったのか、精度の悪い穴が沢山開いている。)- 7189Aは、現在でも市販している6BQ5の上位規格の真空管です。6BQ5の規格の範囲で作れば、球切れでの交換も可能だと思われます。
- 駆動するスピーカーは、FOSTEX 20cmフルレンジなので、ひずみ率も再生帯域も高精度なものは不要です。
- ただ、単純に組み直すのでは、面白くありませんから、新しい試みに挑戦してみようと思います。
主要部品(シャーシ、電源トランス、出力トランス、真空管)[新しい試みとして]
- ネット上で見つけた<差動アンプ>を試してみたいと思います。
- 出来れば、出力管以外は半導体にしたいと思います。ブレッドボード上でテストが出来ると楽です。
- ノスタルジーに駆られて作るわけではなく、出費も抑えたいし、実用を目指したいと思います。
- 残留雑音も1mV未満のレベルに抑えたいと思います。能率の高いスピーカーが近距離にありますから、アンプのノイズは興ざめです。
- この試みが上手く行くようなら、他に見つかったGT管も試してみようと思っています。
シャーシの傾斜部分(加工の粗さが目立つ)[まずは外観から]―シャーシーの加工―
- バラしてみて、当時の工作の粗さが目立ちます。切断面のバリも残っています。
- 40数年前は、ハンドドリルとシャーシーパンチは購入したけれど、リーマーやニブラー等の工具は持っていませんでした。まだDIYなどの言葉は無く、工具はプロが使う高価なものだったのです。
- 再構築するにあたって、電源トランス、出力トランス、出力管の位置は元のままにします。(変更すると再加工が大変です。)
- 電圧増幅+位相反転の6AN8用の穴をどうするか?チョーク・コイルの使用も、現在考慮中です。アルミ板でサブ・シャーシーを作ることを検討中です。
傾斜部分を大きくカット+1mm厚のアルミ板- 傾斜面は、大きく切り取りました。1.5mm厚ですが、ジグソーに金属用のブレードを付けて、何とか四角形の穴を開けました。
- 1mm厚のアルミパネルを用意しました。ここに接続部品を載せます。
- 穴あけ加工をして、サンドペーパーでヘアーラインを付けて、クリアラッカーで仕上げました。
- 元は傾斜パネルに設置していた出力端子は、出力トランスの真横にしました。少しでも入力端子から離して、ノイズの原因になるのを避けました。
- AC電源は、パソコン用の3Pの電源端子があったので、流用しました。これでパソコン用の太めの電源(AC)コードが利用できます。
- 厄介で面倒な金属加工は、おおかた終了しました。
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[アンプ部の回路]―ドライブ部の試作―
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- アンプ部の回路の原案が出来ました。『情熱の真空管』をはじめ、いろいろなサイトからのコピペです。
- 本当は、そのまま回路をコピーしたいのですが、掲載されている回路のJFETは、2SK117BLで、手持ちの2SK117は全てYランクです。GRやBLランクのものは2本ペアで販売されていますが、高価です。
- 仕方がありませんので、手持ちの2SK117の中からIDssの大きなもの(2.5mAくらい)を選び、さらに動作点を少し変えてつじつまが合うようにしました。
- ドライバーの部分だけをブレッドボードに組んで動作させたところ、0.15vの入力信号で3.8vの出力と0.8%以下の歪率(1kHz)が得られました。
- 実効値3.8vは、Peak-Peakで11v程度です。7189Aのグリッド・バイアス電圧は、-9v程度ですから、P-Pで18v(実効値で5.8v)のドライブ電圧が必要です。
- このまま入力電圧を上げても、歪率が急激に増えますから、対策が必要です。コレクタ抵抗を18kΩに増やして、その分B電圧を上げて試してみました。
- B電圧を36vまで上昇させると、入力信号0.2v、出力実効値5.8v、歪率1.9%になりました。
- この当たりで妥協かな・・・と思いましたが、コレクタ抵抗、供給電圧、歪率の関係は微妙ですので、もう少し詰めてみたいと思います。
[ドライブ部の回路決定]
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コンパクトにドライブ段が組み上がりました。
- ブレッドボード上の試作をいくつかやってみました。
- 右図がその結果です。初段JFETは2SK192A(Y)で、2本分で約4.5mAを流します。
- (2SK192Aは購入した20本の中でIdssを測ると、±0.2mA程度なら2本揃いの組みがいくつか出来ました。)
- 入力信号0.36v出力信号(2SC1815のコレクタ間)5.8v時、歪率0.38%(1kHz)でした。
- 2SK192Aは最大電圧が低いのですが、上にTrを乗せれば、2SK30Aと2SK117の中間の感じです。とりあえず歪率が1.数%だったのが改善したので、この回路で実用基板を作成することにします。ただ、2SK192Aは、ピンの順番がDSGで他のJFETと異なっていて、配置は面倒です。
- 少し窮屈ですが、サンハヤトのユニバーサル基板(ICB-86 47×72)に、2チャンネル分を組み込みます。NFB用の抵抗とJFET・Trは丸ピンソケットに差し込む形で、交換ができるようにしました。他の接続部分はハンダ付け用にハトメラグを付けました。左端の緑色は電源用のコネクタです。
- なお、出力トランスのP1端子とP2端子が上下クロスしていますが、CRD-8はこの接続で負帰還用の位相合わせができます。(※実際の配線はクロスしてはいません。)
- 出力管7189Aのカソードの抵抗は33Ω固定にしました。
[電源部の回路]
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- 右図のような回路を考えました。チョークコイルは重さと占有面積を考え使用をやめ、半導体の定電圧電源にしました。電流制限は少し余裕を考えて200mAにします。
- ドライブ段の電源も、C電源用の38vタップを使って、定電圧化します。2SC1815のコレクタ電圧の微調整が出来れば、出力段の設定が楽です。
- B電圧は、定電圧回路を通して供給しますが、2次側の1番低い電圧のタップを使っても40v程度下げなければなりません。このままではパワーTrに6wもかかることになり、放熱が大変ですので、抵抗200Ωで30vドロップさせてから定電圧回路に通すことにします。
- 70mm×50mmのユニバーサル基板に収まりました。制御用パワーTrはヒートシンクを付けてシャーシの上(外)に設置します。
- このヒートシンクはCPU用で冷却Fanが付いています。本来は駆動電圧12Vですが、ヒーター用のタップを整流して、約6vを供給しました。これで静かに回ります。
組み上がった電源部の画像(パワーTrは別)- 各部分が組み上がって来ましたので、シャーシにトランス類を乗せました。総重量が8.5kgありますので、動かすのも大変です。
- 旧作の時のドライブ管用の穴やブロックコンデンサの穴がそのままで見栄えは悪いのですが、とりあえずは放熱用の穴と考えてそのまま組立ます。
[配線作業]
(一応の配線は済んで・・・、点検時に!)
- 真空管アンプの配線など、久し振りなので戸惑うことばかりです。通常の2mmφのこて先では熱量不足で、上手くハンダがのりません。こて先を3mmφに換えました。
- ビニール被覆線は、ジャンク箱から見つくろって・・なので、接地線は黒色にしましたが、他は統一できなくて適当です。原則は「点検時に見やすいように」です。
- 一応の配線は済んで、穴のあくほど点検して、電源ONしたらFuseが飛びました。2Aでは突入電流に耐えられなかったようです。4Aを入れてやっとヒーターの赤熱が確認出来ました。
- 通常の<電気いじり>は、高くても12v程度の電圧ですから指で触っても平気ですが、さすがに真空管アンプは300vとなると迂闊に触れません。電源をOFFにしても、平滑コンデンサはしばらくは高圧です。
- 「電圧の異常はなさそう・・・」だったのですが、ケアレスミスで、高圧電源のTrを飛ばしてしまいました。
- こうなるとユニバーサル基板の配線は始末が悪く、全て外さないと個々のパーツが正常かどうかも判定できません。(使用したスルーホール基板はパーツを外すのもなかなか面倒でした。)
- 最終的には、ドライブ段の電源部を切り離して残し、高圧のB1電源は作り直しとなりました。
- 幸い高圧Trの予備はあるのですが、W数の大きな抵抗は揃いません。部品を調達して仕切り直しです。
[完成]
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- もう一度高圧電源部を作り直して、組み込みました。入力・出力ともターミナルブロックを付けて接続を容易にしました。
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- 部品調達時に店頭でメタルクラット抵抗が目に入りました。その美しい姿にくらっと来て購入してしまいました。25wなので熱で溶断などの心配はありません。
- 「あれれ!」配線が完了し再度点検したのち、電源ONしました。はじめは電圧値はほぼ予定どおりだったのですが、B1の電圧が徐々に下がって255Vになってしまいます。
- 「悩みました。」原因は電源部の電流制限回路でした。ZD3.3VとTrのB-E間の2つ分の電圧(1.3V)+10Ωの電圧降下(2V)の比較だったのですが、Tr2つ分のB-E間電圧が予定より大きかったようで、130mA付近でリミッターが働いてしまったようです。
- 10Ωの抵抗に20Ωを並列につないで対処しました。
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- 音源とスピーカーををつないでみました。無事に音が出ていて一安心。次はNFBの線を接続して発振しない(正帰還ではない)ことを確認しました。
- ノイズはほとんどありません。交流電圧計(自作)の最小10mVレンジで0.8mVを示しましたが、0.8mVは元々このミリバルで測れる最小値なので、もう少し低いと思われます。
- とりあえず10kHzの矩形波を入れて、パソコンオシロで見ると、ピーク等はなさそうです。
- 次は、データ測定です。
[データ測定とマトメ]
- 残留ノイズは、0.8mV以下です。ヒーター電源は交流6.3vの片側をアースしているだけですが、ハム音等はありません。全直流電源のリップルを減らした効果は大きいと思われます。
- [歪率]0.3Wくらいまでは0.1%ですが、0.5W辺りから急に増えて、2Wが限界(10%を超える)です。
- [DF]ダンピング・ファクターは、約4.2(1kHz)でした。
- 周波数特性は測っていません。10kHzの矩形波が、少しだけ角が丸まって出力されましたので、高域はダラダラ下がりかと思われます。
- 試聴してみると、特徴のない素直な音質です。「いい音」かどうかは、私の耳ではわかりません。
- ただ、AB1級PPで15W以上出力できる7189Aを、PPで使って2W弱の出力は少し情けない気がします。ドライブ段の歪の増加がそのまま出力に反映しているのではないかと推測されます。
- B1の電圧は可変出来ますし、B2電圧も可変できますから、もう少しドライブ段をいじってみようと思います。
- 一つの案としては、2SC1815のコレクタ抵抗を15kΩに増やし、B2電圧をその分(+10v)増やす。
- もう一つの案は、B2電圧を100V程度まで上げ、2SC1815を耐圧の高いものに変更して、低歪のドライブ信号電圧を得る方法です。