前日、夕刻から風は吹いていたが、夜中、日付の変わる頃からさらに風が強くなり、テントが飛ばされるのではと思うほどの暴風が朝まで吹いた。
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月光下の連峰 |
これで気温が低ければ翌日の行動も含め、かなりヤバイことになるが、 テント内に置いたプラティパスの水が一部シャーベットになる程度だったので気温はそれほど下がってはいないようだ。
今回の山行の一番の景観はこれ。(表題画像)
朝一、テントを開け外の景色が見えたその瞬間、目に飛び込んできたのは驚くほど大きく、見事な姿で朝焼けに映える富士山。
昨日は見えなかったので、このときはじめて見たが、とにかく素晴らしい景観だった。
当初、今日は奥穂高岳、前穂高岳と縦走して、岳沢経由で上高地へ下ることも眼中にあったが、涸沢までに冒した負傷を、
「これは何かの暗示。」
と捉え、重い荷を担いでの危険個所の縦走は、あっさりあきらめた。
7時過ぎ、テン場をスタート。
南稜を下るといっても決して油断は出来ない。
昨日のこともあるので、とにかく慎重に歩く。 |
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南稜より前穂高岳〜吊尾根〜奥穂高岳 |
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南稜を下り切り、梯子、鎖場を下るとひと段落するが、それからでも大きな露岩がむき出しになっている個所が二か所ほどあるので注意する。
夏にはお花畑の広がるところまでくれば涸沢のテントが手のとどきそうなほどになり、ほどなく無事、涸沢小屋テラスに戻ってこれた。
危険な個所はほぼ終わったとはいえ上高地まで、まだかなり時間を掛けなければならないが、せっかくの涸沢。
昨日は我慢したし、今日はヒュッテのテラスで名物のおでん。 |
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涸沢小屋と奥穂高岳、白出乗越 |
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ここに来てようやくの出番、シルク・ヱビス。
「なんで今まで大事そうに持ってたん?」
こんな声も聞こえてきそうだが、理由はどうであれこんなところで飲めば、さらにうまい。
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涸沢より涸沢岳と北穂沢、北穂高岳 |
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おでん、シルク・ヱビスと涸沢岳 |
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ここからは、「せめてパノラマ・コースで。」と考えていたが、
これまでに見た数のテント+二つの小屋に泊った人の数を合わせると、合計何千人もの人がこの狭い場所に居たわけで、その内のわずかな人がこのコースを選択しても、それは相当な数になるだろうから、どんな状況になるか言わずと知れそうなもの。
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中には涸沢こそ目的地の人も多数いるだろうし、その人たちの多くはきっと初心者。
イーコール、歩行は遅々とすることが間々ある。
元来、整備の行き届いたルートではなく、道幅も、いかにも登山路だから人をどんどん追い越す場所なんてあるはずはない。
思い浮かべると、胸にワッペンを貼ったツアー客をこれまでにたくさん見たぞ〜。 |
涸沢ヒュッテ下の黄葉と屏風の耳 |
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槍の穂先を望めるのがこのルートの一つのメリットだが、お陰でこちらは北穂高岳から見てきた。
「止めておこう。」
横尾への正規のルートで上高地へと下るが、これはこれで単調で長い。
人の列に並んでの歩行にせよ、それなりのペースで歩けているはずなのに、やけに時間が掛かる。
涸沢から本谷橋まで1時間。さらに横尾までも50分。 |
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横尾より望む前穂高岳・東壁 |
下りでこれだから、やや参る。
参るといえば北穂への登りで気になりだした、転倒した際の肩の付け根の痛み。
この頃からほとんど平地を歩くようになったからか、さらに気になるようになり痛くて仕方ない。
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これまでもザックがいつもと違う感覚で肩に食い込むように感じたのは、きっと転倒、負傷の際、ザックにおかしな方向に力が掛かり、それが元で肩の付け根まで痛めていたのではないかと、このときになって、やっと思い知らされた気がした。
いや、そうに違いない。
肩が痛くて仕方ないのだ。
それも手伝って横尾からの歩くペースはかなりダウン。
ま〜、急ぐ要素はないといえばないから、ゆっくり歩く。 |
徳沢で憩う外国人ハイカー |
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徳沢でちょうどお昼。
徳澤園で特製カレー。なかなか旨い。
おもむろに相席の女性から話しかけられた。
涸沢から奥穂に行って来たらしいのだが、話しをするうち彼女の話しの中に一人の男性の話しが出てきた。
よくよく聞くと、何とその彼は北穂高の小屋前のテラスで一緒になり、その後も夕陽を一緒に見た、あの青年だ。 |
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明神館と明神岳 |
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こんなことって、あるんでしょうか。あるんですね。一期一会です。
肩の痛みに耐え上高地に着いたのは14時だった。
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穂高を見上げれば肉眼でも奥穂の山頂にいる人が確認できそうなほどの上天気。
「槍が見えてるだろうな〜。」
また行きたくなってきた。
一方、河童橋のたもとでは観光ツアー客と、彼らを仕切る添乗員とで溢れかえっていた。
こんなところには居たくない。
のんびりしてても何も良いことはないので足早にバス・ターミナルへと急ぐ。 |
ササの緑は目に優しい 小梨平で |
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ところがどっこい。ここもすごい人。
どの乗り場も長蛇の列だ。
「え〜っと、平湯行き、平湯行き。」
「こんちわ。」
誰だかこちらに向かい声を掛けてくるでは
ないか。
ふと顔をみると、またまた昨日北穂で会った彼。
これで都合、三度目の登場となった。 |
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河童橋近くより穂高連峰 |
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三度も会えば、もう知り合い。列に入れてもらい間もなくに到着した平湯行きのバスに乗り込んだ。
アカンダナ駐車場で彼とは別れ、平湯の外湯でひとっ風呂浴びたあと家路に着いた。
名神高速での『瀬田東〜彦根、事故渋滞40キロ』に思わず北陸道へ迂回し、敦賀、小浜、舞鶴道経由になったのは大きな誤算だったが、それでも家まで無事に到達して、ちょっと勿体なかった気もする北穂高岳一泊テン泊山行はなんとか終了した。
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長々の長文にお付き合いいただき、今山行記を完読された方におきましては、ここに厚くお礼申しあげます。
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