大茅スキー場〜若杉原生林〜東山(とうせん)
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このページの画像はすべて Canon IXY DIGITAL 55で撮影しました

東山・山頂南より氷ノ山、三ノ丸方面を見やるKさん
◆【山行日時】 2006年3月5日  快晴のち時々曇

◆【コース・タイム】

大茅スキー場=55分=若杉天然林・休憩舎=40分=県境尾根・稜線=65分=1,158.9ピーク

=55分=1,205北方=10分=林道出合=65分=東山山頂

=25分=林道=25分=1,205北方=30分=1,158.9ピーク=35分=県境尾根=15分=休憩舎=45分=スキー場

(コースタイムはシール登高時間と滑走時間が混在しています)

パタゴニア


◆【詳細】

中国山地東部、鳥取県南東部、若桜町と智頭町境に位置し、この地域では氷ノ山に次ぐ標高を持つ東山(とうせん)に、岡山県下三大河川のひとつ吉井川の源流域でもある若杉原生林より向かおうと、Kさん、Mさんと共に早朝、自宅を発った。

道中は順調だったものの、大茅スキー場で予想外の光景。大きな除雪車が道を塞ぐように真横に向けて置いてあった。ルート変更も考えたが、ここから歩くしかないと腹をくくり路肩に駐車し歩き始めた。

ほぼ除雪された立派な舗装路なのでアスファルト上を歩くのは気分のいいものではなかったが、早朝のためアイスバーンと化した部分が多数見られ、車の乗り入れに関しては納得しながらも自分の足元には充分注意を払いつつ小一時間ほど歩くと、ようやく本来駐車するはずだった若杉原生林駐車場着。
若杉原生林・駐車場
ここから雪上歩行。ここ数日で少しばかり新たな降雪があったようだが雪は締まっており、ツボ足で行く。

原生林を左右に見ながら歩行すると、いつしか正面に若杉峠付近の稜線が間近に見えるようになった。
ルートを左へとり、そこよりは少し西よりの県境尾根のコルへ向け斜面を上る。若杉原生林を行くll







結局、ここまでツボ足で上がってこれた。

スキーを履き、雪のない時期には湿地帯のような箇所を1,111南西コル手前まで滑る。
滑るといっても決して一人前には滑れない。
上りではない程度のホンの小さな沢沿いを下っていく感じだ。

下りきったところで現れたのは、Kさんが過日、付近一帯に立ち並ぶ植林の一本の木にマーキングをしていた赤布。
この付近はスギ林のため今日のような好天時でさえ決して辺りに明るさは感じず、方向感覚もマヒしそうな場所。

これが降雪やガスなどの悪天時なら、状況は最悪だ。
そんな悪天下でこのマークを想いの場所にポイントし、今日きっちりとその箇所に出合ったことでKさんの読図技術の高さ、正確さが証明されたわけだ。

小さな沢を渡り短く登高すると、1,111南西コルにもきちんと赤布はありショートカット成功。

1,111から短く滑ったら、これからの尾根歩きの象徴のような複雑な地形の中でのアップダウン。植林帯の中なので展望は全くなく、下手をすると小さな枝尾根に迷い込みかねない。
1,158.9より見る遠山(奥、左に小さく)方面
所々で古ぼけた赤テープも見られるものの注意が必要だ。

1,158.9は東西に少し長く、西寄りに出たが、東へ向かえば中国自然歩道の案内板がある。傍らの木には新しい赤テープがあった。

このピークからは彼方に東山山頂部がわずかに遠望できたが、まだまだ遠い。
Mさん曰く、
「こりゃ〜、遠山(とうせん)だな〜。」
もちろん他の二人も、うなずく。
くらます(左)、三室山


短く下ったら、ここから1,205までは小さなアップダウンを何度か繰り返しながら進む。

こう書けば、一見、退屈そうに聞こえるかもしれないが、これまで一切展望が利かなかった鬱憤を晴らすかのような展望が広がり始めるので、決してそうではない。

さすがに左手(智頭町側)は植林にさえぎられほとんど展望はなく、時折、南西の沖ノ山や遠く、那岐山方面が見える程度だが、右手(若桜町側)の展望はすでにこの付近でも素晴らしい。

眼下には梢越しに吉川の集落を遥かに見下ろし、江浪谷を挟み、くらます〜高倉の尾根が横たわる。その右手に小さな三角錐をみせる三室山(上画像)。

やがては右前方に赤倉山〜氷ノ山〜三ノ丸の真っ白な尾根が目に飛び込み、思わず感嘆の声をあげる。

後方には、天児屋山や後山〜駒の尾山稜線も見えるようになる。(下、右画像)

視線の先の前景、稜線東側には伐採を免れた古いブナや天然スギも見られるので、それらと相まってこの風景が一層絵になって見える。後山、舟木山〜駒の尾山

お陰で、1,205へは距離の割りにいつしか到達した感じだった。
このピークからシールをはずし滑る予定だったが、この先ももう少し上りがあったので、もうひとつ北側のコブから滑走する。

林道へは目測を誤り西側の小さな谷筋を下ってしまったので、急斜面と薮に少し難儀した。

朝、それなりの時間(7時20分)に駐車地点を発ったにもかかわらず、時間はここで12時前になっていた。
くらます、三室山をバックに登高するKさん




林道で早めの昼食としたら、林道を峠まで短く歩き、三叉路を山頂方面へ。

すぐに林道を外れ、植林の急坂を登る。

背後に見える先ほどまで居た尾根の末端が低くなるのを励みに、斜登高で順調に高度を稼ぐ。

植林帯を抜けると左右にブナの点在する斜面を歩くようになり、右手に大きく広がる県境の山々の広大な風景を見ながらの登高であること(上画像)や、帰路、この斜面を滑れることを楽しみに頑張る。
Mさんと三室山(右端)
山頂手前の台地まで来れば山頂は目前。ようやく遠山が東山になり、目の前だ(右、下画像)。

氷ノ山、三ノ丸はさらに大きく見えるようになり(表題画像)、三室山との県境尾根にあって中央部にひときわ白い山腹を見せているのは落折山
東山南台地より鳴滝山









東山への最後の登り




左に鳴滝山を見ながら(上画像)最後の斜面をこなすと、ようやく東山山頂だ(13時25分)。

しかし、トップを歩いていたKさんはそこの光景を見て発した第一声は
「誰か来てるヮ!」だった。

昨日か、今日と思しき新しげなスキーとスノーシューの跡が、東に下る尾根と鳴滝山方面へと続いていたのだ。

山頂をけがされたようでいささかショックだったが、それもホンの一瞬。都合、6時間近く掛かってたどり着いた充実感はすぐにそれよりも大きくなった。

三人でガッチリ手を握り合ったあと、しばらくそこからの風景に見入った。
東山山頂より扇ノ山、青が丸、陣鉢山東山山頂より氷ノ山














西側は鳴滝山が見える程度でさほど展望は利かない(実はあまり見ていなかった)が、北から東、南にかけての眺望は素晴らしい。

東山山頂よりくらます、三室山、植松山、天児屋山、後山、舟木山(左より)真北には扇ノ山も初めて姿を見せ、右へ青が丸陣鉢山氷ノ山三ノ丸へと続く。三ノ丸の雪原はここから見ても、やはり、ひときわ大きい(上、両画像)。

さらに県境尾根を追うと、戸倉峠で一度下がった高度は落折山で高さを増し、波佐利山付近はほぼ平にも見える。

くらますの尾根を手前に見て、三室山の三角が大きく、大通峠付近で高度を落としその奥に植松山(右画像)。

天児屋山で立ち上がったあとは、なだらかな稜線となり駒の尾山、舟木山、後山稜線が思いのほか大きい。

あいにくここは鳥取県なのでそうと言い切れないにしても、見えている山々がほとんど兵庫県との県境の山であることを思えば、もしここが兵庫県なら、目の前に広がった風景は兵庫県下でもっとも素晴らしい山岳風景と言っても過言でない。

兎に角、そこには長い道のりを経てここに立った者のみが享受できる、ご褒美的な素晴らしい光景が広がっていたのだ。
氷ノ山、落折山をバックに滑るMさん
展望を楽しんだら、滑降だ。

林道までがメイン・イベント。
三人で先頭を交代しながら、また写真を撮りながら滑走。

西側から見ると氷ノ山や県境尾根を背景に滑ってる感じになり、ロケーションは「もう最高ッ!」。
ブナ林滑走のKさん






ただ・・・、毎度のことながら、きつかった上りも滑ればあッと言う間。

1時間掛けて登った林道からの道のりも、休み々々でさえ20分ほどだった。

林道三叉路からは尾根に向け直登。東に延びる尾根との合流点に大きなブナがあった。
往路ではわずかな差でこの地点を見落としたようだ。
1,205北斜面より東山(中央奥)を振り返る
ここからは時折左手に広がる展望を楽しみながら尾根上を緩やかに歩く。

1,158.9手前で三室山を見送ったら、そこへの短い登り。
ブナと三室山









1,158.9で遠くになった東山も見送ったら、植林帯を行く。

1,111は東側を巻きショートカットすると、見事に朝の一つ目の赤布の箇所に戻ってきた。

緩やかに歩き、県境尾根まで来ればあとは下りのみ。シールをはずし、沢筋を滑る。
本流沿いをしばらく滑ると、東屋の立つところ。

道路脇の雪壁上をしばらく下ったが、ちくさへの分岐上部の橋の部分でこれも終わりとし、ここからは車道歩きとなった。

すっかり乾いた路面を恨めしげに見ながら歩くと、ようやく駐車地点に着いた(17時30分)。

Mさんの
「今日は岡山から島根まで歩いてきた気分やな。」
が本コースの長さを端的に表わしていた。

これまで遠くより眺めるばかりだった東山は今回、実際そこに足を運んだことにより実はこの山の名前は遠山なのかも知れないと、その行程の長さを身を持って体験したが、絶好の山日和だったこともあり山頂からのものはもちろん、そこへと続く稜線上からの素晴らしい光景は今後永く脳裏に残るであろう山行になった。


荒天下に限らず雪山では充分な知識、装備をもって臨まなければなりません
なかでも地形図、コンパスはどのような状況においても最重要な必須アイテムです


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