大茅スキー場〜若杉原生林〜若杉峠
若杉峠より氷ノ山、くらますを望む

若杉峠より氷ノ山、くらますを望む
◆【山行日時】 2006年4月1日  晴れ(高曇り)のち時々曇

◆【コース・タイム】

大茅スキー場先・駐車地点=1時間15分=若杉天然林・休憩舎=40分=台地上の東屋

=1時間15分=若杉峠(県境尾根・第3分岐点経由)=25分=休憩舎=30分=駐車地点


パタゴニア



◆【詳細】

先月5日、東山に行った際、
「これだけの距離でも一日でこなせるなら、そこよりも近い沖ノ山も若杉からでも何とかなるだろう。」
と思った。

そもそも今回の目的地とした沖ノ山は自身の中では東山とワンセットの範疇にあったが、それはあくまで漠然とした思いの中のものであって、現実はそれらの位置はずいぶん遠く、一日でどちらも登れてしまうほど簡単な山ではなかったことも実感した。

無積雪期なら林道利用すれば入山口までは容易に入れるものの、びっしりと生えた藪にさえぎられとんでもなく時間を要し、歩き易いと思われる残雪期も残りわずか。

さいわい今年は例年になく残雪は多く、一度は消えかかったものの、つい二日前にもさらに降雪を見たことをいいことに「今シーズン最後のチャンス。」
と、若杉原生林へと車を走らせた。

先の東山の際は大茅スキー場で道路上に横たわる除雪車に行く手を阻まれたが、さて今日はどうだろう。

スキー場手前の集落を通過する際、除雪車が格納庫に入れられているのが目に付いた。
「おッ、今日は奥まで入れるぞ。」

大茅付近から路面には所々で積雪が見られるようになったが、
「これくらいなら大丈夫。そのうち除雪もされているだろうから、何とか行けるだろう。」
スキー場手前の集落から路面が真っ白になったものの意に介さず、そのままの勢いに任せ奥へと進む。

予想通り、スキー場先に除雪車は見当たらなかったまではよかったが、その代わりと言っては何だが除雪が一切されていないではないか。
積雪は2〜30センチメートル程度だから、そう大した量でもないのだが、これではこの先どこまで走れるか分からない。

雪上を走りながら、ふと
「今日は何日だ?」
こんなことを想った。

「4月1日か・・・。」
「そうか、今日からは新年度か・・・。」

”国土交通省”のあの除雪車が稼動しない訳を見出した気がした。
降雪がもう一日、二日早かったら、すんなりと最奥まで入れただろうに・・・。

しばらくもがいて身動きが取れなくなった標高720メートル地点でギブ・アップ。

あまりにも現金とも思えるお役所仕事に、前回同様、出鼻をくじかれた格好となった。(あくまで個人的な見解)


準備が出来たらノートラックの車道をシール歩行でスタート。

若杉駐車場までは、スキー場から雪のない車道の歩行で約1時間だったから、
「今日は少なからず上部からの歩行開始に付き、これと同じくらいの時間でそこに着けるはず。」
と思いきや、雪の状態が悪くシール歩行は思うに任せない。
若杉原生林・駐車場
歩行はラッセルとまでは行かないまでも春の湿雪に一歩ごとに足はもぐり、そのスピードは遅々としている。

駐車場までに要した時間は先日の約1.5倍。予想外の時間経過に、ここですでに今日の山行の成否は黄信号。

原生林入口の東屋で小休止し再度、歩き出すものの、雪の状態は道路上のそれよりもさらに悪くなり、この先の行程に不安が頭をよぎる。

すぐに沢を右岸へと渡り、左手に見える尾根に取り付くが、ここでの歩行も想像以上に時間ばかりが過ぎ、なかなか距離を稼げない。

台地上にある東屋

台地上に出ると自然研究路の東屋に出くわしたが、何とここまでに40分もの時間を要しているではないか。

黄色信号が点滅し始めた。

無雪期ならわずか15分〜20分程度の道のりだろうから、これではあまりにも時間が掛かり過ぎである。

歩を進め急な尾根をしばらく登ると、ようやく県境尾根の稜線に出た。

しかし、歩き始めてから既に3時間を経過してまだこの地点。

雪の状態や、これまでに歩いた距離と目的地の沖ノ山までの距離を考えると、どうやら目的を達成することは無理と判断し、天児屋山、三室山方面遠望ここで赤信号。

たとえそこにたどり着いたとしても、この雪では快適な滑走も期待できそうにもなく、あえなくここで軌道修正し、このあとは県境尾根を若杉峠まで歩き、その後、駐車場まで戻るという、軟弱ルートに変更することにした。

展望もさほど優れず、稜線直下付近では東方わずかに三室山、天児屋山方面を望むことが出来たが、ここまで来たからといって展望を得られるようになったわけではなかった。

南方もかろうじて後山〜駒の尾山稜線が望める程度で、これまでとあまり代わり映えはしなかった。

後山〜駒の尾山


一転、若杉峠を目指し歩き出したものの、それはそれでこの付近の地形は一筋縄では行かず、慎重さを要する。

複雑に入り組んだ顕著でない尾根と、雑木や植林の混在する独特の地形。

展望の利く日でも思うように眺望を得ることは出来ず、ルート・ファインディングは難しい。

特に、植林帯を歩かなければならない場面では方向感覚が麻痺したようにも感じられるから、そのときは細心の注意が必要だ。

小さなアップダウンもあるからシールを付けたままなので、まったく面白くもない。
第3分岐点の案内板
第3分岐点で現在地を確認したらコブは岡山側を巻きながら進む。

若杉峠西のコルからは、わずかながらようやく北方の展望を得ることが出来、遠くに東山を見た。

それでも、峠を見下ろす箇所で正面に姿を見せてくれた
くらますと奥の三室山が、ようやく息苦しかった歩行から解放させてくれた。

左手には氷ノ山も春霞の中にぼんやりと見えたから、よしとしよう。

くらますと三室山


ようやくここでシールを外し峠へ向け滑ったが、案の定、雪は新雪にもかかわらず最悪で、こちらのような者にとっては手に負えたものではなかった。

結局、
「何度ターンをしただろう?!」

若杉峠の道標






昼食後、峠からの滑走もまったく滑ることができず、峠で氷ノ山を遠望しながら摂れた昼食が、唯一の救いとなった。

沢の渡渉を避けるため、努めて右岸を歩き次第に高度を下げると朝の自身のトレースに出合い、やがては本流の渡渉点。

わずかに顔を覗かせた吉井川源流・吉野川の沢



このままではあまりに土産がないので、久しぶりに沢で水を汲み、それを土産としたら、その後、短く滑ると東屋に着いた。

これまで誰にも会わずにいたが、ここでスノーシューの足跡に遇う。

さすがにこの雪、ここで引き返していた。

千種町への分岐手前




車道に出ても、スキーはまったく滑らず、かと言って締まってもいないこの悪雪ではスケーティングも出来ず、ひたすら手漕ぎである。

自身が付けたトレースや、スノーシューの踏み跡もさほど役に立ってくれない。

一ノ橋上部でようやく何もせずとも滑るようになったものの、これも束の間。

橋の下部からは再度、漕ぎ。

もうしばらく我慢して漕ぎ続けると、ようやく駐車地点に着いた。


積雪があったのが良かれと思い目指した沖ノ山だったが、それがため車は思ったほど奥まで入ることが出来ず、また歩行、滑走ともに春のとんでもない湿雪に悩まされた、別の意味で記憶に残る山行となってしまった。



荒天下に限らず雪山では充分な知識、装備をもって臨まなければなりません
なかでも地形図、コンパスはどのような状況においても最重要な必須アイテムです


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