三ノ丸〜氷ノ山
三ノ丸より氷ノ山

三ノ丸より氷ノ山を望む

◆【山行日時】 2002年11月17日  快晴
◆【コース・タイム】
殿下コース・登山口=25分=仙人門=15分=坂ノ谷コース・合流点=15分=三ノ丸・展望台=50分=氷ノ山山頂

=40分=三ノ丸・展望台=10分=坂ノ谷コース・分岐点=20分=登山口
◆【正味歩行時間】 2時間55分
パタゴニア

◆【詳細】

先の那岐山で今秋初の降雪を見たように、まだ11月だと言うのに県北の山々には、すでに積雪があるようだ。本来なら晩秋のこの時期小春日和の日もあり、本格的な冬を前に里山歩きには良い時期のはずなのだが、一体どうなってしまったのか!?
今年に限っては「陽だまりハイク」を楽しむ時がないのだろうか。

「秋になったら、どこか近くの山に行こう」
夏休み以降、(あ)と、こんな約束を交わしていたものの、ズルズル日が経ってしまい今になっていることが親なりに気になっていた。

冬の到来が異様に早い今年、このまま秋が過ぎてしまい時機を逃してしまってはいけないと、絶好の好天に恵まれた晩秋のこの日、彼との約束を果すべく、この際、
「どうせ行くなら、雪を見に行こう。」
新雪の氷ノ山へ向かうことにした。

三ノ丸をあとにし氷ノ山へ

三ノ丸から氷ノ山へ向かう

最低目標は三ノ丸から氷ノ山を見ること。

そうなると、入山口までの林道の積雪状況が最も気になるところ。

氷ノ山山頂への最短距離である大段ヶ平までは積雪の為、いくらなんでも進めないだろうと判断した。

もっとも、このコースの場合、目標を達成するには、そこからさらに三ノ丸をピストンしなければならず、歩行距離、時間を考えると、わざわざ無理を押してまで車を進める意味がない。

かと言って、林道上に雪の心配の少ない最も手前の登山口、坂ノ谷コースからでは、車の乗り入れに関する懸念は少ないが歩行距離が長くなり、やはり負担を伴ってしまう。

ならば、それぞれの中間、林道の積雪の心配が少なく、三ノ丸までの歩行距離も最短の殿下コースを入山口とし、R29を戸倉トンネル手前で右折、ヤマメ茶屋を右手に見て坂ノ谷林道を山中へと車を走らせた。

ここまで、国道の道路脇はおろか山肌にも雪を見ることはなかった。

何の心配もなくここまで来たわけだが、そのすぐ奥、林道入口にあたるゲートの所には、いかにも『通行止め』を示唆しているかのような雪を積み上げた段差と、小さいながらバリケードが設置してあり、手書きでこんな表示がしてあった。

『倒木と積雪の為通行禁止』。

一転、不吉な予感がよぎる。

雪の段差は小さなものに変化していた様だったので小さく乗り越し、バリケードも工事中の際よく見かける、ほんの軽量の物だったのでヒョイと移動させ、脇をすり抜ける。

しばらく進むと、一台の4駆車。
「なんでこんな所に・・・」
覗き込んでも誰もいない。

そう言えば、朝早い時間にもかかわらず、今日はやけにヤマメ茶屋に駐車車両が多かった。

この4駆車といい、ヤマメ茶屋の数台の車といい、「どうしてなんだろう」と少し不思議だったが、その訳を理解するのにそう時間はかからなかった。

4駆車のすぐ先には、”手書きの表示”で忠告してあったとおり山側から何本かの木が倒れかかり林道をふさいでいた。

道端に雪はまだ見られなかったが、それ以上に厄介と思われるスギの木が目の前に横たわっていた。
「これでだナ。」

4駆車は車高が高くここを通過することが出来ず、あえなくここに駐車したようだ。

また、ヤマメ茶屋の車両はバリケードの表示を見たからか、さらに進みこの光景を目の当たりにしたからかは分からないが、いずれにしても彼らは表示の忠告を忠実に守り、車の乗り入れを自粛したようだ。

それに対してこちらはどうだろう。

一見した時は
「ダメだ。」
こう思ったが、木の下に車を潜らせると辛うじて通過出来そうだ。

これから先の心配は付きまとうが、窓から顔を出し、屋根がその木に当らないか確認しながら、そろりそろりすり抜ける。

「何とか通れた。ギリギリセーフ。」
いけないことと承知しつつ、つい先へ車を進めてしまった。(営林署の方々、申し訳ない)

この後も何度か倒木があり、気遣いながら林道を進む。

ボディー、特に天井部は頻繁に樹の擦れる音がするが、言わば、こちらが勝手に通行しているのだからこのキズについて、とやかく言えたものではない。

左右のミラーにも時折小さな枝が当たる音がする。

やがて、難所の倒木帯は抜けたようだが、もう一つの忠告、積雪は見当たらない。

坂ノ谷コース登山口まで来ても雪はない。

もちろん、さらに奥へと車を走らせる。

ヘアピンカーブを曲がり少し走ると林道上にもようやく積雪が現れた。

山肌に白いものは見えるようになってはいたが、これまで林道上に雪は見られなかっただけに、
「ここで現れたか。」
少し嫌なものを見た気になった。

この後、徐々に積雪量は増し、しばらくは真新しいわだちはあるものの、その主も途中でUターンしたのか、やがては全くの新雪上を走るようになった。

雪上も4駆に物言わせ無理して走っていたが、傾斜が急な所や吹き溜まりで積雪が多い所、北斜面の日の当たらない所ではタイヤが空回りし、喘いでいるのがわかるようになってきた。

「このままでは走行できなくなる。」
こんな山中で立ち往生してしまっては大変、何をしに来たか分からなくなってしまいかねないので、傾斜の緩くなった所を見計らってチェーン装着する。

なにぶん、新雪上のわだちのない所を走るのは初めての経験で、「こんなにも進まないものなんだ」と、圧雪された道路との違いを実感する。

それでも、非装着時との違いは歴然だ。ゆっくりながら進むと、ようやく殿下コース登山口に着くことが出来た。

ここでの積雪は20センチ位だろうか。

殿下コース登山口

登山口

身支度をし、雪の積もった登山路を登り始める。

紅葉もすっかり終わった感のブナ林帯をしばらく急登する。

積雪を見ない時期でも足元の悪い所だから、今日のような適度の積雪なら、むしろこの方が歩きやすいかもしれない。

傾斜が緩くなると、もう少し先の林道からの道と合流、次第に雪上ハイクを堪能できるようになる。

ここでも、林道で雪を見た時と同じく、始めしばらくは先行者の足跡が見られたが、いつの間にかそれもなくなっていた。

入れ替わるように現れたのが動物達の足跡だった。

いかにも鳥のものやウサギやシカらしきもの。

特筆ものはツキノワグマのそれ。よくよく考えるとヒンヤリさせられるが、積雪期ならではの”忘れ物”に二人、あーだこーだ言いながら楽しみながら進んで行く。

雪上に残された動物達の足跡

雪上にはクマや動物達の足跡

色々な形の足跡が思わぬ楽しみを提供してくれるが、何と言ってもこのコースの魅力は三ノ丸までの標高差があまりなく、ブナ林を見ながら楽しみながらのんびり歩けること。

巨大な天然スギを過ぎ奇木の仙人門をくぐると次第に木々が低くなる。

葉っぱをすっかり落としたブナ林帯に続く登山路は元々、柔らかな日の光に包まれているが、この付近、さらに穏やかな日が降り注ぐ。

ブナ林とササ原と青い空。最高のシチュエーションが広がる。

やがてササ原を歩くようになると坂ノ谷コースと合流。

ササ原を行く

坂ノ谷コース合流点

ササ原を歩くようになるとやがて坂ノ谷コースと合流

ここまでは我々二人と動物達の足跡しかなかったが、ここからは人の足跡が沢山見られるようになった。

周りのササ原には雪が積もり、その恩恵で右前方には無積雪期にはここら辺りからは決して見ることの出来ない三ノ丸避難小屋の赤屋根が見え隠れする。

すでに三ノ丸はそう遠くないものの、何も焦る必要はないので、”22標識”や”見返りの丘”付近では後も振り返り景色を楽しみながら歩こう。

先ほどの合流点では南に位置する三室山が見えていたが、ここでは南東の藤無山が段ガ峰稜線の手前に見えるようになる。

三ノ丸が近づくに連れ後方に展望が広がる

見返りの丘付近では後方に藤無山と遥か遠くに段ガ峰稜線

やがて、鳥取側への分岐が現れ、右に進路をとると間もなく避難小屋、さらに展望台へ到着する。

展望台上からは360°の大展望が広がる。

穏やかな快晴の下、北に氷ノ山がのんびり横たわり、奥には、やはりこれと同様、のんびり横たわる扇ノ山。

左に鳥取市街、湖山池や日本海、西遠くには大山。東山の両脇に右、泉山、左、那岐連山。

三ノ丸後方、南には駒の尾〜後山や形のいい三室山。

それらの左手、黒尾山の遥か遠くにはかすかながら播磨臨海工業地帯の煙突も見える。

南東遠くには暁晴山のアンテナも見て取れ、千町ガ峰〜段ガ峰稜線手前には見返りの丘でも見た藤無山。

達磨ガ峰の左は千ガ峰。左手、東遥か遠く、”山”の形に見えるのは御嶽〜西ヶ嶽だろうか。

粟鹿山や丹後の山々を見れば、ぐるりと一周。

強いて言うなら、六甲が見えないのが不思議なくらい。

三ノ丸からの展望

東、粟鹿山付近から南、三室山〜後山までの大展望
(ササ原中央に見える三角屋根が三ノ丸避難小屋、右端白く光る屋根が鳥取側、展望所)


三ノ丸から氷ノ山を見るという当初の目標は達成したが、ここまでではさすがにちょっと物足りないのか、しばらくすると(あ)がこんなことを・・・。

「ほな(そしたら)、行こか(行こうか)。」

すっかりその気になって、そそくさと展望台を下りてしまった。

氷ノ山へ向かう

山頂はもうすぐ

三ノ丸から氷ノ山へ

三ノ丸

山頂直下より三ノ丸を振り返る

つられるように三ノ丸を後にする。

三ノ丸から氷ノ山へは、しばらく満点の雪上ハイクを楽しもう。

今年は「陽だまりハイクが出来ないのでは・・」なんて言ってたが、こんな所で、それも(あ)と一緒に出来ようとは思っても見なかった。

夫婦スギを過ぎ氷ノ山が大きさを増すと、いつの間にか、つい先ほどまで居た三ノ丸が遠ざかる。山頂直下の坂を上れば氷ノ山山頂だ。

南東側、藤無山、段ガ峰方面

南側、三ノ丸、三室山、後山方面

展望台と藤無山、段ガ峰方面遠望

三ノ丸と左に三室山右に後山稜線
その間に小さく日名倉山も見える

北西側、扇ノ山方面

扇ノ山、青ヶ丸〜仏ノ尾

思っていたほど人は多くなく、お陰で外でゆっくり遅めの昼食。

思い返せば、ここ氷ノ山山頂で屋外で食事なんていつ以来だろう。

天気が悪くて小屋の中でだったり、人だらけで嫌気が差し敬遠したり・・・、いずれにしても(あ)と一緒のときに、こうやって食事も出来、自身の記憶とは別に彼にとっては兵庫県下最高峰としての氷ノ山の第一印象は悪いものにはならなかったに違いない。

山頂避難小屋

避難小屋で遊ぶ(あ)

のんびりした後は来た道を引き返す。

三ノ丸

氷ノ山

三ノ丸

氷ノ山

三ノ丸では展望台に上がり再度、景色を楽しむ。

展望台を後にすると避難小屋を見て鳥取側への分岐を左折。正面に藤無山を見ながらササ原に続く雪上を下る。

坂ノ谷コース分岐まで来ると山頂でも見かけた二人連れ。

何でも我々が下りてくるのを待っていたらしい。

と言うのも彼らのうちの一人が膝の調子が良くないらしく、我々が殿下コースから入山したのを承知の上、坂ノ谷コースよりも歩行距離の短いこのコースを歩いて下山し、自分達の車のところまでヒッチハイクしようと考えていたらしい。
何と、ここで45分も待っていたと言うのだ。よほど調子がよくなかったようだ。

快くヒッチハイクを引き受け、一緒に下って行く。

ブナ林のプロムナードだ。仙人門をくぐり天然スギを過ぎ、左へ分岐を分けるとやがて急坂を下るようになる。

最後は転げ落ちるように下ると林道に出る。

車中で話を聞いたところによると、彼らの車は倒木の手前に駐車してあった4駆車。

京都からで、昨日のうちからテントを張っていたらしい。

「長い道中、さらにここに来てからの長い林道歩き、本当にご苦労さまでした。」
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
<入山に利用した坂ノ谷林道の倒木の状況>

現時点では通行するのにかなり注意が必要。車高、2、0メートル以下なら積雪ない場合、通行可。

以後の対策については不明。

また、当林道、積雪状況により、いずれ通行止めに。

三ノ丸避難小屋、入り口ドアー、上部明かり取り窓破損につき使用には難あり。


波賀町H・Pに詳細マップ、コースタイム等あり


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