〜憧れのロンシャン競馬場〜









 5月20日、その日は小雨が振っていた。私は昨日買った地図を片手にブローニュの森を歩いてロンシャン競馬場に向かっていた。
 森を抜けて霧が立ち込めてる中にうっすらと競馬場が見えてきた。
 これが夢にまで見たロンシャン競馬場である。

 はるばる来たぜフランスまで。
 
あの本を読んでから数ヶ月、ようやくたどり着いた。己が行きたいと切に願って邁進すれば、そこにたどり着けるものだと実感した。

 競馬場に着いたのは向こう上面側で、正面の入場ゲートの反対側のようだった。
 まだだいぶ歩かねばならなかった。
 競馬場に向かうファンらしきおじさんがいたので訪ねてみた。


「ムッシュ、競馬場の入場ゲートまで連れて行ってくれませんか?」


「アーウイ。兄ちゃん、俺についてきな」


おじさんに付いて行くと、正面の入場ゲートではなく反対側の向こう上面のところの入り口に連れて来られた。一般の人が利用しない秘密の入り口っぽかった。


おじさんは
「ボンジュール」


と係りの人に言って中に入っていく。私も真似して「ボンジュール」と言って後に付いていった。お金はいらないのかな?
おじさんにお金を払う様子などない。競馬関係者なのかもしれない。


しばらく歩いていくと、競走馬がレースで走る大きなコースが見えてきた。


おーすごい!なんて広くてキレイなんだ!


俺は今、ロンシャン競馬場に脚を踏み入れいている。超感動!


そして向こう上面の競馬のコースのところに出た。
おじさんはコースの中に入っていこうとする。


「え!?コースを横切るの?」


どうやら向こう上面から入場し、コースを横切って正面スタンドに行く気なのだ。


私の感動のボルテージが上がった。


凱旋門の行われるこの競馬場のターフを歩けるのだ。


コースを横切って入場できるなんて、これはすごい事だぞ!
一般客がターフを歩けるなど日本ではまず有り得ない。
私は写真を取った。



  ロンシャン競馬場
  向こう上面




向こう上面を横切った後、もう一コース(1000mの直線レースが行われる)も横切って、競馬場の中庭に着いた。
そこには広いホームストレッチが広がっていた。
すばらしい眺めだった。



  ホームストレッチ



              

中庭にはレースが映しだされるモニターも馬券購入所もあった。競馬関係者かと思ったおじさんは実はただの競馬ファンだった。この中庭で競馬をするという。秘密の入り口は一般開放されていて誰でも只で入場できるということだった。
 この中庭までお金を一銭も払ってないから、ロンシャン競馬場の中庭は入場無料だということがわかった。
 私は今日はここで競馬をすることにした。




TOP       NEXT