I mean love me. -2- |
船首からの階段を降りていくと、そこには腰に両手を当てて仁王立つナミの姿があった。ニヤリと笑う彼女が、「やるわね」と顎を船首へ向ける。 「だいぶ、サンジ君の使い方、覚えたみたいじゃない」 「先生がいいから」 微笑を浮かべるビビに、まぁね、とナミは明るい太陽みたいな笑みを浮かべた。貸して、とビビの手から銀色の盆を受け取ると、ナミは先に立って歩き出す。 「私も一緒にお茶しようと思ってたの」 「トニー君も一緒に食べようと思ってたんだけど」 「あらそっ? じゃ、チョッパーも呼んで…。ルフィに見つかると厄介だから、どこかでこっそりお茶しましょ」 そう言うとナミは洗濯物の影で大の字になっているチョッパーの元へ近付き、つんつんとサンダルの先でその脇腹を突く。びくん、と震えるチョッパーはどうやら随分前から目を覚ましていたらしい。 「…サンジは行ったか?」 むくりと起きて帽子を直す。ナミが船首を顎で示すと、「ああ…」と溜息をひとつ吐いた。 「また愚痴聞かされると面倒だから、ずっと寝たふりしてたんだ」 「苦労するわね、あんたも」 「お前らもな」 ひょっこり起き上がり、二本足で立ち上がる青っ鼻のトナカイの台詞に、ビビはついつい苦笑してしまう。ヒトヒトの実を食べてしまったトナカイで、人間なんだと言われていても、ビビからしてみればチョッパーは可愛い医者の能力を備えたぬいぐるみなのだ。ある意味、カルーと同じ感覚で接している部分もある。それがちょこちょこと歩いてくるので、ビビはうっかりチョッパーを腕の中に抱き上げていた。 「なっ、なにすんだ、下ろせよ!」 「あーら、いいじゃないチョッパー。折角だから一緒にお茶しましょうよ。サンジくんがあたし達だけに作ってくれたブルーベリータルトあるのよ。チョッパー、ブルーベリー好きでしょ?」 「ああ! 目にいいからな!」 言うことはさすがに医者だ。じたばたとビビの腕の中で暴れていたチョッパーも、ナミが銀色の盆を抱えたまま移動し始めると、大人しくビビの腕の中に甘んじていた。先に立って歩くナミが、ちらりと後ろを振り返ると、船首甲板の手摺の隙間に、太陽の光を反射して隠しきれていない金色の頭がちゃんとあった。 ふと微笑を浮かべ、だがナミは気付かれないように前を向き階段を上がる。 船首からの視線は、ラウンジの壁に遮られるまでずっと続いて背中に刺さっていた。 |
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