Everything I Said. -6- |
サンジがマストに縛り付けられている間にニコ・ロビンがした事と言えば、準備していたナミと一緒にテーブルクロスを替え、買ってきた花を活け、料理をてきぱきと並べた。手が足りないと言ってラウンジの飾りつけは能力で出した腕にやらせた。 以前、ゾロに誕生日を決めてもらい、それが嬉しかったサンジはウソップやチョッパーにも話して聞かせたらしく、彼らは律儀にもそれを覚えていた。仲間思いの彼らだから、当然プレゼントを用意していた。ウソップは器用さを存分に活かし、本日買い込んできた資材を少し使って小さな棚を作った。調味料を納める棚で、ちゃんと扉もついている。ちょっとお洒落な模様も絵の具で描いて、ニコ・ロビンが料理を並べている間に、壁に打ちつけ設置した。チョッパーは昼間ウソップと買出しに出た時に、自分が作った薬を売って、少しばかりの金を手に入れていた。それでサンジにプレゼントを買ったのだ。中はサンジが見るまでと言って聞かないらしく、ウソップも知らないらしい。 「しっかしなぁ」 トンカンと軽快な音をたて、釘で戸棚をくっつけていたウソップが振り返って笑った。大きな姿になって戸棚を支えているチョッパーも、不思議そうに振り返っている。 「みんな考えることは一緒だったんだなぁ」 「だって仲間だものね」 微笑むニコ・ロビンの手には、スープ皿が持たれていた。ゾロはその横でパンを並べている。ぐぅと腹が鳴ったのを、ナミが聞きつけ失笑した。 「あんた、お腹減ってんの?」 「当たり前だ。昼間あんだけ働いたんだからよ」 「飯かーッ!」 唐突に叫んでラウンジに入ってきたルフィに、ヤバイ、とナミが慌てた。突進され、折角綺麗に飾りつけたテーブルをぐしゃぐしゃにされてはたまらない。あのねルフィ、と思わずクリマタクトを取り出し構えながら、焦って進路を塞いだナミに、あっ、とルフィが声を上げる。 「それ、サンジの誕生日祝いかっ?」 いつもと違うラウンジの様子に、さすがに気付いたようだ。目を輝かせて問うで、ナミが、ええそうよ、と引きつった笑顔で言うと、なぁんだ、とルフィは残念そうに溜息を吐いた。 「みんな知ってたのか」 「…あんたも知ってたの?」 「おう! だってサンジが嬉しそうに言ってたからなっ! ゾロが決めてくれたんだって」 「…そっかぁ…。じゃあもう少し我慢してよ。サンジ君がくるまでね」 「おう! 俺もちゃんとプレゼントあるんだ!」 嬉しそうに言うので、ナミは少し微笑ましい気持ちになって、そう、と頷いた。そうこうしているうちに、ウソップが、ほいできた、と戸棚がぐらぐらしないか少し揺さぶりながら言った。 「でもあんた、お金持ってたの?」 「お小遣い、残しといたんだ!」 「あんたが?」 「おう! ケーキ買ったんだ! 誕生日って言ったら、やっぱりケーキだろ。でっかいので、一杯果物が乗ってる奴! ちゃんとハッピーバースデーサンジって書いてもらったんだぞ! すげぇだろ!」 自信満々の満面笑みでそう宣言したルフィに、ニコ・ロビンとナミが揃って「ああっ!」と悲鳴を上げた。びっくりしたゾロの手から、パンが一個床に落ちたが、彼はゆっくり身を屈め、少しぱたぱたと叩いた後で元の場所へ戻した。 「忘れてたわ!」 「ケーキのこと、すっかり忘れてたわね…」 気まずい顔をして目を見合わせたニコ・ロビンとナミだったが、すぐに肩の力を抜いていた。ナミはぽんとルフィの肩を叩くと、にこりと笑顔を作る。 「でかしたルフィ! すごいわ! さすがキャプテン! 偉い!」 「だろっ?」 うんうん、と頷いたナミに、ぱちぱちと手を叩かれて、ルフィはとても自慢げだった。 |
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