Everything I Said. -5- |
キッチンで夕飯の支度をしていたサンジは問題の三人が帰ってきた事に話し声で気付いたのだが、何があっても出迎えてなどやるものかと唇をひん曲げていた。ところが、ぐるぐると掻き混ぜていたスープの蓋をぽんと置いて、少し火を弱めたところで、ねぇサンジ君、と戸口から声がかかった。なんですか、と振り向くと、ニコ・ロビンが微笑みながら首を傾げていたのだ。戸口に肩を凭れさせた姿は、なんと言うか格好良い。 「ご飯って、後どれくらいできるのかしら」 「何っ。もう飯かっ!」 サンジが答えるよりも先に飛び込んできたルフィを、ニコ・ロビンはひょいと避けた。コンロに突進してくるゴム男を蹴って追い出し、そうですねぇ、と煙草に火を付けつつも、サンジはコンロを振り返った。 「…あと十分って所ですかね。後は盛り付ければいいだけだから」 「そう。その盛り付けって特別何か難しいこと?」 「いや、そんなことはないけれど。なんだい、オネーサマ。料理に興味でもあるんですか」 「そうね、今日は少し興味があるのよ。盛り付け方、教えてくれないかしら」 「いいですよ〜。オネーサマの頼みとあらば。今日はですねー、クリームシチュウと、あまりいい肉が手に入らなかったんで、ひき肉しこたま買ってきて、特製のハンバーグにしてみたんですよー。チーズをたっぷり乗せて、ああ、このフライパンで今、最後の仕上げやってんですけどね。それをこの大きな白い皿に乗せて。あっとクソゴムのハンバーグはオーブンで焼いてます。とてもじゃないけどフライパンじゃ間にあわないから。それからこっちに用意してあるサラダと、これと…後はこのパンですね。まぁ今日はこんなものですよ」 「…そう。ならもういいわ」 「は?」 にこりと微笑んだニコ・ロビンの不可解な言葉に、サンジは首を傾げた。するとサンジの肩からひゅっと出てきた腕が、口に咥えられていた煙草をすっと抜き取ってしまう。 「オ、オネーサマ…?」 ずいと近寄ってきたニコ・ロビンの顔に、サンジは冷や汗を流しながら、少し後ずさった。 「ごめんなさいね」 満面の笑顔でそう言ったニコ・ロビンに、え、どう言う意味ですか、と問おうとした時。それよりも早く、サンジの背中から現れた腕が、彼の腕を背後にぐいとねじりあげ、拘束してしまった。ついでに、足も。どたんとキッチンの床に倒れたサンジを、床から現れた腕がひょいと抱え上げた。見下ろすニコ・ロビンが、腕を組んでやっぱり楽しそうに笑っている。 「暫く大人しくしていてね、素敵なコックさん」 「…ま…」 サンジの口がぽっかりと開いた。ニコ・ロビンはさっと右手を振る。床から這えた腕は、音も立てずキッチンの床を滑るように移動して行く。戸口を潜り、階段を下りるサンジが、悲壮な悲鳴を上げた。 「またかーッ!」 本日二度目。 マストに固定され拘束されたサンジは、それからしばらくずっと、ぎゃんぎゃんと騒ぎ続けていた。 |
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