一途な獣 < 羨望 > |
再び訪れた村の真ん中にある花畑に、ユーリルの姿はなかった。それどころか、さっきまで確かにそこで野良仕事をしていた畑にすらもいない。彼が使っていた鍬があるだけだ。そう言えば、窯の方を振り返って何かを言っていたな、と思い出し、ピサロが小屋の側にある窯へ足を向ければ、窯の前にしゃがみ込んでいるユーリルの姿があった。 足音も気配も隠さず近付くと、窯を覗き込んでいたユーリルが振り返り、あれ、と目を丸くした。見開く瞳に木漏れ日の光が差し、紅玉髄のきらめきが宿る。 「戻ってきたの?」 幼い仕草でぱちくりと瞬きをするユーリルに、ああ、とピサロは溜息混じりに頷く。 「貴様が何か、話している途中だったように思えたのでな」 「ああ」 ユーリルは微笑を馳せると、傍らに置いた籠の中に並べてあるパンを指差した。窯から取り出したばかりのようで、湯気を上げ香ばしい匂いを辺りに放っている。すでにおこぼれに預かろうとしているのか、どこからともなく現れた小鳥が籠の周りをちょろちょろと動いていた。 「ロザリーさんと一緒に作ったんだ。もうすぐ焼きあがるから、持って帰ってって言おうとしただけ」 本当にただそれだけだったらしい。ピサロが途中で消えたことを咎めるでもなく、怒るでもなく、険のない気配で告げるユーリルは、ピサロから窯へと目を転じる。その後姿にピサロは息を吐いた。 「……そうか」 「胡桃を入れたから、美味しいと思うんだ。今、二回目のを焼いてる」 窯の中を覗き込み、炎の具合をよくした後で、ユーリルは籠を抱えて立ち上がった。 「それだけ?」 首を傾げると豊かな緑の髪がふわりと風に靡く。含みのないまっすぐな瞳に見つめられると、以前は居心地の悪さや収まりの悪さを感じたのだが、いつからかそうではなくなった。仄かに浮かんだ己の頬の微笑に気付かず、ピサロは頷いた。 「…ああ」 「そう」 にこりと微笑んだユーリルは手にしていたパンの籠をピサロに押し付けた。思わず受け取ると、ユーリル自身は小屋の中に入り、声だけをこちらへ寄越す。 「お茶を入れたんだ。時間があるなら飲んでったら? なんだかすごく疲れてるみたいな顔してるしさ」 「……確かに疲れているかもしれん」 ろくでもない事をエルフの娘に吹き込む姉妹のせいで、とは言葉にせず心の中だけで呟き、ユーリルの後に続いて小屋の中へ入った。小屋の中は手作りのベッドと、やはり手作りのテーブル、いつもぐらぐらと揺れる椅子が二客あるばかりだ。ユーリルは食事の用意は外の窯の周りでしているようだし、風呂にいたっては川の水でことを済ませているらしい。もう少し人並みの生活をしたらどうだと思うのだが、やはり一人で作るには、テーブルも椅子も、そして生活の場である家すらもこれが限度なのだろうか。 テーブルの上の薬缶とカップとを手に取り、くるりと振り返ったユーリルは戸口に立ち尽くしていたピサロの側をすり抜けて外へ出る。 「今日は外の方が気持ちがいいよ」 暗についてこいと促すユーリルの後に続くと、先ほどまでロザリーが腰を下ろしていた村の真ん中の花畑にユーリルはどっかりと腰を下ろす。焦げ跡のある所々へこんだ傷らだけの薬缶の中にはもう茶葉を放り込んであるようだった。カップに茶を注ぎ、片方をユーリルは差し出した。 「はいどうぞ」 傍らに腰を下ろして受け取ると、ユーリルはピサロの手からパンの籠を受け取った。薬缶の側に置いて、パンを千切って口に放り込む。一層香ばしい匂いが辺りに漂い、ユーリルが二口目を食べる頃には窯の周りでも見かけた小鳥がやってきていた。 随分と慣れているようで、ユーリルの頭の上に止まったり、肩に止まったり、果ては手に乗ってパン屑をねだってピチピチと鳴いてはいるが、籠の中の物を啄ばもうとはしない。ユーリルが細かく千切って片手に乗せれば小鳥達はそこへ群れる。小鳥に遅れを取って現れたのは、狐や狸の類だ。鳥とは食う食われるの関係であるのに、ユーリルの周りに集って穏やかな様子で、その手から与えられるパンを食んでいる。 野生であるのにしつけてあるのか、と目を瞬くピサロの視線に気付き、ユーリルが顔を動物らに向けたままで言った。 「シンシアはこの森の誰とも仲が良かったから。動物とも話ができたみたいなんだ」 不意に零れたエルフの名にピサロは目を細めた。 「エルフとはそう言うものだ」 「うん、ロザリーさんもそうだったからびっくりした。そんな特技があるのはシンシアくらいだろうと思ってたからさ」 ピサロもどうぞ、と勧められるがままにパンを千切ると、目敏く小鳥がやってくる。ピサロの黒衣に包まれた腕に降り立ち、純白の羽を持つ鳥は小首を傾げてピサロを見上げた。真ん丸で純真な眼差しに、思わず戸惑う。そして既知感に捕らわれる。この村で始めて目にした、まだ勇者でもなかった少年もこのような眼差しで詩人と名乗ったピサロを見上げた。 「遠くに放ってやれば、そっちに行くよ」 固まっているピサロを見かねたのか、ユーリルがいくつかのパンを細かく千切って、少し離れた場所へまいている。千切ったパンをそちらに投げると、小鳥のくちばしには大きかったようだ。狐が銜えた。 それを眺めながら胡桃の入ったパンを千切り食べる。柔らかなパンと固い胡桃の食感が口の中に心地よい。もう二口ばかりを食べ、ピサロは残りをユーリルに差し出した。何しろ彼の作ったパンは大きく、さほど腹の減っていないピサロには不要だったのだ。 「…いらないの?」 「腹が膨れた」 「そう」 旅を終え、食が細くなったかと思ったが、大食漢ぶりは健在だった。ユーリルはピサロから受け取ったパンを一口に食べ、そしてまた傍らの籠に手を突っ込んでいる。 ピサロは茶を飲みながらユーリルの取り留めのない話に付き合った。 畑に蒔いた種が芽吹いただとか、川の魚がすばしっこくてなかなか採れないだとか、もう少ししたらパテギアでも育ててみようかと思っているのだとか、本当にどうでもいいようなことだ。ピサロが返事をするにしろ、しないにしろ、興味を抱くにしろ抱かないにしろ、ユーリルの唇から漏れる言葉は止まらず、そして急きもしない。ゆるやかな流れに身を置いているような、まるで世捨て人のような言葉はピサロの耳に心地よかった。 動物にもそうであったのだろうか。パンを与え終えられてもなお、狸や狐、そして小鳥達がそこに留まり、陽だまりでまどろんでいたのだが、突然、いっせいにぱっと身を翻した。驚くような素早さで獣は森へ帰り、小鳥は空へ飛び立つ。何事か、と思っていると、森の奥からのっそりと一頭の狼が現れた。赤茶の毛をした大きな体躯の狼は、ピサロと目があうと、一瞬足を止めた。だがほんの少しの逡巡の後、軽く尾を振りやってくる。ピサロとユーリルとの周りをぐるりと一周し、狼はユーリルに添うように横たわった。何気なく伸びる手が、狼の毛を撫でる。 「気に入られたみたいだよ」 ユーリルがおかしそうに笑った。そちらを見やれば、狼が心地よさそうにユーリルの手に甘んじている。 「そうとは思えんが」 ピサロの側ではなく、ユーリルの側に添っている狼を見下ろして呟くと、ユーリルは言葉の端に笑い声を滲ませながら答えた。 「気に入らない人がくると、近付いてもこないんだ。マーニャは駄目だったし、アリーナもライアンも駄目だったな。ミネアとブライは大丈夫だった。トルネコとクリフトは二人の方が怖がっちゃってさ。クリフトは、多分すごくこいつに気に入られてるんだと思うんだけど、追いかけられて、悲鳴上げて逃げ回ってたよ」 それは気に入られていると言うよりも、食物連鎖の下位に見られているのでは、と思ったが口にはしなかった。無言でいると、ユーリルは睫を瞬かせてふと微笑む。 「……昔、シンシアから聞いた話があるんだ。動物は繁殖期のたびに相手を変えるけど、狼はずっと決めた相手とだけ、なんだって。人間みたいだって言ったら、人間よりも崇高だってシンシアは言ってた。その時はどうしてか解らなかったけど……人は別れるんだよね。旅に出て初めて知ったんだ。その話を聞いた時には人も狼と同じで決めた相手とだけだって思ってた。だから旅から帰った時にこいつと会って、なんだか、うらやましいって言うか、そう言う気分になったんだ」 「……人とて、別れぬものはいる」 「うん、だけど。人は綺麗な感情だけじゃないよ。別れなくても、ずっと一緒にいても、色んな感情があると思うんだ。狼はなんだか、すごく綺麗な感情しかないような気がして。一途っていうか、よく、解らないけど」 赤茶の毛を撫でていた手を引き、ユーリルは膝を抱えた。ゆらゆらと靴の先を動かすようにして身体を揺らし、目を狼から畑の辺りへと転じる。芽吹いた若葉がちらちらと見える畑にも幾羽かの小鳥の姿があった。 「ロザリーヒルでスライムからあんたの話を聞いたときに、あんたを狼みたいだって思ったんだ」 「…私の話?」 不可解に眉を寄せるピサロを見て、ユーリルははにかむように、何か儚いもののような笑みを浮べた。 「ロザリーさんのお墓の前で、言ってた言葉、スライムが聞いちゃったんだって言ってた。一緒に暮らす約束は、生まれ変わって果たすって」 「……ああ」 「一途で、すごく綺麗な感情で、すごく羨ましかった。俺は、誰かをそんな風に好きになったことはないし、そんな風に思えるとは思えなかったから。今ここで、一緒に暮せなきゃ意味がないって、俺は思うから。だから、結局、シンシアだって……シンシアの事は好きだったけど、あんたがロザリーさんを思うみたいには好きじゃなかったと思うんだ。家族みたいな感じ。マーニャとミネアを見てたらそう思う。でもだからって、違うんだ。俺は、シンシアを殺したあんたを憎んでたのに、シンシアやこの村の人を好きだから、あんたを憎んでたはずなのに、俺は結局、あんたと一緒にこうして座って、ここで笑ってる。ロザリーさんを羨ましがってる。狼が、互いをずっと愛し合うのを羨ましがってる。綺麗な感情なんて、俺の中にはひとつだってない」 話しているうちに歯止めが聞かなくなったのか、一息に最後まで言い切ったユーリルは、己の言葉を後悔するように膝を抱える腕に顔を埋めた。 「………ごめん」 すん、と鼻を啜る音がくぐもって聞こえた。 「……聞かなかった、ふりして…」 丸められた背中がいつもよりも頼りなく小さく思えた。思わず伸ばしかけた手を、ピサロは握り締め留める。ユーリルの向こう側で寝そべっていた狼が顔を仰げ、咎めるようにピサロを見た。獣の眼差しにピサロは答えず、ユーリルに触れようとしていた手で、肩にかけていたマントを外し、ユーリルにばさりとかけた。 「顔を洗ってこい」 「…ん」 マントの中でもそもそと動いていたユーリルは、立ち上がると、覚束ない足取りで村の奥の木立へ消える。すぐ側に川が流れているのに、おそらくは泉へ向かったのだろう。森に入った後姿に、よほど見られたくなかったか、それとも気持ちの整理をつけたかったのかのどちらかだろうとピサロは検討を付けた。 ぱふん、と軽い音と共に花が舞った。傍らを見れば、ユーリルがいた場所を空け、その向こうに寝そべったままだった狼の姿がある。物言いたげな眼差しでピサロを見上げ、尾を地へと打ちつける。また花が舞った。尾にぶつかる小花は抗うことなく風に乗る。 「……解っている」 ピサロは呟いた。 「…すべての元凶は、この私だ」 腕を伸ばせば、狼は目を細めた。警戒もせぬ獣の額を撫で、その暖かさに心が和む。 ユーリルを見ている時のように、心が和む。 彼からすべてを奪ったのは、他ならぬピサロ自身だ。魔族を脅かす勇者を討つべく村を襲い、彼を守ろうとした村人すべてを屠った。少年に姿を変えたエルフの少女を、そうと気付かぬまま手にかけた。少年を勇者へと駆り立てたのはピサロそのものだった。 そしてまた、力ない弱きエルフの娘、ロザリーを守るべく人間を滅ぼそうとしたのもピサロだ。ロザリーを失くし、我を忘れ、世界を破滅へと導きかけたものピサロだ。勇者たる少年はロザリーを蘇らせ、ピサロの前に誘った。ピサロは愛した娘の声に我を取り戻し、敵対していた者達と手を組み、真に討つべく者を滅ぼした。 ピサロはすべてを手に入れた。 そしてユーリルは、すべてを失くしたのだ。 亡くしても蘇ったロザリーと、そうされてしかるべきだったのに仇のために再びの命の機会を失ったシンシア。策略者の手から取り戻した権威と、滅ぼされた村。 世界中から勇者と呼ばれるものの手には、何もない。 なんと対照的で、なんと皮肉なことだろうか。 ピサロは彼の手から何もかもを奪うだけ奪い、たったひとつの何かですらも与えてることもできない。略奪者のごとく魔族は、それでも、ユーリルを見ると心が和む。あれが欲しいと、心が告げる。手元においておきたいと渇望する。この穏やかさすらも彼から奪おうとする。 愛しいのだろうとは思う。 だが、だからこそピサロは、ユーリルに触れられない。 何もかもを、奪ってしまうだろうから。 剣呑な心の内を見透かしたのか、狼がぐると唸る。獣の真っ直ぐな眼差しから逃れるように、ピサロは顔を背けた。 「去れ」 獣はピサロの言葉に呼応するように、のっそりと身を起こした。ぶるりと身体を振るい、辺りに花や草を散らして森の奥へ消える。 それと入れ違いに、頭から爪先までずぶぬれのユーリルが戻ってきた。泉で泳ぎでもしたのか、まだ髪や服から水が滴っている。がぽんがぽんと靴が間抜けな音を立てていた。ユーリルは手に乾いたマントを持っていた。行く際に被っていたピサロのそれだ。ん、と差し出されたそれを受け取り、ピサロは思わず苦笑を馳せる。 「拭けば良かろう」 「…だって」 ユーリルは頬を滴る雫を、濡れた服の袖で擦った。何の役にも立っていない。頬にはまた髪から雫が伝い、泣いた証の赤い目元も相まって、今まさに目の前でユーリルが泣いているようだった。 「濡れる」 ピサロは立ち上がり、ユーリルの頭にばさりと受け取ったばかりのマントを被せた。わっ、と布の下でくぐもった驚き声が聞こえてはきたが、構わずに髪を拭う。粗雑な手の動きで水気を拭えば、ユーリルの足元はピサロの手に押されるように右へ左へと踏鞴を踏む。 「山はまだ貴様らには寒かろう。寝込んでも看病する者はおらんだろうが」 「…そりゃ、そうだけど、でも、こんなの、いつものことだし」 マントの隙間から顔を出したユーリルはそう言うと、ピサロの手から逃れ、自らの手で身体を拭き始めた。一度借りてしまえば、もう濡れるだの何だのとは気にしないらしい。黒いマントを被り、その下で服の裾を搾って水を足元に落としているユーリルの姿に、ピサロは目を細めた。 手を伸ばし濡れた髪に指を差し込む。驚いたように見上げる紅玉髄に、ピサロは魅入る。紅玉髄そのものであってもこれほど美しくはないだろうと思うほどに、陽にきらめくユーリルの瞳は眩しくきらめいている。 「…ピサ、ロ?」 瞬く眼差しに、ピサロは目を伏せた。 一度だけ、と自戒を破り、濡れた髪を掻き分け現れた額にくちづけを寄せる。幸福であれ、と似合わぬ、そして相応しからぬ願いを込めて触れた唇を離せば、ぽかんとした顔が見上げていた。その顔が見る見るうちに赤く染まる。ピサロの眼差しから逃れようと俯くも、ユーリルの耳も李のように赤い。 すまん、と囁くように告げ身を引けば、縋るように手が伸ばされた。片手がぎゅっとピサロの服を掴む。腹の辺りを掴まれ、咄嗟に身構えかけたのは、昔からの習性だ。それに気付かず、ユーリルは消え入りそうな声を洩らした。 「く」 「く?」 俯いているので聞き取りにくい。眉を寄せて尋ねれば、ユーリルはちらりと顔をあげ、照れくさそうに、そして恥ずかしそうに笑う。 「く、口にも、ちゅーしてほしいな……とか、思ったり………う、あ、い、嫌だったら別にいいんだけどっ」 思わぬことを言われ、ぽかんと見開いた目をどう取ったのか、慌てて付け加えられた言葉には苦笑が浮かぶ。 「嫌なものか」 引いた指を再び伸ばし、ユーリルの頬に這わせば、泉で水を浴びていた肌は指先に冷たさを伝える。手のひらで濡れた頬を拭うように動かすと、強張っていたユーリルからふと力が抜けるのを感じた。見上げる紅玉髄の目尻に唇を止せ、そして後に、唇に触れる。 重ねるだけのくちづけのあと、貪るように舌を絡ませれば、服を掴んでいたユーリルの手に力が篭る。片手で背を引き寄せると他愛なく寄りかかる濡れた身体が、愛おしい。 ピサロはくちづけを終えてもなお、ユーリルを腕の中に囲い続けた。 ユーリルもまた、ピサロの腕の中に大人しく納まっている。何を思っているのか、何を感じているのか伺い知る由もないが、腕の中にある暖かなぬくもりは、ひどくピサロを安堵させた。 これがずっとあれば良い、と一体誰に願うのか。ピサロはそっとユーリルの髪に気付かれぬよう、祈りを込めたくちづけを寄せた。 |
一途な獣 <了> |
自戒はどうした、と突っ込みたい。某所にてロザリーの尻に敷かれるピー様を見て以来、書きたくって仕方がなかった「ちょっとずれてる権力者ロザリー」。マーニャやミネアにいらん知恵を与えられて、うふふ、と微笑んでいるだけでなくなったロザリーにちょっぴり疲れを覚えているピサロ。そんな話が書きたかったはず、なんですが…。あれれ? ギャグで行くつもりが、なぜかまたシリアスに…というか、なんでこんな根暗な話になってるんだろう。よく解らなくなってきた。 ピサロ→ユーリルの気持ちは間違いなく愛情で、本人は自覚していますけれども、すごい神聖視してもいるわけで。まぁ魔族の信仰している神様ったら暗黒神(あ、8か)くらいなもんでしょうし、神聖視って言い方もどうかと思うんですけれども、自分の過去の行いに少々後ろめたさを感じつつあるので、真っ向から触れるには恐れがあると言うか…。絶対に自分はユーリルを幸せにはできんだろうな、と思っているのだと思います。何しろ文中でも書いた通り、ピー様は全部手に入れたけれど、ユーリルには何も残らなかったわけですから、そこら辺の負い目もあるんだろうなぁと。その割にはねだられたらあっさり触れてますけどね。本当に自戒はどこいったんだ。 ユーリル→ピサロの気持ちも間違いなく愛情なんですが、本人が自覚しているかしていないか…。旅の間はしてなかったと思うんですよね。無自覚に嫉妬とかはしてたとは思うんですが、旅が終わる間際に、「ピサロはこの旅が終わったら、ロザリーさんの所に帰るのかなぁ」とぼんやりと思い、「なんだか、やだなぁ」と思い、「……なんでやだなんて思うんだろう?」と思い、「……???(混乱中)」となり、旅が終わり、故郷に帰り、ぽつねんと一人で暮し始めてからようやく、「ああ、俺ってピサロが好きだったんだ」と気付く鈍感っぷりであってほしいです。で、ロザリーヒルに遊びに行くたびにピサロがいて、仲睦まじい二人の様子を見てなんだかむかむかして、腹が立って、ちょっと苛立ち紛れに暴言なんぞ吐いたりみたりして、「ああ俺っていやな奴…」と自己嫌悪にどっぷり浸ってたり。なんだこの女々しさは。とにかくいつでも情緒不安定な子だといい。いつか「……???(混乱中)」の話も書いてみたい。 ちなみに、ロザリーがどうやって山奥の村にやってきたかと言うと、ロザリーヒルに遊びに行ったサントハイムの姫君が、「こんな所で閉じこもってちゃ駄目だよー! もっと外で遊ばなきゃ!」と言い出し、次に遊びに行った時に山ほどキメラの翼をプレゼントしたわけですよ。「たまにはロザリーちゃんもサントハイムに遊びにきてね〜!」と。で、ピサロが知らん間にロザリーは各地を周り、モンバーバラでいらん知恵を授かり、そして一計を案じてみた。なぜならばロザリーはユーリルとピサロの気持ちに気付いているから。「じれったい!」と思っているから。そんなこんなの思いのたけを書いてみたのがこのおまけ。可哀相だなーピサロナイト(笑)。でもこーゆーキャラは好きでして、と言うか動かしやすい。ピサロナイトとロザリーのどたばた珍道中とか面白そうだ。いらんことばっかり書いてないでまともなエロとかも一度書いてみたいな。その頃ミネアたちは一体いくつなんだろ(笑)。 この『一途な獣』を【勇者と魔王】の繭さんが漫画化して下さいました! きゃ〜v 繭さんちで是非是非ご覧下さい! |