アキヒカ三銃士




36


     

しばらくは座間の独り舞台でした。

我が舞台はどうなるのであろう?
我が旅はどこにいくのであろう?
我が舞台に光はさすのであろうか?


この言葉は、座間に、不思議な変化をもたらしていました。

『キャスティングの勝利です。 光は射した』
サイは、はっきりと口にしました。

『ステージが彼を変えましたね。』
ロイヤルシートからじっと、舞台を見つめていたサイには、分かりました。

サイは、呟きました。

『私はシナリオだけしか示さなかった…私が示したのは、この言葉だけだった…。
これをキャスティング、演出したのは誰でしょうか。
見事です。ステージを熟知した人ですね。まさか本因坊?あの…』
サイは、ちょっぴり身震いしましたが、すぐに、先ほどのヒカルの花嫁姿を思い出し、にっこりしました。
それにしても、ヒカルは、女形が似合いました。

それから、一緒に旅した時、アキラが女装させたことを思い出しました。
あの時二人は、抱き合って…。
サイは首を振りました。

『いけません。アキラは危険です。まったく…
でも今回は危険な場面はいれてませんからね。ふふふ…』
サイは、お茶目に付け足しました。


座間自身は、自分の変化に気付いていたでしょうか。

俺は、昔こういう気持で舞台を目指していた。
そのことは、はっきりと、感じていました。

座間の変化を気付いていた者が、あと二人いました。
それは、これをキャスティングした人物でした。

「コウヨウ殿。お主の思惑は成功だな。」
「これは、本因坊。お判りになりましたか。
確かに演出は私がある程度指示したが。
だが、この脚本のアイデアを出したのは…。」

「あの小僧か。 わしのシックスセンスが、あの小僧をただ者ではないと言っておったが。」

「お二人で、何の話です。 舞台はまだ終ってはいないですよ。 これからです。」

そうです。大詰めが近づいていました。
国王役の御器曾は呟きました。
「わしは、この舞台の結末を知らない。教えてもらっていない。」

「誰も最後は知らないのだ。」
「えっ?」

周りのものがコウヨウを見つめた。
「だが、皆が知っている。そしてその最後は、この舞台に携わった者みんなが、一緒に作り上げることになろう。」

舞台では、座間の独白と光を捜し求める明の熱演が続いていた


「僕は君を、この手に戻すまで、探しつづける。
君こそ僕の求めていたもの。僕の対等なパートナーなんだ。
君と共にこれからの人生を歩むために、君を失うなど絶対にできない。」

遠くにかすかに光がともりました。その光に向かって明が歩んでいったところで、幕が下りました。


いよいよ最後の幕です。
「さあ、みんな最後だぞ。 用意は良いか。」

アキラと座間と国王役の御器曾、それに守護神の緒方以外は全員が仮面を被っての登場でした。

一体何が始まるのでしょうか。

舞台に上がる前に、アキラは、仮面を被る前のヒカルの姿を確認しました。
ヒカルもアキラを見て、しっかりと頷きました。

成功させる。 させてみせる。
ヒカルは、先ほどのアキラの熱演を見て、それに自分が応えたいと言う気持が溢れていました。

最後の幕が開きました。




36話はさびる様担当でした。
いい感じにアキヒカになってきてしめしめなんですが、まだまだここからです。
あの方にも登場してもらわないと。



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