しばらくは座間の独り舞台でした。
我が舞台はどうなるのであろう?
我が旅はどこにいくのであろう?
我が舞台に光はさすのであろうか?
この言葉は、座間に、不思議な変化をもたらしていました。
『キャスティングの勝利です。 光は射した』
サイは、はっきりと口にしました。
『ステージが彼を変えましたね。』
ロイヤルシートからじっと、舞台を見つめていたサイには、分かりました。
サイは、呟きました。
『私はシナリオだけしか示さなかった…私が示したのは、この言葉だけだった…。
これをキャスティング、演出したのは誰でしょうか。
見事です。ステージを熟知した人ですね。まさか本因坊?あの…』
サイは、ちょっぴり身震いしましたが、すぐに、先ほどのヒカルの花嫁姿を思い出し、にっこりしました。
それにしても、ヒカルは、女形が似合いました。
それから、一緒に旅した時、アキラが女装させたことを思い出しました。
あの時二人は、抱き合って…。
サイは首を振りました。
『いけません。アキラは危険です。まったく…
でも今回は危険な場面はいれてませんからね。ふふふ…』
サイは、お茶目に付け足しました。
座間自身は、自分の変化に気付いていたでしょうか。
俺は、昔こういう気持で舞台を目指していた。 そのことは、はっきりと、感じていました。
座間の変化を気付いていた者が、あと二人いました。 それは、これをキャスティングした人物でした。
「コウヨウ殿。お主の思惑は成功だな。」 「これは、本因坊。お判りになりましたか。 確かに演出は私がある程度指示したが。 だが、この脚本のアイデアを出したのは…。」
「あの小僧か。 わしのシックスセンスが、あの小僧をただ者ではないと言っておったが。」
「お二人で、何の話です。 舞台はまだ終ってはいないですよ。 これからです。」
そうです。大詰めが近づいていました。 国王役の御器曾は呟きました。 「わしは、この舞台の結末を知らない。教えてもらっていない。」
「誰も最後は知らないのだ。」 「えっ?」
周りのものがコウヨウを見つめた。 「だが、皆が知っている。そしてその最後は、この舞台に携わった者みんなが、一緒に作り上げることになろう。」
舞台では、座間の独白と光を捜し求める明の熱演が続いていた
「僕は君を、この手に戻すまで、探しつづける。 君こそ僕の求めていたもの。僕の対等なパートナーなんだ。 君と共にこれからの人生を歩むために、君を失うなど絶対にできない。」
遠くにかすかに光がともりました。その光に向かって明が歩んでいったところで、幕が下りました。
いよいよ最後の幕です。 「さあ、みんな最後だぞ。 用意は良いか。」
アキラと座間と国王役の御器曾、それに守護神の緒方以外は全員が仮面を被っての登場でした。
一体何が始まるのでしょうか。
舞台に上がる前に、アキラは、仮面を被る前のヒカルの姿を確認しました。 ヒカルもアキラを見て、しっかりと頷きました。
成功させる。 させてみせる。 ヒカルは、先ほどのアキラの熱演を見て、それに自分が応えたいと言う気持が溢れていました。
最後の幕が開きました。
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