アキラとヒカルが 陸力の案内で地下牢を進んでいた時です。
兵士の足音が通路に響き渡りました。
3人は迷宮になった通路の一角に隠れて様子を 伺いました。
「囚人が脱走したらしい〜!!」
「探し出せ〜」
楽平と陸力が脱獄した事に気づいた兵士たちが迷宮のあちこちを走り回っていたのです。
「マズイですね。」
陸力の言葉にアキラが頷きました。
「これでは見つかるのも時間の問題でしょう。」
アキラは二人にいいました。
「僕が囮になろう。」
「囮って?なんだよアキラ!!」
ヒカルはアキラを睨みつけました。
「僕はあの方の牢を開ける鍵を持ってる。
仮面を外す碁石もだ。」
「つまり、わざと敵の内に入るっていうのか!!」
「シっー。二人とも声が大きい。」
陸力はヒカルを宥めましたがヒカルはそれに構えないほどでした。
「もしお前が鍵を持ってるってバレたら?お前が持ってる石が 本物だってバレたらどうするんだ!!」
「その時の覚悟は出来ている。」
「だったらオレも一緒にいく。」
「ダメだ!!君には他にやらなきゃならないことがあるはずだ。 これは僕の仕事だ。」
陸力が二人に割って入ったので ヒカルはアキラにそれ以上何も言う事が出きませんでした。
「ヒカル・・・。」
アキラはヒカルの手を握りました。 ヒカルはその手のぬくもりに不覚にも泣きだしそうになりました。
「ヒカル 僕は大丈夫だから・・。必ずカーニバルの舞台で
会おう。そして一緒に舞台に立つんだ。」
「わかった。だったらサイだけでも・・・・アキラの所に・・・。」
付いてやってっと、ヒカルが頼む前にアキラが言いました。
『サイさん ヒカルをお願いします。』と、
サイはアキラの言葉をしっかりと受け止めるとうなづきました。
アキラはサイに『本当は不本意なんですが。』と小さく笑うと名残りの残るヒカルの手を解きました。
「アキラ!!」
アキラは一人兵士の前に飛び出していったのでした。
ヒカルが陸力に引きづられるように祠を這い上がった時
まるで二人を待ち伏せしていたように緒方が兵士を引き連れて立っていました。
ヒカルはこの時なぜかほっとしました。 アキラと一緒に自分も牢へ連れて行かれると思ったからです。
兵士の一人がいいました。
「緒方様 この二人、一人は逃げた囚人の一人です。」
緒方は曖昧に「ああっ。」と相槌を打つとヒカルに近づき 耳打ちしました。
「ヒカルだったな。お前に聞きたいことがある。仮面の囚人を 逃がしたのはお前らか・・?」
「なんだって!!」
大声を上げたヒカルに緒方はシっーと指を当てました。
ではさっき兵士が逃げた囚人っていってのは楽平や
陸力だけのことじゃなくて、あの仮面の人も・・
一体どこへ・・?俺たちより先に誰かが逃がしたとか?
だとしたら一人で迷宮に残ったアキラが危ない!!
「その驚き方をみるとお前らじゃないってことか・・。」
緒方は一人で納得するとヒカルと陸力を捕らえようとしていた 兵士たちを止めました。
「こいつらは関係ない。逃がしてやれ・・。」
「しかし、いいのですか?緒方様・・」
「ああ。」
縄を解かれたヒカルは緒方に飛びつくように言いました。
「オレ あんたに頼めるような人間じゃねえんだけど、お願いだよ!お前偉いんだろ?だったらアキラを助けて欲しい。」
ヒカルは必死に頭を下げました。 真剣なヒカルに緒方は苦笑しました。
「わかった。ただしこの貸しはきっちり返してもらう。」
お前がオレの舞台に来るというなら聞き入れてやる。安いもんだろっ?と いう緒方にヒカルは先日のアキラとのやり取りを思い出していました。
アキラはヒカルは緒方にはやらないって言ってのけたのだ・・・
だけど。
ヒカルは静かに緒方の条件に頷きました。
きっと同じ立場だったらアキラだってこうしてる。
それに緒方さんはそんな悪い人じゃない。それはヒカルの勘のようなものでした。
アキラを無事に帰すと緒方から約束を取り付けた
二人は隠れ家へと急ぎました。
二人が立ち去ったあと緒方が兵士に言いつけました。
「いいか。やつらをつけろ。囚人と接触するかもしれん。絶対に見失うな。」と。
25話は緋色担当でした。アキラくん一人突っ走ってしまってますがこれが今後のお話に結構絡んできます〜。乞うご期待かな?
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