アキヒカ三銃士




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「見えるのはいいのですけれどね。 変なのとは何ですか? 
私はヒカルの守護妖精のサイ・ロシナンテです。
おほん。 今まで私の言うことを聞いてきたから、上手くやってこれたのですよ。」

「じゃあ。 ヒカルが言っていたのは…」

「ああ、お前に話しても見えないものを信じそうにないから。
でも、なんでお前にも見えるようになったのかな?」
「アキラ。あなたは、とても努力家で、歴代の名優に迫る勢いで、演技を勉強してきましたね。でも一つだけ、足りないものがあったのです。
それがヒカルといることで、満たされてきたのですよ。」

「俺は初めからそれがあるのかな?」

「ヒカルは、まだまだ足りないものがあります。これからです。
努力で賄われる部分ですよ。 でもステージに選ばれるということは、努力だけでは成しえない。 不公平かどうか知りませんが、人にはそれぞれ役割と天分が備わっているのです。  一人ひとり皆違います。 それぞれの天分を生かす仕事があるはずです。 ヒカルにはステージがその場所なんですよ。」

「サイさんは、ゴ石のことに詳しいのですか。」

「ゴ石は、私たち妖精に伝わる石ですから。 ゴ石を欲しがる人は大勢います。 ゴ石に特別な力があると思われてます。確かにゴ石には特別の力があるのですが。
でもその力というのは、欲しがる人が思う力とは違うものかもしれませんね。それが何なのかは、それぞれが突き止めなければなりません。」

サイは、そういってから続けました。
「でも今はできるだけ早く、街へ戻ることでしょう。 お城の地下牢のことをお姉さまに聞かなくてはならないでしょう。」

「そうだ。 早く行こう。」

二人は、早足で、街を目指しました。 緒方が巡らしていた策が見破られる前に、危険な場所を越えなければいけません。 一晩寝ないで、 二人は、若さに任せて、闇夜もサイの指示で進みました。

街に戻り、お城の裏門に辿りついた時は、まだ約束の日に4日も余っていました。

その時、数人の男たちが見えました。
二人が隠れて様子を伺っていると、声が聞こえました。
「ゴ石を運んできた、和谷と伊角という者を捕まえました。 T国の船で戻ってきたので間違いないです。」
ヒカルは、それを聞いて飛び出そうとし、アキラに止められました。

後ろ手に縛られた二人の人影が見えました。
「ゴ石は?」
そう言ったのは、御器曽でした。
「これです。」
一人が何かを御器曽に差し出しました。

「確かに間違いない。 これさえあれば。 その者たちは、とりあえず地下牢に放りこんでおけ。 ところでアキラはどうした?」
「侍女と一緒に山に閉じ込めてあります。 真柴からの連絡です。 食べ物は用意してありますし、死ぬことはありますまい。
すべて終わるまで。 ことがすべて終わった後に、誰かをやりましょう。」
全員が裏門に入っていきました。

二人は顔を見合わせました。
「あれは確かに和谷君だと思うけれど…。」
「あかりは?」

「ヒカル。 和谷君の家を知ってるか?」
「ああ。 行ってみよう。」

二人は、和谷の家へ、そっとですが急ぎました。
そこには、飯島がいました。
「ああ。 来たな。 伝言がある。」
そっと耳打ちされた二人は、教えられた秘密の隠れ家へと急ぎました。

「誰も追ってないな?」
「大丈夫だ。」

とんとんと扉を叩くと、奈瀬が小窓から覗きました。
「戻ってきたのね。」
そう言うと、扉を開けてくれました。

部屋の中には、和谷と伊角とあかりがいました。
「やっぱり。 さっき城の裏門で和谷にそっくりな奴に会った。 もう一人と城の地下牢へ閉じ込められるみたいだった。」

「それは、楽平だよ。 楊海公が、俺たちの身代わりを立ててくれた。 もう一人は陸力。 二人とも、忍びの術を心得ている雑技団のメンバーなんだそうだ。」

それから全員で、今までのことを話し合い、今後の計画を練ったのでした。

「まずはヨウキ様にお会いしなくてはならないけれど。 警備はどうかしらね。」
あかりの言葉にアキラは言いました。
「おそらく、今は少し緩んでるかもしれない。 何しろ、彼らは、本物のゴ石を手に入れたと思っているしね。」

あかりは、それを聞いて、少し考えてから言いました。
「私、侍女の裏口を知っているの。 だから、そこからヨウキ様に会いにいけるわ。」

「侍女の裏口?」
「ええ、それは、男性は入れないのよ。 代々、王妃の側近の女性だけが知る秘密の通路なの。 私もまだ使ったことはないけれど。 
皆。私についてきて。」

全員は、あかりについて、お城の方角を目指しました。 お城の少し手前に小さな祠がありました。

「これって、女性が、安産のお参りに来る祠ね。」
奈瀬が言うと、あかりが頷き、その祠の奥の壁の一部をそっと押しました。 秘密の通路への入り口でした。

長い通路でした。 ずっと、誰も使っていなかったのでしょう。 埃が積もり、くもの巣が張っていました。 その道の途中が二股に分かれていました。

「待てよ。 これって、もしかして。 あいつはヨウキ様に聞けって言っただろ。 ということは侍女の裏口は、地下牢にも繋がっているってことじゃないか?」
ヒカルは言いました。

皆は、はっと顔を見合わせました




22話はさびる様担当でした。
これで一気に事が運ぶと思ったらそうはいかんのです;
(こうやって編集してるとわかることが。)話を折ってるのは緋色ですなあ(苦)




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