アキヒカ三銃士




20




     

「海ルートは今回はT国の船で送ってくれるというから安心だな。」
「ああ。でも、問題は、港についてからだよ。 僕たちの方は、いつも油断はできないね。」

T国の国境まで、問題がなかったのは、分からないように、警備が敷かれていたからかも知れませんでした。

ふたりは、前と反対のルートを辿りながら、オチのいる村までやってきました。
再び、館を訪ねてみましたが、オチは、もういませんでした。
年に一度のステージの祭りに出かけたのでした。

「あいつ、早速、出かけたな。 あんなに熱心に芝居をやってるんだものな。」
「ヒカルは熱心にやらないの? 
僕、あの時の芝居はすごく感心したよ。 
あの仮面の囚人の心が見事に映し出されてさ。
あれを見て、ますます君と是非に芝居をして見たいと思ったよ。」

ヒカルはそれを聞いて少し嬉しそうに笑顔を見せました。


『ヒカル。 無事、ステージの街に戻れたら、私にアイデアがあるのです。 あの囚人が国王であるかどうかは、ゴ石で確かめられます。 
もし助け出したとしても、その後どうするのか、それも今から考えておかなくては、日がありませんから。 祭りの日まで。』

サイのその声にヒカルは頷きました。

『どうやるの?』

『芝居の脚本を考えてあります。 
私の妖精の力とゴ石の力をあわせれば、一気に文字に表わすことができます。 それを皆で演じるのです。 
街を混乱に陥れることなく、悪事を企てたものだけを懲らしめることができる方法です。
芝居を見れば、分かる者には分かる、そういうものです。』

 

ヒカルがその話をしようとした時、アキラが言いました。

「僕は緒方さんが危ない気がするんだ。 
あの人は一匹狼だけれど、今は限りなく座間派に近い。
何とか僕たちの方へ引き寄せられればいいんだけど。」

ヒカルは、その時、ぴんと来るものがありました。 
サイの芝居に緒方っていう人を入れたい…。
サイの芝居の中身は分からないけれど、キャスティングが必要だろ?

「緒方って人、芝居はやらないのか?」
「いや。 とんでも。 上手いんだよ。 現代の名優。 10傑の一人にはいると思うよ、きっと。」
「10傑って誰だ?」
「ああ。そうだな。 僕の父も。 楊海公も。 残念だけど、座間とかも入るんだ。」

ヒカルは国王や、あの楊海公までもが芝居をやるということに感心しました。

話をしながら帰路は、なぜか、邪魔が入らず、思いのほか早く例の洞窟の辺まで戻れました。

「不思議だな。 邪魔が入らなかった。」

「多分…。」

「多分?」

ためらいがちに、アキラは言いました。
「多分、海路に目を集中させているんだ。」

「誰が?」
ヒカルは、あかりたちの危険を思って、険しい声で言いました。

「一人はT国公認の船を用立ててくれた楊海公さ。 
多分、あの人は考え深いから、港に着いた後のことも考えてくれているとは思う。
ダミーを使うとか、あるいは偽のゴ石を奪い取らせるとか。 
だって、敵の目的は、あかりさんたちではなく、ゴ石だからね。」

「他にもいるのか?俺たちを無事にここまで導いているのが。」

「おそらく、緒方さんだ。」

「じゃあ。味方に?」

「いや。僕たちが仮面の囚人を助けたその後、緒方さんは自分の望みを果たすだろう。 
僕たちに危険なことをさせて、そのあと、結果を受け取ろうと思ってる気がする。」

そう話しながら、洞窟の前に着きました。

二人は顔を見合わせ、頷きあい、そっと、洞窟の中に足を進めました。

 



20話はさびる様担当でした。
いっきに洞窟まできましたね〜。二人?の間を邪魔するの者もいませんでしたし(笑)
さて次回はいろいろなお邪魔虫を登場ます。




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