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ツインズ



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結局オレは昼休みになっても夜を捕まえる事が出来なかった。

「あんやろう〜」

オレはイライラしながら祭と藤守といつも飯を食べる
校庭裏にむかっていた。

校庭裏は穴場中の穴場なんだ。
暑い夏は木陰になってて涼しいし冬は冬で
ぽかぽか日差しが差し込むし、ついでにベンチまであるもんだから
飯を食うには持ってこいなんだ。

けど、裏庭ってのがあるのかあんましここまで人が来る事はねえ。
まあ教室か食堂で飯を食うやつが大抵だしな。

その特等席に先に来て待っていた祭はオレを見るなり大きく手を振った。


「空、なんだか機嫌悪そうだね。その様子じゃ直くんから例の話を
聞いた?」

「ああ。夜とらんのことか。全くあいつら何考えてんだか。」

祭と並んでベンチに座るとオレは缶ジュースを開けた。

「そう。けど・・僕は夜の気持ちもわかる気がするよ。」

オレは飲みかけてたジュースを噴出しそうになった。

「なっ祭、お前まさかあいつらの味方なのか?」

「何言ってるの。僕はいつも空の味方だろ。」

オレはそれを聞いてちょっと安心した。

「けどね、寮長としても友達としても夜とらんくんに
ただ同室に出来ないと言うわけにはいかないんだよ。
空だってわかるだろ?」

確かに・・・それはそうかもしれねえとオレは思った。
祭には寮長としての立場ってのもあるし
祭は夜ともらんとも仲がいいからな。

そもそもオレたち5人はいつもガキの頃からずっと一緒で
野山を駆け回ってたような仲だ。

けどいつの間にか夜とらんは中学の頃から出し抜いちまったように
二人でいることが多くなったし、逆にオレと藤守は祭か夜とらんの仲介役がねえと
一緒にいる事は少なくなった。

なんでそんな事になっちまったのか?
オレが藤守に嫌われちまったからか。

ため息をつきながらそんな事をぼんやり考えていたら祭が言った。


「それでね夜のことだけど。僕の返事が納得いかなかったみたいなんだ。
だから、空とナオくんの許可が貰えたら部屋交代のことは認めると返事
してあるから。」

祭りの話の前半は藤守に朝聞いた話だった。
後半は・・ってようするにオレたちが同意するかしねえかって話だろ。

だったら藤守があいつらの同室を認めるはずがねえし?
この時オレは不思議と自分はどうしてえのか考えなかった。

「そっか。」

「そしたら夜も引いてくれたからわかってくれたと僕も思ってるよ。」

「おう。祭サンキュな。」

その時オレのお腹の虫がぎゅ〜と間抜けな音を立てた。
その音を聴いた祭は「くくくっ」って笑いを噛み堪えているので
オレはむっとした。
堪えるくれえなら笑ってくれた方がましだ。

オレがそういうと祭は遠慮もなしに大声でわらいやがった。
たく、ちょっとぐれえ遠慮しろって。

「ちぇっ、腹の音ぐれえいいだろ。
それにしても今日藤守おせえよな。オレより先に教室出たはず
なんだけどな。」

「ごめんごめん。空に言うの忘れてた。ナオくんはらんくんの事が気になるから
寮で御飯を食べてくるって。」

それで藤守のやつ慌てて教室を出て行ったのかとオレは思った。
そりゃチャイムが鳴った途端何事かっておもうぐれえすげえ勢いだったんだぜ。
きっとらんの好きなパンを買いにすぐ購買に走ったんだろう。



祭と飯を食いながら夜らんの部屋交代の件は
もう決着がついたものだとばかり思っていたがそれはオレの甘い考え
だったと後で知らされた。





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らんは布団に体のすべてを預けるようにだらりと体を落としていた。
なんとなく力が入らなかったし体も重くて・・・けれど何よりこの布団に
夜の匂いがなんとなく残っているような気がしてずっとそうしていたかった
のだ。

「夜怒ってたよね。」
今朝だって僕が起きた時にはもういなかったし。

残り香の夜を手繰り寄せるとらんはぎゅとそのぬくもりを抱きしめ「ごめんな
さい」とつぶやいたのだった。





お昼を過ぎようとする頃うとうとするらんの頬にぱさりと音がした。
重い瞼を開けるとそこにはらんの焦がれていた夜がいた。

「よる!!」

「らん大丈夫か?ほらパン買ってきてやったから。」

らんはたったそれだけのことなのに自分の心が弾んだような気がした。
見ると机の上にらんの大好きなクリームパンとカレーパンにココア
がそれぞれ2こづつ並んでた。

「よるありがとう。」

らんが言うと夜は柄にもなく照れたように頭を掻いた。
そうしてベットに並ぶように腰をかけると二人でパンを食べた。

夜はらんの身辺をあれこれ焼いてくれてらんはその度に
夜に愛される気がして嬉しかった。

「夜僕お腹すいててクリームパンだけじゃ足りないみたい。」

らんが夜に甘えると夜は「しょうがねえな」と言いながらも
パンの包みを取ってくれた。

夜からカレーパンをうけとろうとして夜の動きが止まってらんはドキっとした。

「よる、どうしたの?」

不思議に思ってらんが聞き返すと夜はいきなりらんの上に覆いかぶさって
ベットへと押し倒した。
受け取り損ねたカレーパンが床に転がる。

「よ・・よるぅ?」

「黙ってな。」

夜はそのままらんの唇に口付けると舌を深く絡ませた。

「ぅぅ・・ん」

夜の食べたカレーパンがらんの舌まで伝わってきてはそれを絡め取る。
らんは妙な感覚に襲われた。

夜に自分自身のすべてを食べられてっしまうんじゃないかと言う感覚。
そしてそれでも構わないと思ってしまうほどに自分が夜を好きなんだという
自覚。

らんが抵抗しないのをいいことに夜はらんの服へと指を
進入させた。

小さな尖りに触れる瞬間らんが体をよじった。

【ダ・・・メ】

塞がれた唇越しにらんが訴えると夜の動きがそれで止まった。
塞がれた唇が離れると夜は部屋の入り口を睨んでいた。

らんは不思議に思ってそこを見ると部屋の入り口でパンを握り締めたまま
立ちすくんでいるナオと目があった。


「ナ・・オ・・!!」

一体いつからそこにいたんだろう
ナオはぶるぶると肩を震わせていた。

「らんのバカ!!最低!!」

直は持っていたパンを二人に投げつけると走っていったのだった。




     
                       
ツインズ8に続く〜


夜の同室作戦の宣戦布告ですかね(笑)
ツインズ8はまたしばらく更新があきます。すみません;