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ツインズ



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オレが寮から出た所で藤守が門前に佇んでいた。

「羽柴ちょっといい?」

ひょっとしてオレの事待ってたとか?
藤守は今朝起きた時より不機嫌さが増している気がした。

「ああ。藤守どうかしたのか?」

「羽柴、夜から何も聞いてない?」

「よる?何かって何を?」

たったそれだけのやりとりなのに藤守はあからさまに大きな
ため息をついた。

「なんだよ。藤守。気になんだろ。夜がどうかしたって。」


藤守が歩きはじめたので俺も後から追いかけて藤守の肩に並んだ時
藤守が一瞬間を置いてから話を切り出した。

「夜がね。祭ちゃんに、らんと同室にしてくれって頼んだらしいんだ。」

「夜がらんと同室ってマジかよ!!」

思わず怒鳴った俺に藤守も同感だとばかりに大きく相槌をうった。

「オレも絶対嫌だって祭ちゃんに言ったんだよ。」

「うえっ?そうなのか、まあそうだよな。」

オレは思わず藤守の返事に詰まってしどろもどろになった。
オレのその反応に藤守は不服そうにしてっけど。

つまりそれは、藤守お前はオレと同室は絶対嫌ってことなわけだよな。
オレは内心ひどく落ち込んだ。

つうのも、この学園には個室もあるけど敷居(少なくても俺らには高え)
が高くて。
そんなで同室者と揉め事があったり、
気が合わなかったりすると同室者をトレードするのが一般になってる。
まあその権限を寮長の祭が持ってるわけだけど。

とはいえ祭は一方的に権限をひけらすことはしねえし
本人たちの話し合いに折り合いつける程度なんだけどな。

「藤守、それで祭のやつなんって返事したって?」

「うん。祭ちゃんの判断だけでは無理だって返事したって。
けど夜は諦めてなかったみたいだって祭ちゃんが言ってた。」

ちっ、夜のやつ何考えてやがんだ。
大体らんと同室って下心みえみえなんだよ。


「それにね・・羽柴・・。」

藤守はそこで一端言葉を切ると言葉を捜してるかんじだった。
まだ何かあるとか?

「昨夜の夜とらんのことなんだけど。」

昨夜の夜とらんって・・。

「・・らんボロボロだったんだ。」

藤守は言いにくそうに下を向いて、その頬は微かに染まっていた。
それでオレは余計にリアルに想像しそうになってそのヤバイ想像を
払いのけるように咳払いした。

「それってつまり学校を休まなくちゃならねえぐれえってことか。」

藤守が頷いたのを見て俺は夜に対して怒りがこみ上げてきた。
あいつらんに惚れてるんじゃねえのか。
なのにそんな無茶やりやがって。

「あんやろう・・。」

オレが唸るようにいうと藤守もそれに同調するように大きく頷いた。

「羽柴あのね・・それで夜に・・」

「夜と話せばいいんだよな?それで藤守、らんの体は大丈夫なのか。」

「本人は大丈夫だっていってたけど・・」

藤守の顔には疲労の影が映ってた。
らんのことが心配なんだろう。そりゃそうだろな。オレと夜と違って藤守とらんは
すげえ仲がいいし。
夜のことだから今晩もらんと・・・なんてことも考えてっかもしれねえし。

「藤守心配すんな。部屋の事もらんのこともオレから夜に話しすっから。
それにもしまた夜とらんの事で何かあったら相談しにこいよ。
そんな事を相談できんの藤守オレだけだろ。オレも藤守だけだしな。」

「うん。羽柴ありがとうね。」

藤守に少し笑顔が戻ったのをみてオレも安堵した。
本当はこういう相談を持ちかけられるのってそれほど嫌じゃねえ。

夜とらんの繋がりで俺たちが繋がっていられるなんて他力本願も
いい所だけど、それでも藤守がオレを頼りにしてくれてるってわかるから。

「それじゃあ、羽柴なるべく早くに・・だよ。」

「わかってるって。」


話込んでる間にオレたちは教室についてて丁度席についたら予鈴が
なり始めた。
予鈴がなり終わる頃 夜が慌てるでもなく教室に入ってきて俺は
夜を睨みつけたが夜はそ知らぬ顔だった。

『夜 てめえ〜シカトしてるんじゃねえぜ!!』
ってオレは心の中で夜におもいっきり罵声を浴びせた。
ひょっとするとオレの考えを読んでるかもしれねえだろ?

あっオレの考えが読めるっていうのは、夜がいつも勝手に言ってるだけのこと
だけどな。『お前の考えぐらいお見通しだって』な。

だったら・・・『なんか言ってみろよ〜!!』

ガキみたいなことしてる自覚はあったけどそうでもしねえと気がすまねえ
気分で、オレが心の中で叫ぶと窓に映った夜の目が鋭くオレを睨んでる
気がした。

オレは思わずその冷たい視線にぞわっとしたけど。そんな脅しで今日は
引かねえんだからな。



1時間目の授業がおわったあとオレは早々に夜を捕まえようと思ったが
チャイムがなった時には姿はなく俺は肩透かしをくらったのだった。



     
                       
ツインズ7に続く〜