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        〜そして未来へ06



     
ヒカルがなんとなく寝すぎたような感じがして目を開けた時、すでに身支度を
整えたアキラが傍にいた。

今日は学園で剛(ヒカルの祖父)の弟子たちとの勉強会がある日だった。
慌ててヒカルは起き上がる。

「もう、こんな時間?」

ヒカルの声は微かに出ただけだった。
ヒカルは喉の奥を「うんうん、」と鳴らしたがそれでも声は治りそうになかった。

「君は熱があるんだ。だから今日の勉強会は休んだほうがいい。」

「そっか、」

ヒカルは夜中ぼんやりとアキラがそんなことを言ってたような気がした。
そういや、オレ寝る時、何も着てなかったはずじゃ?

どうやって着替えたのかも思い出せずヒカルは顔をしかめた。
まさかアキラが着替えさせたのか?

ヒカルは気になったがどうにもアキラに聞き出せなかった。


「すまない。」

突然謝罪したアキラにヒカルは小さくため息をついた。

「昨夜の事だったら謝るようなことじゃないだろ。」

「でも、僕が言い出さなければ・・・、」

まだ言い足りないのかアキラが言い募ろうとする。

「言い出したのはお前が先だったかもしれねえけど
・・・・オレもそう思ってたんだ。もしお前が言わずにいたら
オレが「しよう」って言ってた。だからさ、」

ヒカルは言ってしまった後恥ずかしくなった。

アキラをフォローするつもりでついそんな事をいってしまったが。
痛くてあんな行為を自ら望んでたなんて。
体に負担をかけるというのに。

そしてそんな行為に今まで感じたこともない感覚をヒカルは知って
しまったのだ。
昨夜のヒカルの変化をアキラは感ずいてもいるかもしれない。

「ヒカル」

アキラはそっとヒカルを抱きしめた。

「ああ、もうお前うっとおしい。さっさと学園にいけよ。」

さっきの照れもあってヒカルはアキラを追い出しにかかる。

「体調の悪い君を一人で置いていけない。」

ヒカルは出ない声を張り上げた。

「お前がいたらオレはゆっくりトイレもいけないだろ」

「そんな事気にすることじゃない。」

「オレは気にするって。」

その時だった。ヒカルの携帯がなった。
枕元にあったそれを取ったのはアキラだった。

「もしもし、進藤先生おはようございます。今日の勉強会なのですが
ヒカル君が熱をだしてそれで彼も僕も・・・。」

ヒカルはアキラが最後まで言わないうちに携帯を取り上げた。

「あ、親父、オレ、」

『どうしたヒカルその声、風邪か?』

「そうなんだ。ごめん、じいちゃんせっかく病院から帰ってきたのに、
オレいけなくて。」

剛は検査のためと言ってここ二月近く入院していて先日退院
したばかりだった。

『じーちゃんにはオレからちゃんと言っておくから。気にするな。』

「うん。親父頼む。塔矢は行くから。」

通話を切ったヒカルをアキラが恨めしそうに見ていた。
そんなアキラをヒカルがこつづいた。

「ほら、さっさと行けって。」

「君は全くどうして・・・。わかったよ。
でもせめて僕のいる間に何か食べて薬だけでも飲んで
くれないかい。
昨夜も君は薬を飲まなかっただろ。」

アキラに言われてもヒカルは昨夜寝てしまった後の事はほとんど
覚えてはいない。

「んなこと言われなくてもちゃんとするよ。お前はオレのお袋か。」

「そうじゃないけれど、」

アキラは盛大にため息をついた。

「君をほっておけないんだ。」

アキラに負けないほどのため息をヒカルがつく。
でも本当はこんなアキラが嫌なわけじゃない。

「そんなに心配しなくても大丈夫だって。だからさほら、」

ヒカルはアキラを行かせる為に引き寄せると自らチュっと軽く口付けた。
それでも足りなかったのかアキラがもう1度ヒカルに深く口付ける。
それは後を引くような長い口付けだった。

「愛してる。ヒカル、」

「はい、はい、わかってるから、さっさと行って来い!!」

「ああ、じゃあ行って来る。」

名残惜しそうに出かけたアキラを見送った後、ヒカルはバタンとベッド
に転がった。

一人になった途端自分がからっぽになったようだった。

そのまま布団に包まり布団に鼻をおしつけた。

布団には自分の体にも微かにアキラの匂いが残っていた。



     






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