ラバーズ




15





     
真意を確かめるように塔矢が俺の顔を覗き込む。

俺はもう1度塔矢の唇にキスした。



「急にどうしたんだ。進藤 なぜそんな事を・・」

「塔矢は嫌なのか?」

「そうじゃない。」



そうじゃない・・それは俺とそういうことしてもいいってことだろう。

俺は無理やり塔矢を壁に押し付けると
もう1度キスを試みようとしてそれは逆に塔矢からの
激しいキスにのまれた。


離れたくなくてぎゅっとしがみつくと塔矢は俺の背を
力強く抱きしめた。



「進藤 君は何を怖がってる。僕があんな事を言った
からか。それとも・・・」


「違う!理由なんてない。」



わけは話せない。話す訳にいかない。


「好きだから 塔矢のことが好きだから俺 会いたいって思った。
そうしたいって思った。理屈じゃないんだ。」


明日にはお前の事忘れてしまったとしてもこの気持ちは俺本物
だから絶対忘れたくないから・・。



「電話で君がここに来るといった時
僕は自分を抑える自信はなかった。まして
君にそんな事を言われて冷静でなどいられない。」


「うん。抑えなくていい。俺・・本当のお前のこともっと知りたい・・」

「進藤・・・」



塔矢は俺の腕を掴むと寝室の扉をあけた。





寝室に入るとどちらともなくキスを求めた。
はじめは触れるだけだったそれは長くなり 深くなり・・・

俺の口内を割って塔矢の舌が進入する。

 ざらっとしたそれは俺を飲み込もうとするように這い回り 

何も考えられなくなるほど甘い疼きが全身へ
と駆け抜け俺は夢中でその快感を追った。



塔矢の手が俺のジャージにかかると我にかえって羞恥で
顔から火が出そうなほど熱くなった。

思わず互いの体に割り込ませた手は震えていた。



「進藤怖い?」

「怖いわけじゃないけど。でもすげえ恥ずかしい・・」

 塔矢はくすりと笑った。

 「君は大胆のわりに初心だな。」

 「塔矢はなんでそんなに余裕なんだよ。」

「余裕なんてないよ。さっきここで
 君を抱きしめた時も、今も君を前にしてどうしていいかわか
ないほど動揺してる。」




塔矢はそういうと俺の手を握った。
その手は俺と同じように小刻みに震えていた。

お互いの震えを包みこんでしまうように握り締める。
 だけど震えは全身に広がっていって・・・
でもこんな思いさえ塔矢と共有できるから俺幸せなんだと思う。



二人抱き合ったままベットへとなだれ込む。






「ヒカルと呼んでいい。」

熱い肢体を感じながら俺は返事の変わりに塔矢の名を
呼んだ。

「アキラ・・・」



「ヒカル ヒカル ヒカル・・・」
     

俺がそういうのを待っていたように
熱い声が唇が指が体が俺を求めてる。



塔矢って本当はこんなに激しいやつだったんだって思う。
ふだん物静かで優等生で でも気取ってるかっていうと
そうではなくて・・。



凛としたどこか人を寄せ付けないような
まなざしに、ずっとずっと惹かれてた。


いつも塔矢の視線の先に俺がいればいいのにって
思ってた。


でも今塔矢が見つめているのは俺だけ、そして俺が感じて
るのもお前だけだ。



押し寄せてくる快感を二人で上りつめて 抱きしめあった体は
満たされたおもいだけでいっぱいだった。




     
      







W&B部屋へ

16話へ