ラバーズ








     
駅までの道のりを塔矢と並んで歩く。

「僕と一緒だと楽しくない?」

「そんな事ないって・・・」

「何だかいつもより元気がないような
気がするんだけど。」

何か話さないといけないと思うのに緊張して
いて気の利いた会話が見つからない。


「そういえば進藤は部活には入らないの?バスケとか。」


俺はスポーツにはかなり自信があった。
1年の頃から各部から勧誘されてる。

和谷はバスケ部の部長で俺を誘うけど
なんとなく部活に縛られるのは嫌でといって
何をするでもないのに帰宅部やってる。



「ん・・・なんとなくな。それより塔矢は。」

「僕は塾があってなかなか部活どころじゃないな。」

「そうだよな。塔矢頭いいもん。大学もいいとこ狙ってんだろ。」




塔矢と夢中に話す最中に電車に乗り何駅かすぎてもう次が
海王だと気づいた。

目の前を通り過ぎる見慣れた景色がこういう時辛くなる。

電車がゆっくりとスピードを落としていく。



「塔矢次だよな。」

「進藤その迷惑じゃなかったらこれから
こうやって一緒に帰れないか。」

俺は今日一緒に帰ろうと塔矢に誘われた時より驚いてでも
すげえうれしくて大きくうなづいた。

「もちろん。いいぜ。」


電車を降りた塔矢が振り返って手を上げる。

俺は遠ざかる塔矢との距離を感じながら
それでも急激に近づいていく距離に手ごたえを感じていた。





家に帰って荷物もそのままに鞄ごとベットに
ダイビングする。

やった!!

些細な事なのに俺の胸はさっきから高鳴ったままだ。




ひょっとしてさ。まさかあのノート?



俺は半信半疑で机の奥にしまったノートを取り出す。
俺は震える指でそこに書きたした。



塔矢が俺だけをみてくれるように・・・と。


                           

     
      




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