番外編 君がいる2

 



その後碁会所からどうやって家に帰ったのかオレは覚えていない。


塔矢先生が自宅で療養中だという噂は最近聞いていた。
受け取ったメモには整った字で細かにここしばらくの塔矢のスケジュールが
かかれてあった。


らしいと言えばらしいよな。
オレのスケジュールと合わせても行けそうなのは5日後だった。








5日後オレは決心を決めて塔矢の家の前に立った。

しばらくしてインタホーンに出たのは塔矢の母さんだった。

『どちらさまですか?』

「あ、あの進藤ヒカルです。」

『すぐ伺います。』

彼女はすぐに出迎えてくれた。

「ごめんなさい。進藤くん、今日はアキラさんは仕事で出かけていて。」

申し訳なさそうに謝罪をされてオレは慌てた。

「いえ、あのオレ・・・先生が自宅で療養してるって聞いてそれで・・・。」

「主人に会いに来てくたさったの。でもあの人先ほど薬を飲んで寝むってしまって。」

ますます、すまなさそうに頭を下げられてオレの方が恐縮した。

「あの・・何の連絡もせず勝手に来たオレが悪いんです。どうか気にしないでください。」

何度も頭を下げる彼女にオレも頭を下げた。
ほっとしたのか残念だったのかわからない気持ちでその場を逃げるように
オレは退出していた。






塔矢先生から電話があったのはその晩だった。


電話をとったオレはその声を聴いただけで体が震える想いだった。

「進藤君。今日来てくれたそうだね。」

「ごめんなさい。オレ突然お邪魔して。」

「いや、進藤くんがわざわざ足を運んでくれたのに明子にどうして起こしてくれなかった
のかって。詰ったよ。」

そう言って笑った先生にオレは塔矢の母さんに申し訳ない気分になる。
こういうところは塔矢と先生は似てる。

「明後日の金曜日、昼からは無理だろうか?その日は明子もアキラも
自宅をあけさせる。」

口調は穏やかだったが有無を言わせぬ言い方だった。
その日は研究会が入っていたが、オレは頷いた。

佐為を・・・オレを知ってもらわないといけない。



「わかりました。1時に、必ず行きます。」




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2話目短くてすみません。プロットの加減でこうなってしまいました。
そのかわり3話目も一緒にUPします。







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