いつか
番外編後編




もう日はほとんど傾いていた。
ヒカルに俺ん家に来るかと聞かれ
アキラはこくりとうなづいた。


「青龍城?」

驚いた事にヒカルに案内された城は青龍城だった。

「お前のお城じゃねえけどな。」

アキラは小走りで先に城へと入る。

夕暮れの城にカツンカツンとアキラの足音だけが城に響
きわたる。
そこはアキラの知っている青龍城でありながらがらんとした静寂だった。
だが、それは嫌ではなかった。

「ヒカルは1人でここに住んでるの?」

「ああ。」

「寂しくない。」

「寂しくなんてねえよ。部屋いくか?」

「うん。」

案内された部屋は城と同じ僕の部屋だった。

「疲れてるみたいだから ゆっくり寝ろ。」

そういって去って行こうとしたヒカルをアキラは呼び止めた。

「待って。あの・・・そのヒカル一緒にいては駄目?」

「俺は人の生気を吸う化け物だぜ。お前を食っちまう。」

「僕はおいしくないかもしれないよ。でもヒカルが食べたいなら
かまわない。」

本心だった。だが、ヒカルは僕を食べるつもりは
無いだろう事も何となくわかっていた。





ヒカルは戻ってきてアキラをそっと抱き抱えた。
温かい腕 優しい胸の音にアキラは安心する。

ベットに下ろされその横にヒカルが入った。


いつまでも寝付けないアキラにヒカルは不思議な話をした。


それは塔矢国に伝わる御伽噺だったが母さまが話してくれた
ものとは違っていた。





碁の神様は青龍だった自分の弟子と結婚したんだ。
そして男の子が誕生した。
その子の名前は「ヒカル」


ヒカルの名前と一緒だと、アキラは笑った。


ヒカルは神と人間の間に生まれた子供だったけど神にも人間にも
なる事はできなかった。

だから1人でいる。ずっと1人なんだ・・・と。




「ヒカルは1人じゃない。僕がずっと一緒だから。」

アキラはヒカルの手を握った。



その晩 二人は抱き合うように寝むった。
父さまとも母さまとも違うぬくもりをアキラは小さな腕で
抱きしめた。

アキラは初めての恋をしたのだ。




朝が来てアキラはヒカルと一緒に碁を打ち森に出かけた。

ずっとこうしてヒカルと暮らしていてもいい。
アキラはそう思い始めていた。


そうしてまた 晩がきて目が覚めたときそこにはヒカルは
いなかった。

城中探し回り 何故だか気になった東の塔を上った。
そこは青龍城では宝碁盤がある場所。

その場所にあったのは碁盤でなく大きな美しい鏡だった。





「ヒカル・・・?」

鏡には芦原さんや村上さんそして大勢の城や町の人たちが
映し出されていた。

「これだけ探しても見つからないなんて・・。アキラ」

今にも泣き出し崩れ落ちてしまいそうな芦原の顔にアキラは胸が締め付けられた。

「私たちは西の方を当たってアキラ様を探します。」

自分の所業で皆に辛い思いをさせてる事をしり
アキラはかなしくなり 鏡から目を逸らした。

「帰るか?」

ヒカルの問いかけにアキラは顔を上げた。

「でも僕が城に帰ると ヒカルは また1人になってしまう。」

「俺は人を食べる化け物だ。アキラもそのうち食っちまう。」

アキラの瞳からぽろぽろと涙がこぼれおちた。

「それでもいい。」と。

アキラはヒカルにしがみついて泣いた。



「だったらもっと大きくなっていい男になったらここにこいよ。
それまでお前を待っててやるからさ。」

「本当?」

「ああ ただしその時は俺は容赦しないぜ。」

アキラはこくりとうなづいた。

「ヒカル しゃがんで。」

「約束の印」

アキラがヒカルに口付けた。
それは小さなアキラからヒカルへのプロポーズ。

「ほら行けよ。」

優しく即されてアキラは立ち上がった。

わけの分からぬまま鏡に吸い込まれていつの間にか・・・。


アキラは泣きはらした芦原に抱きしめられていた。

アキラも泣きながら芦原を抱き返した。
でもそれはアキラの求めたぬくもりとは違うと感じていた。


僕は一体何を・・してたんだろうかと。


いつか・・・

                                    いつか番外編終わり


あとがき

いつかは流斗さまのアキヒカで白雪姫をと言うリクエストで書きました。
はっきりいってどこが白雪姫やねんって言われそうですが(苦笑い)
でもリクエストを頂かなければ絶対に書けなかったお話だと思ってます。

リクエストを下さった流斗さま、ここまで読んでくださったお客様に感謝です。
またここを読んでこんなの書いて欲しいな〜というのがありましたら
遠慮なく仰ってくださいませ。最近ヒカゴほとんど書いてないので書けるかわかりませんががんばってみようと思います。それではまた・・・。

W&B
目次へ