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院長コラム

たかが頭痛されど頭痛
カゼと間違われるくも膜下出血

突然の頭痛があると、皆さんは真っ先に「カゼかな?」と思いませんか。しかし、その思い込みは時に死を招くのです。何やら怖い話ですが、頭痛の原因にもピンからキリまであって、本当のカゼ(副鼻腔炎、中耳炎などを含む)から、死につながるものまであるのです。そして、死につながる最も恐ろしい頭痛の代表的な病気が、くも膜下出血なのです。

くも膜下出血の原因として、脳動静脈奇形や外傷性のものもありますが、主な原因は脳動脈瘤(血管の一部分が瘤のように膨らんだもの)の破裂です。くも膜下出血の主な症状は頭痛で、時に吐き気や嘔吐をともなうこともあります。典型的なくも膜下出血の例では、頭痛や嘔吐の後しばらくして意識状態が悪くなり、ついには昏睡状態におちいり死亡します。手術しない場合のくも膜下出血の発症後一か月以内の死亡率は約70%で、脳卒中の中でも高率なのです。即死に近い例は約10%あり、車の運転中に死亡して他人を事故に巻き込んだ例も時々ニュースになっています。

くも膜下出血の最初の症状である頭痛は、典型的な場合では、「カミナリが落ちたような」とか「カナヅチでなぐられたような」とか表現されるほどの、それまでに経験したことがないほどの激痛です。そして、項部硬直と言って首を曲げると痛い、ないしは、痛みのために首を曲げることができないという症状を伴うこともあります。しかし、軽症のくも膜下出血では、嘔吐もなく頭痛もそれほど強くないことがあって、それが曲者なのです。そういう場合は、しばしば「カゼ」と間違われるのです。中には、「昨日からすごく肩がこる」という程度の症状の人が、くも膜下出血であったという例もあります。「これしきのことで会社を休めるか」などと思ってはいけません。無理は禁物です。頭痛のタイプも色々なので注意が必要です。「人生いろいろ、頭痛もいろいろ」なのです。しかし、痛みがいつ起こったか、つまり、発症の日時を明確に覚えている人が多く、これは、くも膜下出血の頭痛に特徴的なことだと言えるでしょう。患者本人にも、何となく普段と違う頭痛だという自覚があるということなのです。

突然死の代表的疾患

くも膜下出血の約一割は即死するような劇症型です。くも膜下出血は心筋梗塞や不整脈と並んで、突然死を起こす代表的な病気なのです。しかし、突然のように見えても、発作の一週間ほど前に、軽い頭痛があることが多いのです。それを我慢して見逃すと、この世とのお別れとなってしまうのだから、頭痛には油断がなりません。「たかが頭痛、されど頭痛」なのです。

最初の脳動脈瘤の破裂が軽度で出血量が少なく、くも膜下出血が軽症ですんだ場合でも、二度目の脳動脈瘤の破裂(再破裂)は、大出血を起こして命取りとなることが多いのです。一度破裂した脳動脈瘤が一か月以内に再破裂する割合は約50%と言われています。そのため、最初のくも膜下出血の発作時にCTなどの検査を受けて、早期にくも膜下出血を見つけることが何よりも重要となるのです。

ところが、くも膜下出血が死に直結する怖い病気なのに見過ごされるのは、脳梗塞や脳出血(高血圧性脳内出血)などの他の脳卒中と違って、手足のマヒがなく頭痛だけが主症状だからなのです。また、軽度のくも膜下出血では頭痛も軽いために、「カゼ」や「肩こり」などと勘違いされることが多いのです。また、脳卒中にはまだ早いと思われる四十代、五十代、時に三十代などの働き盛りの若い世代の人々に多いのも特徴です。そのため、自分がまさか脳卒中であるとは思いも及ばないのです。脳卒中というと高齢者の病気というイメージがありますが、くも膜下出血は「中年キラー」の脳卒中なのです。

くも膜下出血は意外なことに寝ている間に起こることが多いのです。その他、重い物を持った時、興奮時、排便時、入浴時、性交時などです。性交時の死(腹上死)の半分近くは脳卒中で、その約六割がくも膜下出血だと言われています。

我慢は禁物

このように恐ろしいくも膜下出血ですが、早期に、症状の軽い間に発見されれば、手術により救命、社会復帰できる可能性が高くなるので、早期診断が大切です。意識不明になるほど重症化すると、治療しても救命、社会復帰は難しくなります。よくあるのは、強い頭痛があっても、「過労」とか「カゼ」のせいにして、我慢してCTなどの検査を受けずに仕事を続け、数時間から半日後に嘔吐し、ついで意識がなくなってから救急搬送されるというケースです。そういう場合は治療成績も悪くなります。病気では我慢は美徳ではなく、自分の命に対する罪悪なのです。せっかくの生きる可能性の芽を自らつんでしまうことになるのです。くも膜下出血で社会復帰の確率を高めるには、普段とは違う急な頭痛があれば、「この頭痛、もしやくも膜下出血では」と疑うことにつきます。頭痛が強ければ我慢せずに医療機関を受診し、CTやMRIなどの検査を積極的に受けることなのです。

    

くも膜下出血の発症率

くも膜下出血は、日本では、10万人に20人ほどの発症率です。つまり、1万人に2人ということになります。あまり起こらないことに対して「万に一つ」という表現が用いられますが、それになぞらえると、くも膜下出血は「万に二つ」起こる病気で、めったに起こるものではありません。しかし、起こると致命的となる、脳卒中の中でも怖い病気なのです。脳出血や脳梗塞などの他の脳卒中と違って、ほとんどの場合、自然治癒は望めず、手術しないと助からないのが特徴です。

また、くも膜下出血の主原因である脳動脈瘤は女性に多いのが特徴で、多発性のう胞腎という腎臓の病気に合併する脳動脈瘤のように、遺伝性のものもあります。また、くも膜下出血が多発している家系では遺伝性が認められることもあります。しかし、一般的には、それほど遺伝性を気にしなくてもいいでしょう。ある病理解剖のレポートでは、脳動脈瘤は100人に1人見つかったということです。しかし、くも膜下出血の発症は1万人に2人ですから、このレポートに基づいて推測すると、脳動脈瘤があっても、それが破裂してくも膜下出血をおこす確率は100人中2人、つまり、50分の1ということになります。この50分の1という確率をどう見るかということが問題となるのです。

くも膜下出血の手術

くも膜下出血の主原因である脳動脈瘤に対する手術には、開頭によるクリッピング術と、開頭なしでカテーテルを用いるコイル塞栓術があります。昔はクリッピング術が全盛でしたが、近年はコイル塞栓術が主流となりつつあります。しかし、コイル塞栓術で処理できない脳動脈瘤に対しては、依然としてクリッピング術が行われます。では、くも膜下出血を起こして手術しなければならないということになった場合、クリッピング術とコイル塞栓術のどちらも可能であるとしたら、どちらを選んだらいいのでしょうか。

その前に、筆者がそのようなことにコメントをする資格があるのかということに触れる必要があります。筆者は脳動脈瘤のクリッピング術に使用する器具を同僚の医師と工夫した結果、1984年、くも膜下出血をおこした破裂脳動脈瘤(IC-PC動脈瘤)のクリッピング術を77分で完了することに成功しました。当時、破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術の所要時間は、一般的に早くても3~4時間でしたから、いかに短時間の手術であったかということです。今ならギネス級かもしれません。

他の臓器の手術であれば、手術時間の長短は重要なことではないかもしれませんが、急性期のくも膜下出血の手術の場合は事情が違うのです。くも膜下出血の手術では、脳を圧迫しながら脳動脈瘤に到達するのですが、急性期のくも膜下出血では脳の腫脹が激しいので、脳を痛めないためには、できるだけ脳の圧迫時間を短くすることが重要なのです。脳動脈瘤のクリッピングはできたが、周りの脳がこわれたでは具合が悪いのです。雑な手術は論外ですが、的確な手術であれば、少なくとも急性期の破裂脳動脈瘤のクリッピング術に関しては、手術時間は短いにこしたことはないのです。もちろん、この時の患者さんは、後遺症も残さず完全に社会復帰できました。

皮膚切開から皮膚縫合終了まで77分(IC-PCの破裂動脈瘤に対するクリッピング手術)という最短記録?はいまだに健在なのです。

このように華麗なテクニック?を持っていた筆者が、くも膜下出血を起こして手術を受けるとしたら、クリッピング術とコイル塞栓術のどちらを選ぶでしょうか。「生か死か、それが問題だ」という有名なハムレットのセリフではありませんが、「クリッピングかコイルか、それが問題だ」ということになります。以下は全く個人的な見解かもしれませんが、参考になることも多いと思われます。

脳にやさしいコイル塞栓術

もし、一流の技術を有するドクターが執刀医であれば、クリッピング術でも良いのですが、なかなかそうもいかないこともあります。かつてクリッピング術に専心していた筆者ですが、くも膜下出血になったら迷わずコイル塞栓術を選ぶでしょう。ただし、コイル塞栓術ができないような脳動脈瘤もあるので、その場合は、クリッピング術しかないのは仕方のないことです。

コイル塞栓術は脳にやさしい手術なのです。クリッピング術のように開頭して脳を露出することがないので、全身状態の悪い人にも実施可能です。また、くも膜下出血をおこした脳は脳浮腫と言って脳が腫れあがっていることが多いのですが、クリッピング術では、それを押さえつけて手術することになるので、どうしても脳に負担がかかります。それに比べてコイル塞栓術では、そのような脳に対する負担が少ないというのも長所です。

また、くも膜下出血の手術の後に、スパズム(脳血管れん縮)と言って、脳の血管が縮んで脳の血流が悪くなる現象がおこり、ひどい時には脳梗塞をおこして脳がこわれてしまいます。せっかく手術がうまく行ったのに、このスパズムのために、患者が亡くなったり、社会復帰が絶望的になったりすることもある恐ろしい現象なのです。ところが、コイル塞栓術は、クリッピング術に比べて、このスパズムが軽度ですむというのも良いところです。

脳動脈瘤の4Sとは?

ダイヤモンドのグレードを表すのに4Cという言葉が用いられます。カラット(大きさ)、カラー(色)、クラリティ(透明度)、カット(多面性)の四つの要素です。それにならって言うと、破裂脳動脈瘤の場合は、4Sで評価が可能かもしれません。

最初のSはSize(大きさ)で、破裂した脳動脈瘤は5mm以上のものが多いのです。二番目のSはShape(形)で、形がいびつなもの、脳動脈瘤本体の上にブレブと言われる小さな瘤ができているものは、破裂のおそれが大きいのです。三番目のSはSiteまたはSpot(場所)で、脳動脈瘤のできた場所が重要なのです。前交通動脈瘤や脳底動脈瘤の場合は、特に注意が必要です。周囲の脳組織が特に重要な働きをしているからです。最後の四番目のSはSeverity(重症度)です。くも膜下出血の発作が激しいと、手術後の結果も悪くなります。それをさけるためには、急に強い頭痛があったら、我慢することなく、すぐにCTなどの検査を受けることが重要なのです。

高血圧の治療により脳出血は激減しました。脳梗塞は一般的に高齢者に多く見られます。それらに比べ、くも膜下出血は50歳前後の働き盛りに多く、しかも一定の頻度で起こっています。昔の人は「人間五十年」と短命でしたが、今では男性の平均寿命は80歳をこえました。しかし、くも膜下出血は、いまだに「人間50年」をひきおこす怖い脳卒中なのです。シェークスピアの「弱き者よ汝の名は女なり」にならうと、「怖きものよ汝の名は頭痛なり」と言えるかもしれません。

未破裂脳動脈瘤が見つかったら

近年はMRAなどの進歩により、脳ドックなどで、くも膜下出血を起こしていない未破裂脳動脈瘤が見つかることが多くなってきました。もし、未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、どうすればいいのでしょうか。その時に問題となるのが、脳動脈瘤の4Cのうちの3Cなのです。

まず、Size、つまり脳動脈瘤の大きさが問題となります。5mm以上のものは破裂の危険性が高く、7mmをこえると危険性はさらに増大するのです。少なくとも、7mmをこえる脳動脈瘤の場合は、手術を考えた方が良いでしょう。次にShape、つまり脳動脈瘤の形。いびつなものでブレブという小さな瘤を有する脳動脈瘤は破裂の危険性が高いので、手術考慮の対象となります。次にSite、つまり脳動脈瘤のできた場所も重要です。前交通動脈瘤や脳底動脈瘤などであれば、破裂した場合、脳の機能の低下が深刻なので、手術を検討した方が良いでしょう。また、IC-PC動脈瘤(内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤)は破裂する確率が高いので、手術検討の対象となります。

しかし、手術はコイル塞栓術が優先されるのは言うまでもありません。未破裂脳動脈瘤の場合は、自分で病院を選択できる時間的な余裕があるので、コイル塞栓術ができる病院をあらかじめ探しておく必要があります。コイル塞栓術ができないような形をした脳動脈瘤の場合は、手術するかどうかは迷うところです。

経過観察中の問題

未破裂脳動脈瘤が見つかっても、すぐに手術が必要ないと考えられる場合は、MRAで脳動脈瘤が大きくなっていくかどうかを定期的に検査する、つまり、経過観察になります。経過観察中に脳動脈瘤が大きくなる可能性は、1年間で約2%と言われています。経過観察中に増大した脳動脈瘤は破裂する危険性が高いと言われているので、大きさが5mm~7mmをこえるようであれば、手術を考慮した方が良いでしょう。もちろんコイル塞栓術優先です。

一般に5~6mmの大きさの脳動脈瘤の場合、年間の破裂率は1%ほどだと言われている。この数字をどう見るかで、手術を希望するか、しないかの決断が分かれるでしょう。

経過観察する場合、高血圧がある人は厳密に治療すること、そして、禁煙は必須です。これらができない人は手術を考えた方が良いでしょう。血圧管理は他の一般的な場合は140/90mmHgが目標だが、この場合は130/80mmHgが目標となります。

もし、筆者に未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、大きさが7mm以上でブレブを持ったものであれば手術を希望します。7mm以下でも、5mm以上で前交通動脈瘤や脳底動脈瘤なら手術でしょう。しかし、手術はコイル塞栓術のみで、クリッピング術は希望しません。コイル塞栓術で処置できない脳動脈瘤であれば、慎重に経過観察することを選ぶでしょう。

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