薬師岳20057月)

 薬師岳にはじめて登ったのは、中央大学附属高校山岳部1年の夏合宿だった。東京から富山まで夜行電車、折立から入山、ダイヤモンドコースを経て、槍ヶ岳を越え、上高地までの1週間の縦走だった。毎年、夏はこのコースをとった。お花畑あり、黒部五郎岳の雪渓、西鎌から槍と変化に富む、今でも、最高の縦走コースだと思う。顧問の山田健三先生は、東京白稜会のメンバーでもあり、その経験からうまれたコース選択なんだろう。もうひとつの理由は、先生の趣味であるつりだった。岩魚の刺身、丸焼きと堪能したのは記憶に残っている。
 それから高校時代に3度、大学山岳部時代2度ほど薬師岳の山頂を踏んだが、それから20数年ぶりに、5度目のピークを踏むことになった。

 今回の山行の目的は、赤木沢遡行だったが、行程の都合上、ついでに薬師山頂をめざすことにした。大阪から未明にマイカーで出発し、朝9時、折立に予定どおりに到着し、太郎小屋をめざした。最初は、森の中の急登が続く、暑く、苦しいところだが、やがて2ピッチも歩くと森林限界に達し、太郎小屋までの尾根道が見通せ、さらに、薬師岳山頂方面までみえ、足元には高山植物が咲くみだれるコースとなる。しかし、みえていながらなかなか着かないのがこのコースのしんどさでもある。しかも、もう日陰もない。景色だけが救いだった。今日中に薬師沢小屋まで下りれるとも思っていたが、沢登り初心者の女性3人を連れだったので太郎小屋までとしていた。やっぱり正解だった。結構時間がかかり、小屋前でビールで乾杯したのはもう日が傾いていた。小屋は、新聞社系の商業ツアーが3つも入っており、ちょう満員だった。百名山の土曜の夜は最悪だ。1つのふとんで2人寝るすし詰状態で寝返りをするのも気をつかった。 翌日は、良く晴れた中を女性3人は空身で、自分は4人分の雨具と水筒などをもって、薬師岳ピストンをかける。「他パーティーからガイドさんですか」という声がかけられたが、女性陣はご機嫌で登っていった。沢ぞいの急登を抜けると、そこは残雪の残るお花畑が広がっていた。4回も登っているのに、あまりその印象がなかったが、薬師平はなかなかいいところだと思った。それから上は、ガラガラとした尾根登り、岩を積み上げたような山頂へと登った。眺望もよく、楽しいハイキングとなった。天気は明らかに下りざかで、雨を心配したが、小屋に戻り、薬師沢小屋をめざして下っていった。そこも、素晴らしいお花畑、やがて森と水流の織りなす変化のあるコースだった。最後の1時間というところで、雨につかまり、雨具をつけて小屋へと急いだ。
 薬師沢小屋は、こじんまりとしていたが、黒部川本流と薬師沢出合のがけ上に立つ、砦のような小屋だった。昨日とは違い、すいている蚕棚で10人くらい寝られる部屋を独占できた。雨もやんだので、きょうは沢を見下ろすことのできるテラスで、自炊パーティーをした。スパゲティーに、シャンパンをあけ、2年越しの赤木沢遡行にむけた前夜祭を楽しんだ。


  赤木沢遡行へ