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GS美神 リターン?

 Report File.0060 「海から来た者 その13」
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<さあ、このサービスで決ってしまうのか。カク選手が行います>

『い、いくだ』

 カクは動作がカチンコチンになっていた。

「気楽にいけ!」

 横島はカクに力を抜くように声を掛けたが後、一点で勝負が付くとあって、力みが出ていた。流石に自分の嫁さんが戻ってくるか、勝負にかかっているだけにそのプレッシャーは凄いようだった。

ダンッ!

 少しばかり甘くはなったが何とか無事にサービスを行った。令子は何としてもサービス権を奪い取らなければならないと本来はナミコの領分であろうが、ウニボールをコントロールできるようにするべくあえて無理をしてでもレシーブした。ナミコ自身も自分にはコントロールできるほどの技量が無いことは分かっていたので令子のサポートに徹していた。

 ナミコによりほぼベストの状態でウニボールがあがった。

「よしっ!!」

バシュッ!!

 令子は気合を入れてスパイクする。コントロールされてはたまらんとカクはすかさず霊波を撹乱させるが令子はそんなもの気にしなかった。狙いはコートの線ぎりぎりである。

「なっ!?」

 横島はウニボールがコートから出るかもしれないと思ったが入ってしまうかもという事でもあると拾うことを決断した。その迷いが遅れとなり、危うく拾い損ねようとしたが超人的な身体能力が威力を発揮し、間に合わせた。

 ただ、ぎりぎりという事もあって拾ったボールはきれいには上がらなかった。

「カクさん!」

『大丈夫、任せるだ!』

 横島の心配する声にカクは答え、多少、危なっかしかったが何とかうまくウニボールをあげた。

「よっしゃ! 決めたるっ!!」

 この一撃がねーちゃんへの道と横島は最後のスパイクを放つべく跳びあがった。

「まずい、非常にまずい。ナミコ、ごめんっ!」

 今この危機を回避する方法はただ一つだけだった。令子は実行に移した。

「えっ?」

 令子は叫んだ瞬間、ナミコの後ろに回り、水着を剥ぎ取った。

ぷるん

 ナミコの胸が零れ落ちるように揺れた。

「「「「「おおっ!?」」」」」

 男の観衆も一斉に声をあげ、巨乳ではないが形の整った美乳に注目した。

 横島もまたその大きすぎる煩悩故にか、目にズームアップでとらえてしまった。

「ぶはっ!」

プシューッ!

スカッ!

 横島は鼻血を勢いよく噴出させバランスを崩した。そのお陰でスパイクのタイミングを外して空振り、更に体勢を崩し、落下した。

「キャーーーッ!!」

 ナミコは何が起こったかようやく理解し、胸を隠して座り込んだ。

ズシャッ!

 横島は頭から落下し、その衝撃で砂が舞った。

ボスッ! ドスッ! ごろごろ…

 それに追い討ちを掛けるようにウニボールが横島は頭に落下し、はねてお尻に刺さり、転がっていった。当然ながら頭と尻から血がぴゅーと噴出した。

<<<『『「「「「……………」」」」』』>>>

シ  ー  ン

 辺りから喧騒が消えた。天使が通り過ぎたとかいうやつである。

”あ、ああぁ! よ、横島さんっ!!”「「よ、横島君!」」「よ、横島さん!」」「「「た、忠夫くんっ!」」」

 あまりの惨劇にキヌや翔子、法子達が慌てて横島に駆け寄っていった。

『み、美神どん、ひ、ひとの奥さんになんて事するだっ!!』

 カクは横島の状態よりも令子の仕打ちの方がショックで詰め寄っていた。

「いや、その…まあ、緊急回避って言うか…」

 令子はカクの鼻息の荒さに押されてしまった。

「あなた…」

 ナミコはナミコで少しだけ、カクの行動に感動していた。

”「「「大丈夫!!」」」”

 倒れて血を流している横島に駆け寄る美少女、美女軍団は声を掛けた。

「ふは、ふはははは」

がばっ!

「「「きゃっ!」」」

 急に笑い出し跳ね起きた横島に近づいた翔子たちは驚いた。

「やってくれましたね。美神さん…」

 さっきまで流血していたんじゃないのかと疑問に思えるほど元気に横島は令子を恨めしく睨んだ。

 思わず令子は目を逸らし口笛を吹いてごまかした。その目を逸らした先にカクがいて慌てて反対側を向くがそっちには未だ解けた水着を押さえつけて涙目で見るナミコが写り空をみた。

「まあ、いいっス」

(((((いいのか!?)))))

 その場のほとんどが思わず突っ込みを入れた。

「ひどい目にはあいましたが、いいものも見れたっスから(丸い果実にさくらんぼか…)」

 でへっと横島は顔を崩した。

「イヤーーッ!」

 横島の言葉にナミコは先ほどの事を思い出し、再び悲鳴をあげた。

『よ、横島どん、それは直ぐに忘れるだーーっ! ナミコはオラのもんだべーーっ!!』

 ガクガクと力強くカクに横島は揺すられた。

「うぉ、やめ、やめーいっ!」

 その行為に横島は講義したが口は災いの元。それは前哨戦であった。

「…協力してあげるわ」「わよ」「わね」「ます」「です」「ですわ」

 そう、災いの本命が舞い降りた。


………しばらくお待ちください………


「ひどいですよ。令子さん」

「ごめんね、でもあそこで決っていたら、やっぱりまずかったでしょ」

 ほほほ、結果オーライよと令子は多少いいわけをした。

「確かにそうですけど…」

 それでもナミコは涙目で令子を睨んだ。いくら子持ちでも人前に胸に晒されたのは納得いかない。

「まあ、私じゃ無理だったし、もうしないから…ね? この通り!」

 バシッと手を合わせて令子はナミコに謝った。確かに令子の水着では胸をポロリとはいかない。もっともできる水着だとしてもやらないだろうが。結局、その件に関してはナミコが丸め込まれる形になった。

「ふう、ひどい目に会った」

”余計なことを口にするからです”

「いてっ! もう少しやさしくしてー!」

 キヌから横島は所々の傷を少しばかり乱暴に手当てされていた。

(((恐ろしい回復力)))

 横島の制裁を見ていた全ての観衆はいまだ横島の回復力を信じられず首をひねっていた。

「しかし、フラフラするな」

「血の流しすぎですわね」

 氷雅の指摘に横島はそうかもしれないと思った。なんといっても朝から何度も大量に鼻血を噴き、先ほどは流血までしたのだ。血が大分流れたのは確かなのである。

(まずいな…先ほどのみなぎる力が血と一緒に流れ出たんじゃないかと思えるほど力が出ない。これ以上戦いを続けるのは正直厳しいよな)

 流石に超人的な回復力を持っているといっても、増血は難しいようで横島はフラフラと身体を揺らしていた。

「横島君! 気合を入れなさい。勝ったら前より凄い事してあげるわよ!」

 そんな横島を発奮させようと声がかかった。

「あ、あの声は千恵さん? 前より、も、もっと凄い事!?」

ブシュッ!

 何を想像したのか横島は勢いよく鼻血を出してしまった。

『タ、タイムだべ』

 ふらーっと体勢を崩す横島にカクが慌てて支えた。

「あら、逆効果だったかしら?」

 千恵は少し反省した。

「前のより凄いのって?」

 翔子が疑問を口に出した。

「んーと確か、この前は助けてもらったお礼とかで忠夫君にディープなキスをしてヘロヘロにしていたから」

 忍が事細かに女子高生組にに説明した。

「ディ、ディープ・キス、ですか?」

 朝美が驚愕した。

「それより凄いのって…」

 何を想像したのか鏡子はポッと頬を赤く染めてうつむいた。その反応に忍達は初心ねえと思った。もっとも新人の沙希だけは鏡子たちのような反応をしていたのは経験の差であろう。

 タイムがとかれた時、横島は足取りがおぼつかないが、それでも気合だけは十分という妙な状態になっていた。

(まあ、予想以上に横島クンを消耗できたわね)

 千恵による思わぬ結果に令子はほくそえんだ。これで例え横島が煩悩全開で自分を上回っていようとも、全てを活かしきれないだろう。あの状態なら4割近くは無駄になるはず。本当は2割ぐらいと思っていたので非常にらっきであった。

『だ、大丈夫だべか?』

「ふふ、いかなる試練が立ちふさがろうとも、この横島試練に打ち勝ち勝ってみせる!!」

『おおっ!!』

 横島の気合の入れようにカクは感動した。

「全てはもっと凄い事の為にっ!」

ズシャッ!

 最後の一言さえなければ、それなりに決まっていたというのに、その一言にカクはずっこけた。

(確かにオラを助けてくれているのも美女と知合う為だども…)

 あまりにストレートすぎる本音を吐露する横島にカクはある種の呆れと言うか尊敬の念を抱いた。

「お前の方こそ大丈夫か?」

『だ、大丈夫だ…』

 カクは何ともいえぬ気持ちのまま立ち上がり、勝負に臨んだ。


     *


『おい、衛兵長よ!』

 人が踏み込めぬ暗い海の底で声が響き渡った。

『はっ! 大王様。何用でございましょうか?』

 ヒラヒラひれを動かし、呼びつけた者の元にやってきた。その者は人が見れば魚のエイと呼ばれるものの一種であった。

『そちを呼びつけるのは唯一つの理由ではないか』

 駆けつけたエイの衛兵長に言ったのはそのエイよりも何十倍も大きいものだった。これまた人が見ればその姿はイカ…それもダイオウイカと呼ばれる全長10メートルにも達しようという程の大物である。

『カク殿のことでございますな?』

 先ほどの報告に大王はやたらめったら危機感を感じたようだった。そのせいか、一息ついたと思うまもなくし切りに部下を呼んでいた。

『そのとおり。それ以外に何があると?』

 報告が上がってから、何度目というくらいのやり取りが繰り返された。

『確かに。ただ今、カク殿は日射血暴流にて奥方と勝負をされております』

 大王様ももう少し落ち着いてもらわないと自分の身が持たないと顔には出さずに衛兵長は同意した。何度も聞いてくるのでいい加減に頭にもきているが、一応仕えている主の前であるので黙っていた。同僚はこのままじゃまずいと状況を中継できるように撮影スタッフを派遣している。もうまもなくこの苦労から介抱されるだろう。

『そうであろう。して、奴は今どうなっておる』

 まさか、離婚して新しい嫁を迎えようというのか! 大王は違う方向へ想像していた。要するに大王がこうなっているのは大王がお気に入りの娘がカクにモーションをかけた事に端を発する。周りの迷惑では有るが大王には今回の騒動がカクが、その娘に応えての事と考えていたのだ。

『はっ! どうやら、カク殿有利に進んでいるようです』

 撮影スタッフが到着するまでの間に伝令を使って状況を逐一報告していた。そのお陰で試合の無いように大王は機嫌よくなったり悪くなったりと周りの者たちにしてみればいい迷惑であった。

『何だとっ! ならんならんぞっ! あやつを勝たせてはならん!』

 大王は叫んだ。大王は、いや周りの者たちも含めて皆、カクが奥方と離婚をかけて日射血暴流をすると聞いていただけでその実情を知っていたわけではなかった。それ故にカクが離婚したいから日射血暴流をしていると誤った認識をされているのであった。

『しかし、大王様! 日射血暴流は神聖な決闘の儀。邪魔をしてはなりませぬ』

 幾分職務からは逸脱しているかもしれないがやってはいけない事を御諌めするのも部下の勤めと衛兵長は大王をなだめた。

『その通りです。儀式を邪魔すれば天罰が下りましょうぞ!』

 大王を抑えるのに苦労している衛兵長を助けるものが現れた。

『おお、クルマ殿』

 衛兵長はまたとない援軍だと現れた人物を歓迎した。まあ、現れたのはエビ…中でも車えびと呼ばれる種を人間大にした存在だ。

『カク殿は高潔な戦士。その決闘を邪魔しては天罰だけでなく世間にも多くの影響を与えましょう』

 現れたクルマも大王に干渉するデメリットを告げた。この世界には確かに神が存在し、今まで日射血暴流を妨げた場合にはほとんど天罰を喰らっていた。また、日射血暴流は神聖な決闘であるが故に批判が起きるのは確実であった。

『おお、そういえばクルマ殿は一度、勝負をしたのでありましたな』

『そうです。ABボクサーの誇りにかけて戦い合いました。某の力量不足故に敗れてしまいましたが…だからこそ、分かるのです。今回の勝負に手を出してはいけません』

 クルマの脳裏にはその時の戦いの模様が浮かんだのか感慨深げであった。なんとか大王も落ち着き始めたかと思いきや、再燃させるものが現れた。

『臆病者めっ!!』

 重低音で王の間に響き渡った。

『ん!? ぬしは!』

 シャカシャカと音を立てながら現れたのは人間大のカニだった。

『お久しぶりでございます。大王様』

 現れたカニは大王に丁寧に挨拶をした。

『おお! そなたはズワイ族の』

 大王の言葉どおり、そのカニは大きさは桁違いであるがズワイガニと呼ばれる種であった。

『左様、ズゥの息子のズワンでございます』

 ズワンは大王に名乗りをあげると胸を張った。

 そんな大王とズワンのやり取りを衛兵長とクルマは苦りきった顔をした。

<ズワンというと確か某よりも前にカク殿と戦ったという>

 クルマはズワンについては噂でしか聞いた事は無く、ここで初めて顔を合わせた。いきなりの罵声にクルマは気分を害していたが、臆病者と罵られたとしても確かに自分にはそういう面がある事を認めていたので黙った。

<そのとおりです。かなりの死闘であったと伝え聞いております>

<その時に右目を失ったということでしたな>

 試合内容を聞く限り、別にカクはつぶそうと思ってやったわけではない。単純に運が悪かったのだ。

<はい、それ以来、カク殿への復讐の機会を虎視眈々と狙っておったご様子>

 衛兵長のほうはクルマよりもその辺の事情がわかっているようであった。

<!>

 クルマはまさかと思った。ズワイの父であるズゥは足を失おうと片腕を失おうとも己の不甲斐なさからそうなったのだと言い切るぐらいに気持ちの良いオトコであった。

<あのご様子では大王もズワン殿に喜んで手を貸すでしょうな…大王さまのご気性を考えると止める事はでますまい。クルマ殿はいかがなされます>

 長い間つかえて大王の性格を把握している衛兵長は溜息をついた。

<下手に手を出すと話がややこしくなるであろう。しばらくは静観する事にする>

 クルマの言葉に衛兵長はそれがいいでしょうと頷いた。

『では、このズワンめにお任せくだされ』

『うむ、良い報告を待っておるぞ』

 話はクルマ達のヒソヒソ話で言っていた方向に流れ決まった。

『ははっ!(まっておれ、カクよ…己の無力さを知らしめ、ぬしの妻子を目の前で踊り食いしてくれるわ!)』

 脳裏には既に捕らえたカクの子供をどう使ってやるかを思案しながら、ズワンは暗い情念で大王の下を去った。大王もクルマも、まさか、ズワンがそこまで暗い情念に囚われていたとは思いもつかなかった。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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