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GS美神 リターン?

 Report File.0026 「大パニック!女子校に吹き荒れるセクハラの嵐!! その3」
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「兎に角、ごめんなさいね?うちの助手が迷惑かけちゃって。何にせよ女の子に狼藉を働いたんだからお仕置きはしないとね・・・」

 何にせよ度粉園女学院に所属する学生に何か有れば自分の名に傷がつくと令子はそのまま許すつもりは無かった。それなりの措置を横島にしておかなければ今後も同じような事が起きるかもしれないのだ。

「あの、えーと」

 何か言いたげな朝美をそのままに神木刀を拾い、むんずと横島の足首を掴んだ令子は、そのままずるずると更衣室を出て行こうとした。

「あの一応、助けてくれたんでお手柔らかに・・」

 その令子に回復したのか立ち上がった翔子が声をかけた。

「・・考慮するわ」

 そう言って出て行った。

ごちんっ!

 その際、気絶した横島の頭がどこかにぶつかった。全然、考慮していなかった。

「「「・・・」」」

 更衣室に残っていた女子高生たちは無言にでそれを見送った。何人かはこれからたどるであろう横島の悲惨な運命に祈る者もいた。

「「よこしまただお・か(さん)・・」」

「「えっ!?」」

 同時に同じ様な事を言った朝美と翔子は驚いて顔を見合わせた。恥ずかしくなったのか頬を赤らめて令子達が出て行った入口の方を見つめた。

「・・変な奴だったな」

「はい、それにスケベです」

「ああ、体触られまくっちゃったし・・」

「その割に翔子さん、あの女の人に弁護してましたね」

「そういう朝美だって本当は同じ様な事、言いたかったんだろ?」

「まあ、そうですけど・・」

 二人とも横島にセクハラされまくったが妙に許してしまえる気持ちになっていた。それに妙にインパクトの有りすぎる男だったので気になる存在として二人の心に刻み込まれたのである。それは恋心と違うが、今後彼女たちが横島に関わるようなことがあればそれが恋心に変わっても不思議ではないぐらいの好意的な気持ちではあった。

「えっ!?うそ、何であんな事されたのに・・」

「あれのどこをどう見れば好意的に捉えれるんだ?」

「そ、そんな翔子さんが・・・」

「ふーん、あの奥手な朝美がねえ・・」

「・・よこしまただお・・許すまじ・・ですわ」

「ふーん、調べてみる価値・・あるかな」

 女が3人寄れば姦しい・・あんな騒ぎがあったと言うのに今やその気持ちも切り替わったのか、先程の二人の会話が色恋沙汰に感じたのかその場にいた女子高生は騒ぎ始めた。

     *

「ほんっと、不覚だったわ・・あの堅物め・・何とか未然に防げたからいいけど・・全く・・」

 令子が現場に遅れたのにはわけがあった。令子も横島を追いかけたのだが追いつけず途中、度粉園女学院の教師と思われる者に呼び止められ足止めを食ったのであった。その教師にはGSだと言ったが派手な格好をしていたのが仇となり信じてもらえなかったのだ。結果、現場に辿り着いた時には暴走した横島が女子高生を押し倒していた所に出くわしたと言うわけである。

 そんな分けで横島は令子の八つ当たりも含めて自身の所業による制裁を受ける羽目になったのである。令子は工事現場から調達したのであろうロープで横島を簀巻きにした後、林にある一本の木に逆さで吊るした。

「ううーーん、なんかすげーいい思いができたようなできなかったような気がするんだよな・・頭がぼーっとするな・・って、なんだ!?なんで逆さに逆さ吊りになってるんだ!?」

 意識が回復した横島は自分の状態に驚愕した。

「あら、気が付いた?」

 令子は横島に白々しく声をかけた。

「み、美神さん、降ろしてくださいよ。なんで俺、逆さ吊りになってるんすかーっ!」

 横島は状況説明と打開を令子に依頼した。

「あら覚えてないの?更衣室での事・・・」

 逆に令子は横島に問い掛けた。

「更衣室ですか・・?えーと、確か女子高生がピンチだったので飛び蹴りをあのチカン霊に食らわせて、助けたのにチカンに間違われて女子高生達にタコ殴りされて気絶したと思いますけど・・何故に逆さ吊りに!?」

 逆さ吊りにされている横島は懸命に思い出して言うが覚えているのは暴走前までだった。

「・・覚えてないの?」

 令子は事の成り行きを遠くからであるが見ていたのでそう言った。あれを本能でやっていたとなればとんでもない奴だと認識した。

「ま、まさか最近の女子高生と言うのは事故で覗いてしまっただけで、タコ殴りにして逆さ吊りにするのか!?・・いや内の学校の女どもならやるか。しかし、女子高生でもやるというのか!?」

 令子の言葉を切っ掛けに横島は嘆き始めた。

「・・・」

 令子は自分の質問を無視されて青筋を立てた。その間も横島の嘆きは続く。

「くぅーー、神は死んだっ!!」

 横島の嘆きは最高潮に達していた。

どかっ

「ぐへっ!」

 令子は鬱陶しくなり横島を括りつけていた木の幹にぶつけた。

「んな分けないでしょ!!だいたい、あんたは神様なんて信じてないでしょ。だいたい神様はちゃんといるわよ」

「うわ〜〜ゆれるぅ〜〜気持ちわるい〜」

 惰性でそのまま振り子のように横島は揺れていた。折角の令子の言葉だが聞いちゃいなかった。

「・・・しばらくそうしていなさい」

 令子は怒ってそのまま立ち去った。騒ぎが起きる前の目的・・校長に会う為だった。

「うわ〜〜美神さ〜ん〜降ろしてくださ〜い」

 横島は気持ち悪さを耐えて叫んだが令子には無視されてしまった。

「・・・なぜに俺は木に吊るされねばならんのだ!?俺が何をやった!!」

 暴走した時の事を覚えていない横島はこの理不尽な状況に怒りを覚えた。

「くそっ!俺は女子高生を助けに言っただけじゃないか。その時に一寸、下着姿を見てしまっただけで袋叩きに遭うし。それだって事故だろうが!それが重い罪だというのか!?女の子に対する情熱が異常で変質的で不健康だというのか!?女の子へ情熱を向ける事は俺の年頃じゃ当たり前だろ!?なぜじゃーーっ!!」

 相も変わらず木に逆さ吊りで揺れていた中、己の魂からの叫びを上げる横島だった。

「わかる・・わかるぞーー!君の気持ちは!!」

 魂からの慟哭をしていた横島に背後から声を掛ける者が居た。横島は何とか体をひねって反動を作り振り返った。そこには涙を滂沱のごとく流し横島の言葉に共感している校長が居た。

「あ、貴方は・・こ、校長!?・・って、うぷっ」

 横島は驚いた。が先程の運動により左右の振り子の動きだけでなく、回転までが加わっていた。

「そう、わかる。君の魂からの叫びはわしにも深く届いた。それは男として至極当然、自然者ないかね!?若い男が若い女・・女子高生に欲情するのは当然じゃないかね!?」

 校長は今感じている胸のうちを吐露した。

「よ、欲情・・す、すいませんが、限界なんです・・お、降ろして・・」

 横島はグロッキー寸前だった。

「うおぉ!?こ、こりゃいかん。少し待て」

 校長は懐に手を入れた。

「は、早めにお・ねが・い・し・ます・・」

 横島は何気に河の向こうでショートカットの女性が手を振っているような景色を見えていた。はっきり言って限界に近かった。

「きぇーーーっ!」

 校長は一瞬屈んだかと思うと奇声を発し跳躍した。

ザクッ!

 校長の手により光が二閃見えた瞬間、横島を吊るしていたロープが切れた。

「う、うわ!」

 横島は頭から落ちると悲鳴を上げた。が、何かに受け止められた感じがした。横島はぶつかると目を閉じて耐えようとしていたが見開くと校長が足の甲で横島が地面にぶつからないように受け止めていた。なんとも器用な技とでも言うべきものだった。

「すまん、すまん。大丈夫かね?何せ、久々の技を行使したからね。少し腕が鈍くなっていたようだ」

パラパラ

 校長が誤った瞬間、横島を簀巻きにしていたロープが切れた。

「校長、あ、あなたは一体」

 横島は校長の行動に唖然とするしかなかった。

「ふっ、まあ昔に一寸嗜んでたんだよ。黒崎という実家に伝わる技をね・・」

 校長はメガネのブリッジ(左右のレンズをつなぐ部分「山」ともいう)を押し上げ言った。そのときなぜかレンズがキランと光った。

「そ、そうっすか。(なんか黒崎って聞いたことがあるような・・)」

 横島は今までの印象で人畜無害っぽい校長が途端に怪しい人物に見えた。

「さっきの続きだが場所を変えて聞いてくれないかね?」

「わかりました」。聞きましょう」

 横島はどちらにしろ校長には聞かなければならないと思っていたので同意した。

     *

 横島たちは落ち着ける場所として校舎の屋上に足を運んだ。

 それから校長は未成年者の前で悪いねと断りを入れてタバコを燻らせ屋上の手すりに腕を乗せ遠い景色を見ながら語った。

「わしはね・・平の教員だった時に理事長の娘、要するに今の理事長に見初められ彼女と結婚して、今の地位を手に入れたのだよ」

「はあ・・」

「ま、入り婿みたいなもんじゃな。逆玉といってもいいか・・」

 自分の人生を振り返りながら横島に語っているのか目が遠かった。

「そうっすか。逆玉っすか・・いいっすね(俺も美神さんをGETできたら逆玉なんだろうか!?)」

 逆玉という言葉に横島は少し妄想が入ったが校長は気にせず続けた。

「家内のことはわしなりに愛しとった。別に家内との結婚に不満はなかったんだが・・・わしも当時は若かった!!わかるか!!」

「うわわ」

 横島は急に校長にドアップで顔を迫られ仰け反った。

「教師といえども女子高にいりゃー目じりの一つも下がるこたーあるじゃろーが!!」

 校長は拳を握りしめ力説した。

「おっしゃる通りっす!!あのブルマーから伸びるあのふとももがたまりません。スパッツなんぞ邪道です!!」

 横島は度粉園女学院に来た時に目に映った体育の授業風景を思い出して思わず涎をたらしそうになった。

「うむ、周りには十代の少女達・・男としてついちちやしりやふとももに目が行くのは不可抗力ではないか!!」

 校長は悔し涙なのかとにかく涙を流しながら言った。

「その通りっす!」

 横島はここまではっきりと言い切る校長に感動して涙まで流していた。

「だが家内は嫉妬深くてな・・それすらも許してくれなかったのだ!!そう、少しでもそんな事があったとばれた時には・・」

 そう言って校長はドラマにでも出てきそうな事を説明した。

「・・または「わたしとゆーものがありながらっ!」そう言って家内は泣き伏し、わしが「つい、目がいっちゃっただけだってば!!」といいわけすれば「浮気者!!ワイセツ教師!!お父様に言いつけてあんたなんかクビよっ!!」って泣き伏すしな・・もう何もいえんかった・・」

 懐かしそうに校長は言った。

「何か聞いているだけで気の毒ちゅうか・・」

 横島は多分一途ではいられないだろう、自分の性格を鑑みて嫉妬深い女だけは止めておこうと心に誓った。

「家内はまあ、昔は結構、美人だったんだ。今は不精がたたってアレだがね・・」

 校長は懐古に走ったのかタバコの煙を吐きその煙の消え行く様を見詰めた。

「あの理事長が美人・・と、時は残酷や・・(じゃあ、美神さん・・美神さんもか?あの人今でも結構不精だからな・・)」

 横島は本人に知られればどうなるかわからないおそろい想像をした。普段からよく令子を見ていたので面倒くさがりな所があるとか食事もなんら配慮せずとっている事。肉系が多いなどから発想された。横綱級美神令子・・あんまり考えたくなかった。

「まあ、そんな家内を悲しませたくなかったからそれ以来、わしは欲望を抑えるべく夜な夜な雑木林の枯れ井戸で「ちちしりふとももーっ!ちちーっ!しりーっ!ふとももーっ!」と叫んだものだ」

「おいおい、おっさん、おっさん」

 横島は校長の余りの発想に呆れて突っ込んだ。

「だがなこれを毎晩毎晩、雨の日も風の日も休まず繰り返した結果、わしはついに女子高生になーんも感じんよーうになったのだっ!!」

 校長は拳をグッと握り叫んだ。

ずるっ!

 横島は余りな事にずっこけた。

「ふっ、空しい思い出じゃよ」

 校長はそう言って頭を垂れた。その時、木枯らしが吹きメガネがキラッと光った。それは校長の涙にも見えた。

「そりゃ、空しいわい」

 横島はむくりと立ち上がり、敬語も忘れて言った。余りの哀愁ある姿に自分だけはこうなるまいと誓った。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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