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GS美神 リターン?

 Report File.0016 「可愛い彼女はゆうれい!? その6」
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 さて、横島達3人が猛吹雪の中、鬼ごっこを敢行していた時、令子はというと・・

「ああ、気持ちいい。極楽よねーー。こんどはあっちの温泉に入ろうかしら?」

 思いっきり各種温泉につかり、疲れを癒し楽しんでいた。

カコン

     *

”待ってくださーーいっ!!よっこしまっサーーン!!”

 逃走を続ける横島に必死に追いつこうとワンダーホーゲルは声を懸命にあげつつひた走った。

「嫌だ!男は嫌だ!!死んでてもおキヌちゃんの方が10万倍はいいわーーっ!」

 実際、暖め合うといっても横島は生者であり、死者たるキヌに触れるとぬくもりを奪われるほど冷たい。それでもこの環境よりはましだったのだ。

”ええー、本当ですか!?あたし、嬉しいです。”

 猛吹雪の中、未だ3人による鬼ごっこは終わる気配を見せていなかった。が、それは唐突に終わりを見せた。

「うわっ!!」

”きゃっ!”

 逃走を続けていた横島が視界の悪い吹雪の中で何かにぶつかったのである。ただ、ぶつかった時、木とか岩のような感触はしなかった。

「いてて、大丈夫?おキヌちゃん!?」

”はい、あたしは大丈夫です”

 横島はキヌの無事を確認してホッとする。もっとも、幽霊であるキヌに物理的な衝撃による被害が起きよう筈はないのだがそれでも心配するのは横島の性格なのだろうか。

「たく、何なん・・・!!」

 横島は悪態を吐いてぶつかったのは何か確認しようとして凍りついた。

”横島さん?・・ひっ!!”

 そんな様子の横島に不審を抱いて横島と同じ方向に目を向けるとキヌも凍りついた。

「な、な、ななな」

 思わず横島はキヌを左の小脇に抱え、右人差し指を向けてあとずさった。状況が良く分からなくなっていた。

”ええぇー、なんでです”

 小脇に抱えられたキヌも状況が分からなくなって慌てていた。

”横島サーンっ!やっと捕まえましたよっ!”

 そんな中、更なる状況悪化の元がやって来た。横島を追いかけてきていたワンダーホーゲルである。そのワンダーホーゲルがぐわしっと横島をホールドした。

「あっ、こら!やめんか、今はそんな場合やないんや!それよりあれを見ろ!!」

 しがみついたワンダーホーゲルを振り払おうと横島はもがき、何とかワンダーホーゲルに自分の指している方に注意を向けさせた。

”何を言って・・・お、俺っスか!?”

 ワンダーホーゲルが驚いたのも無理は無かった。そこには雪が所々にこびりついているものの自分が立っていたのだ。

「そうだよ、何でこんな所にお前の死体があるんだよ!!」

 横島は予想し得なかった事態にどないせぇちゅうんじゃ!と頭を抱えた。

”俺も知りませんよ!大体、俺が死んだのはこんな所じゃなかったはずです”

「じゃあ、なんでここにあるんだよ」

 自分の死体に驚いたワンダーホーゲルを振り払う事に成功した横島はワンダーホーゲルに問い詰めた。

”・・あのー、何か変じゃないですか?”

 無益な言い争いに終始している二人にキヌは死体に注意するように声をかけた。

”はっ?何でありますか?”

「ん、別に何にも無いんじゃないか?おキヌちゃん」

 言い争いを止めて死体の方を見るが特に不審な所はない。

ズズズ

「・・・なあ、何か悪い予感がするんだが・・」

”奇遇ですね、俺も今そう思いました”

”や、やっぱり、変ですよね・・死体が動いているなんて・・”

 3人は顔を見合わせて脂汗を掻いた。

ズズズ

「そうだよな、死体が動くわけがないよな」

”おれがここに居るんスよ?俺の死体が動くはずが・・・”

 ワンダーホーゲルの声が途切れた。死体が動き始めたからだ。

”・・動いてますね・・”

 キヌは相変わらず横島に小脇に抱えられたままポツリと言った。

”きゃ!”

 その瞬間、横島は再びキヌを両手で抱きかかえるように持ち替えると死体から離れた。

”どうしたんですか?横島サン!?”

 突然の横島の行動に戸惑いつつも追従するワンダーホーゲル。

ズズズ、ズズズ、ズズズ

 横島達が死体から離れた途端、動きが素早くなり始め追いかけてきた。

「どわぁーー!何で追いかけてくるんや!」

 動く死体に追いかけられ始めた横島はペースを速めた。

”知りませんよ!”

 そんな横島に併走しつつワンダーホーゲルが合いの手をうった。

「お前の体だろうが!?」

 必死に逃走をし始める横島だったが前ほどには勢い良く進むことはできなかった。元気そうに見えても体力は消耗していたのである。

”やっぱりそうなんでしょうか?”

 キヌは自分の感じた疑問を横島に投げかけた。

「やっぱりそうなんか?」

 キヌの問いかけに横島が今こうして逃走する事になった理由を思い出した・・そう。

『男じゃーっ!!』

 横島が思い浮かべたのとタイミング良く後ろから追いかけてくる死体から声が猛吹雪の中とは思えない程、高らかに聞こえてきた。横島は気付いていないがこれは声に霊波が伴っていたからこそ起きた現象であった。

「やっぱりそうなんかーーっ!!男は嫌じゃーー!!」

 前にもまして懸命に逃走しようと体を動かした。ちょっぴりだが前に進むペースが増した。

”俺は友情や連帯が好きなだけで男が好きなわけじゃ無いっス”

『男・・精気を得るにはもってこいじゃ!!』

 ワンダーホーゲルが言い訳をするがそれを打ち消すようにワンダーホーゲルの死体が言い放った。

「やっぱ、そうじゃないか!?俺はかわいいねーちゃんがええんやーー!」

 横島は心からの・・魂からの叫びを行い、意思の全てを逃走に投入した。第二次暴走鬼ごっこの開始であった。

     *

 延々と続く鬼ごっこに流石の横島もバテ始めていたそんな中、猛吹雪は止んでいるが状況は変わっていない。しいて言うなら進むのが楽になったぐらいだろうか。

「やっぱ・・嫌な予感がしたんだよな・・。お前の死体なんだから何とかしろよ・・」

 ゼェハ、ゼェハ息を切らせながら何とか口にする横島。今にも倒れそうな感じだった。

”そうは言っても知りませんよ。俺は”

 そう返事したワンダーホーゲルは別段疲れた様子は無い。霊だから当然なのだ。

”あの気のせいか差が縮まってきているような気がするんですけど・・”

 この3人の中で最も余裕のあるキヌが後方を確認して警告した。横島のペースが落ちてきているのだ当然だろう。

”何か違うんっスよね・・俺の死体ですけど”

 違和感を感じていたワンダーホーゲルが意見を言った。死んでしまったが為、死体・・肉体との繋がりを失ってはいるが何かしっくりこない。

「んなの・・分かっているよ・・最初から・・お前の死体に・・別の何かが・・捕り憑いている・・みたいだな・・」

 横島は何だかんだ言ってもその死体が何者かによって操られているとは感じていたのである。相変わらずゼェハ、ゼェハと息を切らしている。

”分かっていたんなら、早く言ってください。俺がどんだけ悩んだか・・”

「言ったからって・・何も・・状況は・・変わらんだろ・・」

 息も絶え絶えに歩を進める横島。流石に限界に近づいたようだ。

”横島さん、何か来ます!!”

 死体を注意していたキヌが警告した。

「何っ!?」

 キヌの言葉を聞いた瞬間、横島は振り向きもせずに横に飛びのいた。その瞬間、今までいた場所に何かが突き刺さった。

「な、何だっ!?」

 突き刺さった何かを確認しようとする。それは緑色の蔓みたいなものだった。

”蔓?”

 それを目で追っていくとそれは死体から伸びていた。死体の体の彼方此方から蔓が生え出していた。

””「ひええぇーー!!」””

 3人はそれを見て恐怖した。刺さっていた蔓も死体の方に巻き取られていく。それを見た横島は残る力を振り絞り、全速力で逃げ出した。また、横島の後ろの方に蔓が突き刺さる。

「うおぉーー!洒落にならんっ!!串刺しになるんは真っ平じゃー!!」

”おお、俺の体がーーーっ!!”

 二人はそれぞれ泣き叫びながら死体から伸びる蔓による攻撃から逃れるべく懸命に走った。

「くそ、何とか美神さんのいる旅館までたどり着かねば」

 命がかかっているからか先程までの疲弊をものともせずにペースを急上昇させる横島であった。

”俺の体ーーっ!!”

「ねーちゃんといいことするまでわーーーっ!!」

”いやん、また来るーー!!”

『生者じゃーっ!男じゃーっ!』

 鬼ごっこは命がけの逃走に変わっていた。

     *

カコン

「あーやっぱりこの露天風呂いいわね。いー気持ち。飲み放題に食べ放題。それに温泉に入り放題かー!今回の仕事はギャラが安いけどたまにはいいわね。こうして骨休みするのも・・こうしていると人間の醜い欲望や争いがちっぽけに思えるわ・・」

 令子は横島等が苦労しているなんぞ露知らず、あれから温泉に入って休憩してご飯をお腹一杯食べて寛いで、今、また温泉に髪を結い上げてつかりながら一杯やっている所だった。横島が知ったら血の涙を流して抗議するくらいに。

「結構、時間が経ったけど横島クン、美味くやってるかしら」

 お酒が原因かつかっている温泉も手伝ってか令子の頬はほんのりと赤みがさし、なんともいえぬ色っぽさをかもし出していた。

「まあ、大丈夫か、悪運だけは強そうだし」

 令子はそう言った後、うーんと言いながら伸びをした。

うおぉーー!!ねーーちゃーーーーん!!

きゃあーーーーっ!!

何でだーっ!!

おとこーーーっ!!

 思いっきり寛いでいる令子の耳にかすかだが声が聞こえた。それは段段近づいてくるようだった。

「・・・・・嫌な予感・・」

バキャン!!ドキャ!!バキッ!!

 令子が感じたとおりその瞬間、露天風呂の囲いの面の一つが破壊され何かが飛び込んできた。

「おおーーーっ!!裸のねーーちゃーーん!!俺んだーー!!」

”きゃあ”

 飛び込んできた何か・・横島は錯乱しているのか分からないが信じられない滑空の果てに令子めがけて飛び掛かっていた。
その時、キヌは横島の手から離れてしまい温泉に落ちた。

 令子は冷静に手元にあったタオルで体を片手で隠して(当然ながら全部を隠すことはできていない)もう片手でお酒の入ったお銚子を持つとそれを横島にぶつけ迎撃した。

「誰がお前のもんじゃ!!」

「ぶべっ!!」

 迎撃は見事に成功し令子の手前に横島は沈んだ。

「もう、何なのよ」

”横島さん、落とすなんて、ひどい”

 霊なのでずぶ濡れにはならなかったキヌが落ちていた温泉から浮かび上がった。

”おーい、おいおい。おーい、おいおい。俺の。俺の死体がーーっ!!”

 そのキヌのそばには涙を滂沱のごとく流しそれを腕で拭っているワンダーホーゲルがいた。横島は未だ浮かび上がってこない。

「で、いったい何があったって言うの?」

 そんな様子の二人に令子は事情を聞きだそうとした。

”あれ、美神さん!?じゃあ、ここは旅館?”

”俺は友情や連帯を実感したいだけなのに・・おーい、おいおい”

 だが、二人は状況が急に変わって令子の質問が飲み込めていなかった。

「だーかーら、何でこんな形で戻ってきたの!?」

 少しイラついた令子が声を荒げて言った。

”え、えーとですね。追いかけられたんです。死体に”

「死体?」

”はい、ワンダーホーゲルさんの死体に”

ザバーーッ!

「!」

 令子は危険を感じて跳躍し露天風呂から脱出した。普通では考えられない跳躍力である。霊能力者は霊力を体中に巡らせる事で飛躍的に身体能力をあげる事ができるのだ。さっきまでいた場所に蔓のようなものが叩きつけられた。

バシャッ!!

 それによって水しぶきがあがった。その高さからまともに喰らえば只ではすまないだろう威力を感じた。

「な、何ナノ?」

 令子は呆然と露天風呂のほうを見て呟いた。そこにはワンダーホーゲルの死体が令子の方を向いて佇んでいた。ただし、体の彼方此方に蔓が生えてそれがわさわさと蠢いていた。

”そうなんです。ワンダーホーゲルさんの死体に蔓が生えていてそれで私たち攻撃されて命からがらに逃げてきたんです”

 令子と同じように避難していたキヌが言った。

「・・・!こいつは妖怪の類ね! おキヌちゃん悪いけど脱衣所にある浴衣と神通棍があるから持ってきてくれない?」

 令子は妖の気を感じて油断無く身構えた。何にせよ、令子の除霊スタイルは道具を使ってのものであり、目の前の相手は素手では倒せないのは分かりきっていた。

”はい!”

 キヌは状況が切迫しているのを感じて急いで脱衣所へ向かった。

ザバッ!

「!」

 令子は一瞬、何かが露天風呂から浮かび上がった方向に目を向けた。

「けほっ、けほっ、一体何だったんだ!?」

 そこには令子によって撃墜された横島が居た。

「! 横島クンっ!」

 横島に対して植物の妖怪が蔓で攻撃しようとしているのが見えた令子が叫んだ。

「え? うわーーっ!!」

 その叫びに横島も攻撃されようとしたのが見えたのか回避しようとした。が、少し間に合わず左足に蔓が巻きついた。横島はその蔓に振り回され令子の方向に投げ飛ばされた。

「なっ!」

 蔓一本でかなりの怪力を発揮するのを見た美神は驚きながらも、飛んでくる横島を受け止めようなど一欠けらも考えず回避した。

ドベシャ!

「ぐっ!」

 横島はあえなく床に叩きつけられた。

(うおぉ・・み、見えた)

 本来なら痛みにより気を失ってもいいはずだが美神のタオル一枚で隠していた肢体を目撃した事が痛覚を無視できる程の愉悦を生み出したのか気絶などしなかった。

『ほう、やるようじゃな。しかし、やっと自由を手に入れることができそうだ』

 その声はワンダーホーゲルの死体からした。横島が聞いたワンダーホーゲルの死体の口から発した声ではなく女の声であった。

 その声の方向を令子は油断無く見据えた。横島も鼻を抑えながら立ち上がる。視線はどっちかって言うと令子の隠せていないお尻を見ていた。その為か興奮して鼻血がでたのだ。

 普段ならその状況であれば令子も見られていることに気付いたであろうが目の前の妖気に敵へ集中していたので気付かなかった。うらやましい、いや運のいい男である。その横島はというと

(く〜〜っ! えがった。えがったーー! この年までのうのうと生きてきたが、こんなおいしい思いをしたのは初めてだーー! 眼福、眼福! 今日を俺の野望初達成として、忠夫君眼福記念日としよう)

 と興奮冷めやらずで鼻血が止まる気配は無く、思いっきり令子の裸の後姿を堪能し、訳がわからぬ思考と共に悦に入っていた。

 かくんとワンダーホーゲルの上体が項垂れ、背中が盛り上がり始めた。それが臨界まで来ると背中が裂けそこから何かが出てきた。いや、植物の苗のようなものが生えてきたと言うのが正しいのか。もっとも茎の部分に女性の上半身がくっついた形をしており髪の代わりに葉っぱが生えていた。顔は一応、人と同じで目のきついタイプだ。

『やっと活動しにくい所から抜け出すことができた。動けなくなり死ぬかもしれなかった賭けにわらわは勝ったのじゃ。男を見つけて逃げられた時はまずいと思うたが、わらわが活動するには最適な温度の場所にして、力の補給にはうってつけの霊泉に辿り着く事ができるとは運がよい』

「何モノよ!?」

「くっ、植物の癖に色っぽいじゃないかっ!!」

 横島は妖怪の胸を見て叫んだ。

バキッ!!バキッ!!

「ぶぉ!ぐっ!」

 横島の植物妖怪に対する言葉に令子は近くにあった木の洗面器を横島の顔面に投げつけた。それは見事に命中した。それだけでなく横島の後頭部にも木の洗面器がぶつけられていた。

”横島さんのバカ!!”

 後頭部のはキヌだったらしい。

『・・わらわのことかえ? わらわは死津喪の裔よ』

 横島の台詞に一瞬、あっけに取られたが無視することにしたようだ。そうして妖怪は名乗った。

「死津喪?」

 聞きなれないが何か気に掛かると令子は感じた。

『死に逝くそなたらにはあまり関係なかろう!』

 死津喪はそう宣言すると実行すべく令子達に向けて蔓で攻撃した。それぞれがその攻撃から身を守るべく回避を試みた。一部それだけじゃないものも居たが。

「くっ!」

 予想以上に速い速度で繰り出される蔓に避けれないと判断した令子は手に持つタオルに霊波を纏わせてそれで蔓を巻き込み方向をそらした。

”きゃ!”

 迫ってくる蔓にキヌは体を浮かす事で攻撃範囲から辛くも脱出した。死津喪から一番、遠かったのも幸いしたのだろう。

”ひぇ”

 ワンダーホーゲルは紙一重で何とか避けた。死津喪が現れた時点で逃げを選択していたのが理由であった。ワンダーホーゲルはその後なんとか攻撃範囲外に脱出した。

「うぉと! おおぅ!!てぇっ!」

 横島は先程までの疲労も煩悩により回復したのか何のその、とかなりの速度で繰り出された蔓の攻撃も難なく避ける事が出来た。が足を滑らせて勢い良く頭を打ったのである。

ドサッ!

「!横島クン!!」

”きゃあ!!横島さんっ!!”

 横島は倒れ伏した。頭を打ったことにより、負傷したのか血溜りができつつあった。

(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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