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GS美神 リターン?

 Report File.0015 「可愛い彼女はゆうれい!? その5」
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ビョオオオオオオーーーーッ!!

ビュルルーーー!!

 辺りは猛吹雪で殆ど見えなかった。

「な、何でじゃー、今は春じゃないかー!!何で吹雪やねん!!」

 横島は心の奥からの叫びをあげていた。その肩にはキヌが横島から離れないようにしがみ憑いていた。ワンダーホーゲルはというとご機嫌に山に関する歌を順繰りに歌いつつ先頭を進んでいた。横島は余りの寒さに体中が冷え込んでいた。

”仕方ないっすよ、山の天気は変わり易いっスから”

 ワンダーホーゲルが楽しそうに言った。心底今の状況を楽しんでいるようだった。

「これが山の天気云々のレベルかーーーっ!!」

 この状況を楽しんでいる変態と一緒にすんなと横島は叫んだ。

”まあまあ、落ち着きましょうよ。横島さん”

 横島の肩にしがみ憑いているキヌが横島を宥めた。

”そうっス!今更じたばたしても状況は変わらないっス!”

またまた、ワンダーホーゲルはお気楽そうに言った。

「アホかーっ!お前等死んでるから平気でそう言えるんじゃあ!こっちは生きてるから滅茶苦茶寒いんじゃーーっ!」

 幽霊に慰められても全然嬉しくない状況だった。何といっても令子にはろくな装備を持たされずに雪山を登らされる羽目に陥ったのだ。今だって格好は雪山に登る様な物ではなく何時もの普段着であるGジャンにGパンそれに登山靴とマフラーに手袋、それに使い捨てカイロが幾つかである。はっきりいってこの状況では凍死してもおかしくなかった。

”そんな事言わないで下さいよ。もうすぐっスから”

 ワンダーホーゲルも流石に横島の様子に何とか励まそうとした。

”・・横島さん・・”

 キヌは生者としての感覚は遠き日のことで、忘れているため何と言ったらいいのか分からず悲しい表情をした。

「もうすぐってどれ位だよ・・まだ先なのか?」

 余り期待せずに横島は聞いた。

「あと2時間ぐらいであります」

「畜生!!やっぱり、引き受けるんじゃなかった。これじゃ、美神さんに背中流してもらうだけじゃ割に合わんわーーっ!!」

 ワンダーホーゲルの答えに一瞬気が遠くなりかけた横島は頭を振り、半べそを掻きながらこんなんやってられるか、と視界の開けぬ猛吹雪となっている空に向かって叫んだ。

”・・横島さん、分かりました!あたしも背中流してあげます!!”

 微妙に頬を赤らめたキヌが言った。

「くっ、後2時間・・ド畜生ーーー!!おキヌちゃんの為だーー!!」

 叫びながらも再び前進し始めた。何だかんだ言ってもキヌは幽霊でも美少女である。そんな女の子に背中を流してもらえると言われ、横島は萎えかけた気力がまた高まるのを感じた。それだけでなく煩悩に刺激が与えられた事によってか体内温度が隅々まで上昇し、凍死にならずに済みそうであった。つくづく非常識な男である。

”横島サン、ファイトー!!”

「いっぱーつ!!」

 ワンダーホーゲルの掛け声に乗るぐらいにテンションまでもハイにまでもっていったみたいであった。

「しかし、この天気じゃ目的地についても捜せる状況じゃないぞ。俺は死にたないんや!!」

 何時まで経っても収まりそうに無いこの猛吹雪に横島はワンダーホーゲルに聞いた。

「この程度ならビバークしてやり過ごせば大丈夫っスよ!心配ないっス!!」

 ワンダーホーゲルは笑顔で答える。

「遭難したお前に言われても安心できんわーー!!ほんまに収まるのか!?」

 それももっともだと言える様なことを横島は叫んだ。

”でも、あたしこの辺り何時も吹雪だったような気がするんですけど・・”

 キヌは過去のこの辺りの事を思い出しながら言った。

「これでは、本当に死んでしまうかも・・死の予感・・」

 横島はキヌの言葉に嫌な予感を感じて身震いした。

     *

「ふふ、ふっふ、ふーん。さーて、温泉温泉。極楽温泉」

 浴衣に着替えてご機嫌にゲタをカラカラコロンと鳴らしながら令子は露天風呂に向かっていた。

ブツッ

「!!・・・ゲタのハナオが・・・不吉ね」

 令子は霊感で何かを感じた。

「まあ、それはそれとしてっと」

 ぽいっとハナオが切れたゲタをぽいっと後方に投げ捨て片足でぴょんぴょんとルンルン気分で露天風呂へ向かった。何故ならその予感は自分には関係ないと感じたからである。薄情な女だった。

     *

ビョオオオオオオーーーーッ!!

 相変わらずの吹雪であった。とりあえずこのままでは横島はまずいとビバークした。

「・・流石にこれはきつい・・寒いぞ・・それに暗い」

 流石に横島でもハイ・テンションを維持し続けるのは無理だった。今は持ってきた装備に入っている毛布に包まって体温が下がるのを防ごうとしていた。

”コーヒーできたっスよ”

 ワンダーホーゲルは横島の為にコーヒーを沸かして淹れてやった。

「ありがとよ。くっ、あったけえや」

 手渡されたコーヒーの温かさに横島は感動した。

”横島サン、俺、嬉しいっスよ!”

 ワンダーホーゲルは余ったコーヒーを保温できる水筒に入れながら言った。

「・・何がだよ?」

 その言葉に横島は不審そうな目で見た。

”死んだ後もこうしてもう一度男同士で山の夜を過ごせるなんて・・俺、凄く嬉しいっス!!”

 ワンダーホーゲルは少しだけ横島ににじり寄った。

”あのーあたしも一応いるんですけど・・”

 キヌがワンダーホーゲルの言葉に自分もいるのだがと主張した。相変わらず横島の肩にしがみ憑いていた。

「ちょ、一寸待て!!」

 だが、そんなキヌの自己主張も横島の耳には届いていない。ワンダーホーゲルの言葉に何か危険な香りを感じたからだ。そしてそれは態度に出た。即ち、ワンダーホーゲルがにじり寄った分だけ遠ざかったのである。

”ご、誤解せんで下さい!!俺が言っているのは男同士の友情とゆーか連帯感とゆーか・・そういう意味っスよ!”

 横島の態度にワンダーホーゲルは慌てて言いつくろった。

「お前、ま、まさか・・・」

 横島はゾクッと身に危険を感じた。

”それは誤解っス!!ただ、俺は男同士の親睦を深めたいだけっス!!”

 加速される横島の自分への不信感を何とか拭おうとしたワンダーホーゲル。

ヒュウウーーー、バサバサバサ

「・・・・・」

 だがそれは横島の沈黙からも分かるように失敗した。

”寒く無いっスか、横島サンッ!!”

 ワンダーホーゲルは我慢できないといった感じで再びにじり寄った。

「ひーーっ!!嘘だー!!大体そんなんはお断りじゃー!俺は若いねえちゃんの方がいいんや!」

 横島は先程感じた悪寒は気のせいじゃないと確信し、心の内の思いを叫んで肩にしがみ憑いていたキヌに抱きついた。

”きゃっ!!”

 突然の横島の行動にキヌは悲鳴を上げた。

”なして、そんな事いうんでありますか!!男同士の友情を深めましょうよ!!”

 そんな横島を見てつれないとワンダーホーゲルは訴えた。

「嫌だーー!!そんなんするより、ねえちゃんの方がいいんやー!」

 そう言って殆ど錯乱気味に抱きついたキヌの決して豊かとはいえないが女性である事を主張し始めている胸に顔をこすりつけた。

”きゃあーーっ!!きゃあっ!!きゃあーっ!!ダメッ!!横島さん、正気に返って!!”

 当然ながらそんな事をされたキヌはパニックに陥って横島の頭をポカポカと叩いたが横島の異常なまでの霊力の高まりからか殆ど効果が無かった。

「これや、これなんや、あーやわらかいなーっ!気持ちいーなーっ!」

 横島の行為は次第にエスカレートし始め鼻息荒く、あちこち触り始めた。

”ダメですってば・・いやん・・ですからそこは・・ダメーーーッ!!”

 キヌはというと横島の霊能によるものか押しのける事もできず僅かな抵抗をするのみであった。

「俺が欲しかったんはこれなんやーっ!!」

 横島はそう叫びつつ、キヌを押し倒した。

”きゃっ!!”

”酷いっスよ!!横島サン!!こういう時はそうじゃないでしょ!!”

 ワンダーホーゲルは滂沱のごとく涙を流し、目をごしごしと腕で拭った。

「アホかーっ!!こういう時やからこそやないか。男と女どっち取るかいうたら迷わず女じゃーー!!」

 横島はキヌを押し倒した状態のままワンダーホーゲルに反論した。

”・・・あぅ”

 今やキヌは横島に両手を抑えられ完全にホールドされた状態にあった。何時まで続くのか暴走状態・・・

”そんな事、言わずに肩を寄せ合ってあっためあって友情と青春と人生を・・・”

「やかましいっ!!冗談じゃねえーっ!!男より女の方がいいんじゃー!!」

”友情っスよーーっ!青春っスよーーっ!”

「んな気持ち悪い友情や青春なんかいるかーーっ!!他所でやれ!!俺を巻き込むな」

 横島とワンダーホーゲルの言い争いは、平行線を辿り果てしなく続く。

”ああ、横島さんだったらいいかな。でもこれってお嫁に貰ってくれるって言うことかな”

 キヌは二人の言い争いの中、考えられる余裕ができたのかパニックも収まり、色々考えていた。

「このまま、こんな所に居れるかっ!!ここから出て行ってやる!!」

 横島はそうワンダーホーゲルに告げると押し倒していたキヌをひょいっと小脇に抱えて、テントの中を飛び出し、猛吹雪の中へ出た。幸いにも激情の為か霊能力を無意識に発揮して体内温度を上昇させ厳しい寒さに対処していた。

”このままだと死ぬっスよっ!!戻ってくださあいっ!!”

 ワンダーホーゲルは出て行った横島を無謀だと言わんばかりに連れ戻すために声を掛けながら追いかけ始めた。

「嫌だ!男は嫌だ!!男なら死んだ方がマシだ!!でも死ぬのはいやだっ!!」

 横島はワンダーホーゲルが追いかけて来始めたのを見て全力で逃げ始めた。

”でも、あたし幽霊だから。子供産めないし、それでも良いのかな・・”

 小脇に抱えられたキヌは実際にはパニックから回復しておらずどちらかというと現実逃避している感じだった。

「嫌だっ!!俺は死なんぞーーっ!!生き延びてやーわらかくてかーいいねーちゃんとあっためあうんだっ!!」

 切迫した状況に横島はキヌを両手で抱きかかえるよう(所謂お姫様抱っこ)に持ち替えて更なる逃走を開始する。

”そんなー、横島さんってば積極的、キヌは覚悟を決めました。何時でもきてください”

 キヌは状況を認識しているのかいないのか分からない発言をした。

「ああっ!!ねーちゃん」

 横島はキヌの言葉が猛吹雪のせいか至近距離からだというのに耳に入らなかったようで逃走を続けていた。もし、耳に入っていたなら、猛吹雪の中で敢行する勇者となっていたかもしれない。(何をとは突っ込まないで頂きたい)

”いつでもいいですよ、横島さん、あたしと暖め合いましょう”

 もう既に横島もキヌも暴走状態に突入していた。

”横島サーーン!!”

 そして、ワンダーホーゲルも・・・

「わっ!追いついて来よった!!」

”男っスよー!!友情っスよー!!これっス!!これなんスよ!!自分はこれが欲しかったんスよ!!”

「いやじゃー!!」

”どうしたんですか、横島さん?あたしは何時でもいいですよー”

「ねーちゃーん!!」

”横島サーーン!!”

”そんな、横島さん、恥ずかしがっているんですか?さっきまであんなに積極的だったのに・・”

 猛吹雪の中、3人の暴走機関車は突っ走っていた。


 横島達の明日はどっちだ?


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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