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END OF EVANGERION AFTER
Second Stage

NERV統合政府設立の経緯
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 2016年、人類は”セカンドインパクト”に次いで”サードインパクト”を体験した。それにより、人口の約2割を失う事になってしまった。”サードインパクト”直後は地球全域で混乱が生じたがそこは体制を整え直したNERVがMAGIを駆使して、NERVに都合のよい情報を統制し、使徒との戦い及び”サードインパクト”の真相を発表した。後に使徒との戦いは”使徒戦役”、”サードインパクト”については”セカンドインパクト”とは違う現象であり、ゼーレという組織が表面化、力を失った為に経済の世界的混乱が発生した為”ゼーレ・ショック”と呼ばれた。

 NERVはそれを利用し、これまで今までゼーレに押さえ付けられていた反抗勢力や彼方此方の国、組織の中枢に食い込んで頭を抑えていたゼーレの存在と目的が明らかになることで寝返った勢力を纏め上げ、NERV統合軍としてゼーレに与する勢力の一掃を図った。後に”統合戦争”といわれる戦いの幕開けであった。

 両者まず、勢力の確保に奔走した。NERV統合軍としてまず地盤固めとして本部が存在する日本を掌握することであった。最もこれについては殊の外順調に行うことができた。というのも日本はゼーレに乗せられ戦略自衛隊によりNERV本部を攻めた為、NERVの最後の敵、”第18使徒リリン”即ち人間の侵攻を止める事ができずその結果、”サードインパクト”が起きた事実があったからである。日本は実際にはNERVが”サードインパクト”を起こしたのだと主張し反撃しようとした。確かにNERV上層部でも別の”サードインパクト”を起こすことが計画され実際に実行されたのであるが記録上に残っているのはゼーレからの刺客、量産型EVANGELIONが起こしたとしか思えない記録しかなかった。
 その為、その主張は立ち消えになり日本は”サードインパクト”を起こしたゼーレに加担した国と認識され世界の人々の憎悪をゼーレと二分した。自国の国民にさえそっぽをむかれ日本と言う国は存続することが危うい状態となっていた。何より一番ショックだったのは戦略自衛隊である。彼等は自分達の行動こそが”サードインパクト”を防ぐことだと思っていたのが逆に手助けしていたことが。それがクーデターとでもいうべき行動に走らせた。これが止めとなり事実上、日本と言う国が消えた。戦略自衛隊はNERV統合軍陣営に投降し解体吸収、組み替えられた。こうして元日本はNERVにより掌握されることになった。各NERV支部を持つ国でも上層部についてはゼーレと何らかの繋がりがあり、ゼーレの企みに着いてもある程度情報を掴んでいても何もしなかったと下から上に突き上げをくらい同じように支配体制が瓦解しNERV統合軍陣営に組み込まれていった。日本においては政府がNERVになってもそれ程混乱はしなかった。人々の日常は日本政府のときと変わらず、何よりNERV本部の上層部は同じ日本人であったことがあまり無茶をされないという安心感につながっていた。

 NERVは元々秘密主義となっていたがそれも人類を混乱させたくないということ、何よりゼーレとの事があってそうせざる終えないことであり今やその制約もないことで情報としてはかなりの部分を公開するにいたった。これにより、より多くの情報を得た民衆は反ゼーレ感情を高めていった。各支部や国でも上層部は追放、刷新され随分風通しの良いものとなった。

 一応の体制が整おうとした矢先、ゼーレより先制攻撃がNERV本部に成された。中枢であるNERV本部を壊滅させる事で世界がNERV統合軍陣営に傾きかけてる天秤をゼーレ側に強引に戻すべくN2兵器による絨緞爆撃を行ったのである。これは至極真っ当な作戦ではあった。なぜならNERV統合軍vsゼーレとなる初期の時点では”サードインパクト”直前という事もあり迎撃システムは全て失われ防衛機構は皆無という何ともお寒い状況だったのである。

このままではNERV本部の壊滅は必至であった。この攻撃を凌ぐにNERVが所有していた”EVANGELION”によるATフィールドの防御しかないといえる状況であった。しかも、MAGIの予測では3機必要であるという結果である。とにかく、この攻撃を凌がなければゼーレは何らかの方法で”人類補完計画”を再び実行し人類の未来が閉ざされてしまうだろうことは明らかであった。

 それは限りなくゼロに近い賭けであった。なぜならばNERVが”使徒戦役”時に所有していた零号機から参号機までの”EVANGELION”については積み重なる激戦、”サードインパクト”により全て失われていたからだ。だが、幸いにも”EVANGELION”が無い訳ではなかった。そう、ゼーレ側が所有していた量産型”EVANGELION”五号機から壱拾参号機までの9機は”サードインパクト”が収束した時、NERV本部を攻めていた為その周辺部にて活動停止していたのをNERVが全て鹵獲したのだ。鹵獲といっても未だろくな復旧作業も行われていないので収容できず本部周辺に移動させダミープラグを抜いていただけである。最も直ぐに起動できる状態の機体は3機しかなくその内でもまともな状態のものは壱拾弐号機、一機のみであった。また、起動するに当たっても従来(NERVが所有していた)の”EVANGELION”には人の想い”魂”が込められていたがゼーレの量産機型”EVANGELION”はダミーシステムによる自律稼動していた為、シンクロしたとしても何が起きるか判らない最悪、開発時にあった事故、つまり取り込まれる可能性があったのだ。

また、”EVANGELION”を起動できる可能性を持つものは今までに5人しか選出されておらず、ファーストは行方不明、セカンドは”サードインパクト”直前の量産機との戦闘による負傷で生死をさまよい、フォースは”使徒戦役”時の事故により負傷し療養のため現場におらず、フィフスにいたっては死亡とその時点で起動できるものはサードのみであった。

 ・”EVANGELION”が最低でも3機なければ防衛不可。
 ・シンクロ時できるかもわからない。
 ・起動の可能性があるものは唯一人。

と言う2重3重に悪条件が重なっており、成功すれば正に奇跡と言ってよかった。
 しかし、生き残るためにはやらざる終えない状況でもあった。”使徒戦役”時から元々綱渡りのように勝利を掴んできたNERVはあきらめていなかった。少なくとも、あきらめない限り成功の可能性があるのだということを身をもって知っていたからである。
 そして、サードチルドレンはその低い可能性を見事に掴んで見せたのである。正に奇跡であった。ゼーレが投入したN2兵器はMAGIが予想していたよりも多く、とても”EVANGELION”1機のATフィールドで防ぎきれるものではなかったが、サードの爆発的なシンクロ率上昇、300%オーバーという状態と、稼動できないはずの量産型残り8機が活動を開始し、サードの駆る”EVANGELION”を中心として八方に移動し始めた。一時、この現象(再びサードを依り代とした量産機による”サードインパクト”)を起こすためのゼーレの罠だったのかと危惧されたがそうではなかった。サードが発生させるATフィールドを拡大、強化し始めたからだ。こうしてNERVは防衛することができたのである。
 が、これには続きがあったのである。ゼーレによるN2兵器の攻撃で発生たエネルギーを利用して量産機達は失われたはずの”EVANGELION”四号機を出現させたのである。その後、量産機は活動を停止させた。
 なおこの現象については誰も説明が付けれなかった。ただ、サードのみが何が起きたのか正確に理解していたようだった。サードの「成功できたのは友達のおかげです。多分、皆には理解してもらえないかもしれないけど。それに四号機は今後、困難に立ち向かうであろう僕の為に用意してくれた友達からの贈り物なんです”という興味深い発言があった。それがどういう意味なのかは誰にも正確に把握できた者はいなかった。最もNERV上層部ではサードが友達といい、このようなことができる存在はただ一つ。フィフス・・・。結局のところ謎は謎のまま解決はしなかった。

 四号機の回収後、調査により四号機はダミーシステムではなく通常のシンクロシステムが使用されていたためダミープラグではなくエントリープラグが使用されていた。そして、中には2人の少女が乗っていた。(この場合は漂っていたが正解)その片方に着いてはNERVの者達も首をひねった。なぜなら彼等が良く知っている人物・・行方不明とされたファーストチルドレンであったからだ。もう片方は逆に完全に不明である。ただ、ファーストチルドレンと同じくアルピノで髪は薄紫、瞳は緑色である事からフィフスの例もあってただの少女ではないだろうと予想され警戒が必要とされた。その一環として二人の遺伝子を調査した結果、彼女達は人間であるとしか判断できなかった。これはファーストの出自についてよく知るNERV上層部に驚きを与えていた。そんなことはありえないと。では、ファーストチルドレンでは無いのか?と言われると一概にそうとは言えなかった。なぜなら、”サードインパクト”後、人としての姿を取り戻した中に遺伝的障害を持っていた者のその障害が無くなっていたり、フォースチルドレンの様に四肢を失っていたものがその欠損部分を取り戻していたりといった現象が起きていたからだ。ファーストチルドレンも”サードインパクト”前は実に不安定な遺伝子を持っていて健康体を維持するためには定期的に処置を受けなければならなかっただが、先の例に則れば自らの不安定な体を安定した体に再構築した可能性が高かったのだ。そうであるならば以前の身体データなど役に立たないことになる。判断するには本人の意思を確認するほか無かった。

 救出後、意識回復を持ってファーストチルドレンと思われる人物の意思を良く見知っていた者達に確認した所、確かにファーストチルドレン本人であるとしか思えない事が確認された。もう一人は記憶喪失らしく何も分からなかった。

また、回収された各”EVANGELION”については驚くべきことが報告された。全ての”EVANGELION”は生体部品の所は完璧に修復されており、機械部分を修理すればいい状態だと言うのである。四号機に至っては何時でも出撃可能の状態であると。そしてなにより、常にS2機関が微弱ながら稼動しており、自らの肉体の維持を行っているようだと考えようによっては恐れる現象を引き起こしていた。”使徒戦役”時でも”EVANGELION”はパイロットなし若しくはパイロットの意識不明時に勝手に動いた事があるのである。つまり、今ある”EVANGELION”も常にS2機関が稼動していることから考えて、何時ひとりでに動いてもおかしくないと考えられた。それが危険だとして破棄も考えられたが、それこそやぶ蛇になる可能性が高いとされ、その考えについては却下された。

ゼーレによる作戦はNERVを壊滅させるどころか戦力を強化させることになったのであるがNERV統合軍陣営にしてみれば諸手を上げて素直に喜べなかった。”EVANGELION”という強力無比な力を手には入れたがそれに伴う不安も手にしてしまったからだ。

NERV上層部は使えるものは使うと今までにもとってきた方針で行くことを決定した。デメリットよりもメリットの方が大きいと判断したからである。

 デメリットとしては”EVANGELION”がいつ起動して勝手に動き出すか分からないというものだが、これにしてもNERV上層部は”使徒戦役”時の初号機とて同じだった、何を今更恐れるのかと目をつぶれるレベルだと豪胆な事を言ってのけた。

 メリットとしては維持費、戦闘による電力が必要ない等、”EVANGELION”の運用時のコストが余りかからないことが上げられた。”使徒戦役”時には莫大なコストで維持されていたが今後の戦いではそうはいかないのでこれは大いに歓迎された。

 問題は他にもあったパイロットがいないと言うことである。”EVANGELION”の特性上パイロットを選ぶというものがあり、パイロットの数をそろえることが事実上不可能ではないかと言うことであった。パイロットについては一名、サードチルドレンが確認されている。がサードチルドレンは若干15歳の少年である。子供を戦場に出すことにためらいを覚えていた。”使徒戦役”の時は人類が生き残る為に仕方なかったと割り切ることもできた、が、今回はそうではない。人と人との戦い、戦争なのだ。戦場に出れば確実に人を殺すことになるのである。その事についてはサードチルドレンから見れば何を今更という意見であった。

「僕はもうあの戦いの時に人を殺しています。それにあの戦いでエヴァによる力を示してきました。それは敵にしてみれば僕がこの戦争に参加しようとしまいと脅威としか映らないんです。僕が狙われるのは遅かれ早かれ確定しているんです。ならば、僕は身を守る為に、そして未来を勝ち取るためにも戦います。ゼーレは人類としての未来を閉ざそうとしていますから。あの時は流れに任せて戦う事しかできなかった、でも今回は自分の為に戦うんです。だから、気にしなくって結構です。それに、僕が出ることで犠牲が少なくなるなら・・」

 サードチルドレンが開いた右の手のひらを見ながら言い、ギュッと右手を握ってNERV上層部の者たちを見あげた時の目の光がサードチルドレンの戦争への参加を認めた。

 しかし、状況から行ってNERVは早急に体制を整える必要があり、その中でも最大戦力たる”EVANGELION”の稼動機数を増やすことが必要であった。サードについては既に了承を得ていた為、最低でも一機は稼動できる。しかし、今後の戦いは厳しいことが予想される為それではつらい。その為、シンクロできる可能性が高い者、つまり、既に選出済みのフォースまでのチルドレン(重症状態のセカンドを除く)、”EVANGELION”にエントリーされていた記憶喪失の少女、そして、チルドレン候補として集められていた2年A組の面々が集められ、事情を説明し、承諾した者のみを起動実験に参加させた。
 起動の可能性が高いファースト、フォース、記憶喪失の少女は覚悟ができていたのか直ぐに承諾した。2年A組の面々については数名から承諾を得た。
 起動試験の結果としては受けた全員がシンクロすることには成功した。ただし、起動指数に達した人間はそんなにいなかった。確実にシンクロし戦闘に耐えれうるレベルにあったのはやはりチルドレンとして選出されていたファースト、フォース、そして記憶喪失の少女であった。後は起動指数には達していたものの戦闘には耐えれないレベルの者が一名であった。セカンドについては昏睡状態より回復し、意識を取り戻してはいたがとても動かせるような状態ではないので起動試験には参加していないが結果から見てもセカンドもまた起動できることが予測された。

 この起動実験により、記憶喪失の少女をシックススチルドレン、あとの一人をセブンスチルドレンとして選出し、正式パイロットとして登録した。起動指数に満たなかった他の者たちは見送られた。

 各チルドレンにはシンクロ率のバラつきや相性があるのか特定の機体しか起動できないなどあったが。特に4号機にいたってはサードのみシンクロ可能で普通ならエントリーされていたシックススだけがシンクロできるというならまだ納得できるのにと言った謎まで有った。逆に誰にでもシンクロしたのが九号機であった。最も使えればいいという状況なのでその謎については放置された。以下の内容はNERV統合軍の上層部にもたらされた実験報告である。

ファースト・・・四号機以外の機体にシンクロ可能。シンクロ率はどの機体でも大体80%前後で可能。
セカンド ・・・負傷のためデータ無し。
サード  ・・・全ての機体にシンクロ可能。シンクロ率は全て99.89%。
フォース ・・・五、九、壱拾壱号機にシンクロ可能。シンクロ率はそれぞれ25%、37%、29%。
シックスス・・・四号機以外の機体にシンクロ可能。シンクロ率はどの機体でも大体80%前後で可能。
セブンス ・・・九、壱拾参号機にシンクロ可能。シンクロ率はそれぞれ14%、13%。

 特筆すべきはやはり、サードであった。あらゆる”EVANGELION”に望みうる最高のシンクロ率を叩き出していた。”使徒戦役”時に”正にエヴァンゲリオンに乗るために生まれたようだ”と言わしめたその素質が遺憾なく発揮された結果であった。次にファーストとシックスス、この2名の結果はほぼ同じであった。同じような雰囲気、人とは違った外見が、彼女達の本質は同一のものではないかと感じさせていた。フォース、セブンスについてはだいたい予想される範囲内での結果に収まっていた。多少、他のチルドレンに比べるとシンクロ率に見劣りするが一応は起動指数には達しており、使徒相手であれば心許無いが訓練すれば伸びてくるだろうしこれから予想される戦いにおいては十分な戦力なる。

 これにより、稼動できる”EVANGELION”は10機のうち5機が使用できるようになった。”使徒戦役”時でも零号機から参号機までを独占していれば世界を滅ぼせるだろうと言わしめた”EVANGELION”がNERV統合軍陣営に戦力として加わったのである。この時より”統合戦争”は本格的に激化して行った。

 この”統合戦争”については元々からゼーレ側よりも早期に”使徒戦役”や”サードインパクト”、”人類補完計画”の情報を公開し、世間の大半を味方につけていたNERV統合軍に有利に動いていたがそれでもなおゼーレに与する勢力はかなりあり油断のならない状態がしばらく続いた。なにより、テクノロジーについては古代から伝わるオーバーテクノロジーを有するゼーレに分があったからだ。ゼーレには”EVANGELION”を新たに建造、投入できるほどに余裕が無かったがそれでも”EVANGELION”に対抗するものをいくつか用意しNERV統合軍の攻勢を凌ぎいでいた。だが、そのテクノロジーの優位も崩れ去ることになった。

 ”ウィスパード(囁かれし者)”の登場である。”ウィスパード”達はその言葉通り頭に突然知識の泉が湧き、突如として様々な分野の才能に目覚め、凄まじい成果を挙げる年齢がわずか十台以下の者達の事である。特に技術分野については現時点での科学を飛躍した理論を展開し、ゼーレの有するオーバーテクノロジーに並ぶものを、場合によっては凌駕するものを開発することができた。逸早くその存在を知ったNERV統合軍陣営は積極的に”ウィスパード”達を保護しその能力を遺憾なく活用した。彼等の活躍により加速度的にNERV統合軍陣営に勝利をもたらしていった。ゼーレが”ウィスパード”達の重要性に気づいた時には既に遅く殆どの”ウィスパード”がNERV統合軍陣営に保護されていた。

 ”ウィスパード”達の登場により加速度的に戦局は収束していった。それだけではなくこの頃にはセカンドの傷病よりの復帰、エイトス、ナインスの選出、ゼーレより脱出してきた科学者や”ウィスパード”達の中に死んだとされていたフィフスが復活と”EVANGELION”のほとんどが稼動できるようになっていた。

 ”統合戦争”も始まってから約3年経って漸く終局を迎えようとしていた。いかなゼーレであっても”EVANGELION”に対抗する手段についてはそう多くはなかった。”EVANGELION”はゼーレの保有するロストテクノロジーにおいても最高位にあるものであったから。”ウィスパード”達でさえ”EVANGELION”を超える存在又は打ち破るものを作り出すことができないでいる。

 ゼーレ側もNERV統合軍側も決着の時が近づいているのを双方共に感じていた。そして、その時が訪れた場所はゼーレの本拠地、相手は”EVANGELION”3機であった。NERV統合軍側も稼動9機を擁しているもののここに投入できたのはファースト、サード、シックスス3機のみ。他はゼーレの陽動というべきものもあって世界各地に散らばっていた。この場の戦いが決着つくまでには駆けつけれないだろう状態であった。戦力的には互角。だがNERV統合軍側には時間が無かった。ゼーレの本拠地では”リ・ジェネシス”と呼ばれる計画の最終段階を迎えようとしていた。それは低い確率ながら成功すれば”人類補完計画”が実行できるのだ。ただし、失敗すれば”セカンドインパクト”に匹敵する”フォースインパクト”が起きてしまうのである。どちらにしても人類の破滅が待っていた。

 最初は互角の戦いであった”EVANGELION”の性能ではゼーレ側がパイロットの技量ではNERV統合軍側が勝っていた。一進一退の戦いが続く中、遂に均衡が崩れた。NERV統合軍側のファースト、シックススの駆る2機のS2機関が突然停止し非常電源に切り替わってしまったのだ。出力が落ちることで次第にゼーレ側が優勢になってゆく。そして、遂に電源が切れ2機が無力化した。
 これによりゼーレ側3機、NERV統合軍側はサードの駆る四号機のみであった。だが、ゼーレ側は油断しなかった。なぜなら、逆に追い詰められたのはゼーレ側であったからだ。NERV統合軍側の”EVANGELION”2機のS2機関が停止したのは偶然ではない。S2機関を停止させる振動波とでも言うべきものをこの戦いの場に張り巡らしているからだ。それがゼーレの切り札であった。ゼーレ側の”EVANGELION”のS2機関が停止しないのは防護処理が行われているからであった。だがこの防護処理も完全に遮断できず影響を抑えるだけであり停止時間までが長いだけであった。しかし、サードの駆る四号機のS2機関は停止する兆候すら見せず逆に活性化してすらいた。サードの駆る四号機がこの作戦に参加していなかったらゼーレに勝利が訪れていただろう。この”統合戦争”が始まって常にサードの駆る四号機によりゼーレの逆転の目は潰されてきた。いや、”使徒戦役”時での事から始まる一連の出来事が全てサードによって阻まれてしまっていたのである。ゼーレにとってサードは疫病神であった。3対1の戦いでありながらも徐々にゼーレは押され遂にサードの駆る四号機の勝利による決着がついた。同時期、本拠地に潜入していたNERV統合軍の特殊部隊により”リ・ジェネシス”計画の阻止に成功した。ゼーレ首脳部は計画が瓦解した事を悟り、自決、本拠地の自爆が成された。

 こうして2年近くに渡って行われた”統合戦争”は終結し、その副産物的な形で人類初の統合政府が誕生した。統合政府の運営については全てが直ぐに丸く収まるわけではなかったが概ね順調に行われ軌道に乗りつつあった。”サードインパクト”後の疲弊した人類にとっては物資の配分など最適に行う事ができる形であったからだ。これにより、各地の復興も急速に行われるようになった。ゼーレに関する事後処理も未だ末端部分にあった組織が残っており全てが解決できていなかったが大規模な活動もできない状態であった為、それ程問題ではなかった。

 終戦から約4ヶ月経った頃、突如として世界を揺るがす大事件が発生した。”使徒”の襲来である。最初に発見された時は未確認生物(UMA)とされ監視するに留まったが、都市部に上陸することが予想されると攻撃を開始した。が、攻撃はUMAに届かなかった。それは絶対恐怖領域”ATフィールド”であった。こうして、”使徒”と認定された生物は念のため配置した”EVANGELION”四号機によって殲滅された。しかし、”使徒”はこれだけとは考えられなかった。今回は早期発見ができた事で被害を最小限に抑えることができたが今後も同じように発見できるとは考えられなかった。直ちに迎撃体制を整える必要があった。
 だが、実の所ゼーレとの最終決戦の際に件のゼーレの”EVANGELION”対抗兵器により四号機を除いて全ての”EVANGELION”のS2機関が停止状態となっていた。その原因はNERVの技術部が必死の努力にも関わらず未だ掴めずにいた。このような状態の”EVANGELION”では拠点防御はできても能動的な攻勢はできなかった。そして、”使徒”は”使徒戦役”時ならまだ向かってくる場所を特定できた。だが、今回現れた”使徒”はそうではない。もう、向かってくる原因となったモノは存在しないからだ。現に”使徒”はNERV本部を目指すことなくアメリカ本土へと侵攻していた。目的が分からない為、次に現れた時も同じ場所を目指すとは限らず実に頭の痛い問題となった。とりあえず、”EVANGELION”を配置するにしてもそれなりの設備、つまり大量に電力を消費する為、それを供給できる能力のある場所に限られていた。”使徒戦役”時の第3新東京市では”EVANGELION”を稼動させる専用の電源施設があったぐらいなのだから。それに、警備上の問題もある。野ざらし状態にしておいたら、ゼ−レ残党等によるテロ行為により”EVANGELION”が破壊される可能性がある。パイロットが常時シンクロできるはずないのだから警備の整った場所が必要なのだ。待機時の”EVANGELION”を収容できる施設のある場所となるともう殆んどない。NERVの本部、支部ぐらいである。それに”EVANGELION”を輸送するにも様々な問題がある。世界全体に迅速に行動する事が要求されても輸送機ではあまりにも遅い。”EVANGELION”が直接向う方が早いからだ。そうなって来ると分散配置するにしてもNERV施設のある場所は偏っているため、状況打開に期待できるものではなかった。

 こうなってくると”EVANGELION”四号機を駆るサードチルドレンに頼らざるおえない。後は監視網を強化させ、できるだけ早期発見し、初動が早くできるようにするしか方法はなかった。後は、ゼーレ側が用意していた”EVANGELION”対抗兵器を用意するぐらいであるがあいにくとこれらのデータに関してはその多くをゼーレ本部の自爆と共に失われており、鹵獲した現物を解析するも難航を示しており早々に配備する事は難しかった。また、この”使徒”の侵攻はゼーレ残党の仕業ではないかという疑惑もあり、そうなると同時侵攻も考えられた。

 NERV統合政府は”使徒”の再侵攻については”フォースインパクト”の可能性は無く、その原因についてはゼーレ残党による仕業の可能性が有るとし、”使徒”に対する対策も同時に発表された。”フォースインパクト”の脅威なくても公開されている今までの”使徒”との戦いの情報から”使徒”が暴れれば通常の軍隊では歯がたたない以上、襲われる地域にとっては切実な脅威となると世界中で認識された。特にどこに現れるか解らない事が危機感を募らせた。また、これに伴いゼーレ残党狩りが各地で活発化した。

 ”使徒”の侵攻については大体、週に1回のペースで世界のどこかに出現した。最初こそ被害がでたものの、時が経つにつれ対抗兵器の実用化、運用の洗練化、出現パターンの分析により出現確立の割り出し、S2機関が復活した”EVANGELION”の順次投入、何より”統合戦争”が始まってから開発が進められてきた簡易型”EVANGELION”及びその支援兵器の実用化で各地域に”使徒”に対抗できる戦力が整い殆んど被害が出ないようになっていった。

 簡易型”EVANGELION”についてはある条件を満たしていれば大抵の者はある程度のシンクロ率を出しパイロットになれるというものだった為、正式型と違って比較的楽にパイロットの確保ができ、大きさも正式型に比べて一回り以上小さく建造コストも正式型に比べ十分の一ぐらいとそれほど掛からず、なおかつS2機関を搭載しており、普段使用されないときは、S2機関を利用して配備する街の電力供給源とすることができるよう設計され維持費もかなり抑える事ができる等といい事ずくめであった。もちろん欠点もある所詮、簡易型であるので正式型には敵わないし、単独では”使徒”を撃破できない。だが、正式型が派遣されるまでの時間稼ぎは十分でき、要求は満たされていたため、急速に配備されていった。
 簡易型”EVANGELION”の基になったのは”EVANGELION”九号機である。理由としては既に選出されていた9名のチルドレン全員とシンクロするという特性を、また、過去においてシックスス、セブンスが選出されたシンクロ実験においても起動指数が満たせず正式に選出されなかった者達のすべてが他の機体よりもわずかであるにしろ数値が高かった事に技術部が着目した事に始まる。結果を見ると九号機に関しては誰でも数値は別としてシンクロできるのではないかと予測されたのであった。こうして、ダメもとでも試してみる価値はあるとまずはNERV職員でも比較的若く志願した者達でシンクロ実験を行った。その結果起動指数は満たさなかったものの、シンクロできた者とできなかった者が出てきたのである。この結果に技術部はどんな要素がシンクロできる条件なのか参加した者達にアンケートを実施した。共通項があるのか判断するために。アンケートをMAGIに分析させた結果、一つだけシンクロする者達に共通する項目があった。それは性交をしたか否かである。この項目は技術部の誰かが冗談で付足したものであった。これを真に受けるわけではないが前進するためにも本当にそうなのか試してみる必要があると志願者の二次募集を行い結果をみた。結果、その共通項は正しかった事が証明されていた。それでも信じられなかった技術部の一部有志により性交前、性交後のシンクロ実験を行いそれが正しい事が実証された。この後はNERV技術部や複数の”ウィスパード”の汗と涙により開発が推し進められ漸く実用化されたのである。なお、この簡易型”EVANGELION”はそのパイロット選出の特性上”ユニコーン”と呼ばれることになった。

 様々な経緯で漸く”使徒”迎撃の体制が整った事で負担の掛かっていたサードチルドレンは心身の健康を理由に退役を希望し、予備役に配属という形で一応、受理されNERVを去った。


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注)新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。






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