土曜日。
あの昨日の昼休みから打ち解けて、なんとか普通に会話ができるくらいになった。
昨日の朝のあれからどうなることかと心配していたものの、解決以上になったのでよかった。
でも流石に仁志君や美樹ちゃんと喋っているように軽快というわけでもないらしい。
例えるなら、あまり喋らない人と話しているって感じ。
やっぱりあの二人には敵わないのだろうか。
人としてその付き合いの長さはそれほどにまで大きいものなのだろうか。
と、最初はぎこちないのをどうにかしようと思うだけであったが、それが自分も知らない間に高じていた。
その高じた気持ちが何に変わるかといえば他でもない好きだと想う気持ち。
でも、まだそういう風に変わりつつあることを私は気付いてもいなかった。
それで、昨日の朝はあんな風に終わってしまった。
結果的にはあれのおかげというものもあるのだろうけども。
昨日のことがあって少なくとも昨日の朝よりも普通に喋る事ができるだろう。
そう思って今日もまた誘ってみることにした。
着替え終わっていた私は階段を降り、玄関のドアを開ける。
育人君は既に外に出ていて、ちらつく雪を眺めていた。
「おはよ〜」
「おはよう」
「よかったらさ、今日も一緒に行かない?」
と、早速誘ってみる。
「いいけど……」
なんだか、反応がイマイチ。
「え、何かあった?」
「いや、別に何もないよ」
でも本当に何もないのだろうかと心配になる。
「ん、そう?ならまた三十分後ね」
「う、うん」
と、なんとか約束をとりつけた。
それから三十分後。
あのソファに座って時が経つのを待っていた私は近くに置いておいたカバンを持ち、廊下を抜ける。
そして玄関のドアを再び開ける。
またもやさっきと同じように育人君の方が早かった。
「待った?」
「いや、今出てきたところ」
「それじゃあいこ」
「うん」
ノリがいいというかなんというか、とりあえず昨日よりもそんな感じだった。
「育人君は冨田パークって行ったことあるの?」
「ん〜小さいときに行ったみたいなんだけどよく覚えてなくて」
覚えてないのか……。
近くだからそこにどんなものがあるか訊こうかと思ったんだけど、それなら仕方ないか。
「へぇ……。そういやさ、去年のクリスマスイヴにもこうして雪が降ってなかった?」
あの日は、美樹ちゃんが遊びに来た日。
たしか二回目だったと思う。
「降ってたと思うけど……。たしかその日って、美樹が遊びに行ってなかったっけ?」
そう、遅いから見に出たら美樹ちゃんが育人君と話していた。
「そうそう。マフラー編み終わったって言ってたような……」
「マフラー?」
「あれ、知らない?」
「うん」
育人君はあの美樹ちゃんが編んでいたマフラーを仁志君にあげたことを知らないらしい。
「仁志君がマフラーしてたでしょ?」
「うん。え、あれって美樹が?」
「そうそう」
「へぇ、買ったのかなぁと思ってたけど。ああ、だからあの時あんなこと訊いていたんだ」
「そう。でもあの二人いつ会っているんだろうね」
「さぁ、知らないけど」
「そういや、遊園地でもあの二人一緒?」
「たぶんそうだと思うけど……」
あの二人が一緒に行動するとなると私は育人君とということになる。
ならこの間考えていたことはその通りだということになる。
遊園地なんて場所で二人でということは……デート!?
そりゃ、実際こうして二人で来てるけど……。
なんだか、あの二人が急に遊園地行きを持ちかけた理由がやっとわかった気がした。
初めからそのつもりで……。
別に育人君なら構わないけど……。
そう思いつつも、それに対する不安と、戸惑いが襲う。
気付くともう学校についていた。
「あっ、じゃあまたあとでね」
と、育人君に一時の別れを告げ、颯爽と教室へと走った。
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