第三話(S) 日課
翌日朝早く起きた私は、着替えて一階へ降り、家の玄関へと向かう。 今日は新しい学校へと転入する日。 どんな人がいるのだろう。 でも友達になったと思ってもすぐにまた転校する事になるのだろうけど……。 それはさておき、私は毎日朝早く新聞を取りに行く事が日課だ。 日課というよりも任されていると言った方が正しいのだろう。 そして玄関の鍵を開ける。 カシャッ 玄関の扉を開けると右隣の家の玄関のところにパジャマ姿の男の人が立っていた。 年はちょうど同じ位。 背丈は向こうの方が四、五センチ位高い。 この人がお母さんの言っていた人だろう。 もしかしたら同じ高校に通っているかもしれない。 それなら挨拶くらいはしておいた方が良いだろう。 そう思って頭を下げる。 それに合わせるかのように男の人も頭を下げた。 そして男の人はそのまま私を見つめる。 何か用でもあるのかと待っては見るものの何もない。 このまま待っていてもしょうがないし、とりあえず新聞を取りに行こう。 そう思って歩き出すと男の人も歩き出した。 結局何だったんだろうと、気にはなるもののポストへと向かう。 ポストは隣の家と同じ赤いもの。 ちょうどかまぼこに棒でもつけたかのような形。 新聞はその中に収まらず、半分ほど外に出ている。 だから横についている蓋も半開き。 雨の日は濡れそうだ。 そう思い、新聞を抜くと玄関へと向かう。 玄関の扉を開け、家の中へ入ると奥の部屋からお母さんが出てくる。 「昨日言ってた、隣の同じ位の年頃の人って男の人?」 「ええそうだけど……なんで知ってるの?」 「新聞を取りに行くときに偶然出会っちゃって……」 「へえ、もしかしたらお父さんと同じ格好だった?」 「え……?パジャマ姿だったと思うけど。なんで?」 「だって家のお父さんって会社に行く前までずっとパジャマのままでしょ?」 「たしかに……」 「男の人ってそういうものよ」 「そういうものなの?」 「そういうもの、そういうもの」 そう言ってお母さんは二階へと上がっていった。 そういうものなのかなぁ……。 そう思って台所の扉を開けるとパジャマ姿のお父さんがイスに座っていた。 「おはよう」 「おはよう……」 やっぱりそういうものなんだと思いなおし、自分もイスへと座る。 そうして、新しい学校へ転校する日の朝は始まった。 この時はまだまさかあの人と同じクラスになろうものなど思ってもいなかっただった。 |