第二十話(I) 偶然?

「それでさ、この遊園地はどう?」
「いいところだと思うけど……」
「ならよかった」
先生とその家族が南ゲートのほうへ出たあと仁志と美樹に突然話しかけられた。
すっかり先に行ってしまったと思っていた二人がここにいたのは何故かとも思うけれども。
それこそ偶然なのだろうか。
ともかくあれからしばらく四人でベンチに座って話しこんでいる。
「それより育人、久し振りに二人だけで話さないか?」
二人だけで……か。
そう言えば最近仁志と二人だけで話すことがないし……。
「別に構わないけど?」
「なら、向こうのベンチに行こう。そう言うことだから美樹、あとはよろしく」
「任せといて」
よろしく……ってどういう意味だろう?
とりあえず仁志と共に一つ隣のベンチへと移動する。
「それで……どうなんだよ?」
「どうって何が?」
「そりゃ皐月ちゃんとだよ」
「どうって言われても……」
「だって二人っきりって初めてだろ?」
「いやそうでもないけど」
勿論、仁志は朝新聞取りに行くときに出会うとか学校に来るときに一緒に来ているなんて知るはずがない。
ならそう言うのも無理ないだろう。
「そうでもないってどういうことだよ?」
「え、ちょっとね」
「ちょっとってなんだよ?」
「別にどうでもいいじゃないか」
「なんだ、教えてくれないのか」
「また、機会があったらその時にね」
「その時っていつだよ……」
「さぁ……。それよりここに美樹と来たことあるわけ?」
「ああ……一度だけな」
「それって何時頃?」
「中一くらいだったと思う。そのときは初デートで……」
「へぇ……」
二人が付き合ってるって言われて出したのはたしか小六の終わり頃からじゃなかっただろうか。
それから中一までデートといえるデートはしてなかったということか……。
「そのときは初めてのデートだったから二人とも緊張しててあまり喋れなかったけどな」
仁志と美樹がお互いに緊張しているっていう状況が今ではまるで考えられない。
二人とも付き合っているというよりも友達としてお互い和んでいるって感じがする。
だからそれほど二人が一緒にいるってことに違和感を感じない。
こう付き合ってることを感じさせないような。
周りの雰囲気にとけ込んでいるとでも言うのだろうか。
それに引き換え僕は……この通りだ。
今だそうしていることに違和感を感じる。
「それ以来ここには来てなかったから、また来たいなって美樹とな」
「へぇ……」
「そのついでに育人と皐月ちゃんを誘ったんだけど……」
どっちがついでなんだか分かったものではない。
「それでどうだ?上手くいってるか?」
「えっ、うん。一応」
「それならよかった。誘ったかいがあったしな。さてそろそろ戻るか?」
「うん」
と、仁志から美樹との昔話(?)を聞いたあと再び北ゲート側の元のベンチへと戻ってくる。
それから四人でいろいろと話した。
「さてと、そろそろ行くか」
「じゃあ二人ともまた五時にね」
そういうと仁志と美樹はまた颯爽と去っていってしまった。
そのとき、時計の針はちょうど十二時を差していた。

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