第一話() 隣の家に

-それは幾年前の冬ほどのことだった-
「ジリリリリリリリ……」
僕は三野木育人。
富緒柚(としょゆ)高校一年生でバドミントン部に入っているのだが……。
「ジリリリリリリリリリリ……」
さっきよりも大きな音で目覚ましが鳴る。
またボタンを押す。
そして三度寝……。
「おい、育人!早く起きてこないか!」
あの声はお父さんだ。
そうして眠た目を擦り擦り目覚ましの針を眺める。
八時……。
寝ぼけているのだろうともう一度目を凝らして見る。
八時!
学校が近いのでいつも家を出る時間は、八時十分。
全て用意を済ました上でだ。
ゆっくりしてはいられない!
急いで着替え朝ご飯は食パン一枚を咥え、家を飛び出した。
「いってきま〜す」
学校までは走ればそう遠くない。
でも、学校の手前はものすごく急な坂になっているのだ。
その坂を死に物狂いで駆け上がりようやく学校が見えてきた。
高校が近くにあってよかったと改めて思う。
そういえば、新聞は誰が取りにいったのだろう……。
いつも早起きな僕は一番に新聞を取りに行く。
少し目を通したところでお父さんが起きてくるころ。
そうなると取りに入ったのはお父さんか。
それにしても今日は何故起きるのが遅かったんだ?
そういえば、昨日隣の家に誰かが引っ越してくると聞いてどんな人だろうかと想像してたんだっけ。
それで寝るのが遅くなって……。
今日にも隣の家に着くはずだろう。
そんなことを考えているうちに学校へとついた。
まだ始まるまで少しある。
校門を駆け抜け靴を素早く置き、三組の教室へと飛び込んだ。
ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン……
こうして、朝に急いでいた事はすっかり忘れてしまった。
しかし、隣の家に誰かが引っ越してくるという事だけはしっかりと頭に残っていたのだった。
そうして、教室へと飛び込んだ瞬間、先生が入ってきた。
ちなみに先生の名前は「大継 拓士」
先生がいないところでは呼びつけで呼ぶ人もいて頭に染み付いてしまった。
きっとこれからも先、忘れないんだろうなぁ。
そんなことを考えていた僕は弁当を忘れていたことに気付いてはいなかった。
一時限は英語。
これは僕の得意教科だ。
テストとなるといつも九十点はマークしている。
そこで、将来は本を訳してみたいと思っていたりもする。
英文の新聞を読んだりはしないが、英語の本は結構読むほうだ。
某人気本などは映画化したが、それも見に行った。
言ってしまえば字幕が邪魔なぐらいであった。
そして、英語の授業の内容も簡単に理解できるものであった。
そして英語の授業も終わり、二、三時限も終わった。
四時限は現代文。
こっちは全教科一の不得意教科だ。
中学、小学校と国語の教科だけはどうしても馴染めなかった。
だからといって言い回しが可笑しいとかそういうことはないのだが。
でもって、英語とは逆でテストでは見事に下から数えたほうが速いような位置。
全く持って恥ずかしい限りだ。
とりあえず、ノートは取っているもののなにのことなのかチンプンカンプン。
そんなこともあって、海外へ行きたいとも思っている。
うして、昼休みとなった。
弁当が生憎購買には売っていないこの学校では、家から持ってくるのが一般的。
今日もいつものようにカバンを開ける。
あれ?
何時も入っているはずの弁当が無い。
もう一度朝のことを思い出してみる。
……。
急いでてカバンに入れることを忘れていたことを思い出した。
うなれば、誰かに分けて貰う他無い。
そこで大の親友の仁志に分けて貰う事にした。
「仁志、弁当忘れたから分けてくんない?」
「弁当を忘れたのかよ、しょうがねぇなぁ。分けてやるか」
んなこんなで弁当を分けて貰った。
そうして五時限が終わり、午後から何かあるようで部活なしで帰宅だ。
そして、隣に誰が引っ越してくるのかが気になった僕は家へと急いだ。

    (I)   2→

タイトル
小説
トップ