不耕起栽培・無肥料(無施肥)栽培
不耕起栽培とはその名のとおり、畑を耕さない栽培方法です。不耕起栽培によって、無肥料(無施肥)栽培も可能になります。シャンデエルブではまだ無肥料まではいかず、少肥料栽培ですが。
例えば、森林の木は肥料を与えなくても育っています。木は根から養分を吸い上げ、葉を茂らし、やがて葉は落葉して地表で腐り腐葉土になって養分になります。この循環が何年も繰り返され、ふかふかの腐葉土に覆われた肥えた森林の土になります。これを木の自己施肥能力といいます。
同じことが草原でも起こります。根から養分を吸い上げて育った草はやがて枯れます。そして地表で腐り再び養分へと返ります。これが何年も繰り返されて、養分に富んだ土が出来上がります。これも次世代への施肥能力です。
しかし、ただ単に養分が循環しているだけでは肥えた土にはなりません。循環することによって養分が増えていく仕組みが必要です。これには地表面で落ち葉が腐ること、地表面で枯れ草が腐ることが必要です。森林の土は耕しません。草原の土も耕しません。ですから、枯れ葉や枯れ草は地表面で微生物により分解されることになります。
なぜ地表面で腐ると養分になるのでしょうか?
落ち葉や枯れ草は、ほとんどセルロースという炭水化物です。炭水化物を微生物が分解するということは、単にエネルギーを得るというだけではなくて、得たエネルギーを使って自己増殖するということです。微生物が増殖するためには、炭水化物以外に窒素化合物やその他の元素も必要になってきます。微生物は地表面(空気中)では、空気中の窒素をつかってタンパク質や核酸など、必要な含窒素化合物を合成します。やがて、微生物が死ぬと微生物の体の成分が肥料(養分)となります。
では土を耕したらどうなるのでしょう?
落ち葉や枯れ草の炭水化物を微生物が分解して、エネルギーを得、微生物が増殖するためには、窒素化合物やその他の元素が必要なのは同じです。微生物はその窒素化合物をどこから得るかといえば、土の中です。ほんらい植物が吸収するはずの窒素化合物を微生物が吸収してしまい、植物からすれば、窒素養分の欠乏になります。これを窒素飢餓といいます。窒素飢餓になれば、植物はよく育たなくなります。(自然農法の人が肥毒という現象は、窒素飢餓です。排除したいものを”毒”という言葉で片付けてしまうことは好きになれません。)
森林や草原の養分の循環という大きなとらえ方をした場合、土を耕すと窒素化合物は増えていきません。ところが、土を耕さなければ、落ち葉や枯れ草が微生物によって分解されるときに、空気中の窒素が取り込まれ、窒素化合物が増えていきます。無肥料(無施肥)栽培は”無”から”有”を生む魔法の栽培方法ではありません。耕さずに枯れ草を積み重ねていくことによって、微生物によって分解され肥料を生むという、植物の自己施肥能力を真似た栽培方法です。これが理想ですが、土が肥えていくのには時間がかかります。作物が育つレベルに土が肥えていくまで、少し肥料を入れることも仕方ないと思っています。 2009.05.24
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