パイオニア10号は、内部太陽系を離脱して木星を探査した最初の探査機である。アトラス・セントール・ロケットに搭載されたパイオニア10号は、フロリダの宇宙センターを飛び立った後、1973年12月3日、木星の上層大気まで約13万1500kmの距離を接近通過した。

パイオニア10号が撮った木星の画像
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この時点で探査機は、木星の重力を利用するスウィングバイで加速し、飛行速度を秒速37.4kmから45.64km(太陽系を脱出できる速度)まで高めた。1997年1月1日には、太陽から67AU(天文単位:1AU=約1億5000万km)の距離にあり、1年間に2.6AUの速度で、恒星間空間につながる太陽圏の末端領域に向かってパイオニア10号は飛行を続けた。ボイジャー1号や2号、同僚機のパイオニア11号とは逆方向を辿っている。
パイオニア10号は、68光年先の牛座のアルデバラン星を目指して飛行し続けている。目的の星までは約200万年を要することになる。
パイオニア10号の本体は高さ36cm、周囲71cmの正六角形の箱型で、その上に直径2.4m、深さが46cmの高利得パラボラ・アンテナが取り付けられている。このアンテナの裏側には、微小隕石探知センサー・パネルが取り付けられている。パイオニア10号の本体からは長さ6.6mブームが1本と3mのブームが2本伸びている。長いブームの先端には磁力計、短いブームの先端には、出力150WのRTG(ラジオ・アイソトープ熱電対発電器)が2基ずつ取り付けられている。
箱型の本体の中には、プラズマ検出器、紫外線計、赤外線放射計、宇宙線計、荷電粒子計、結像偏光計、ガイガー計数管、小惑星・小隕石探知センサー、星感知器(恒星カノープスを捉える)、太陽センサー(2基)などの科学機器が収納されている。このほか中利得アンテナおよび全方位性の低利得アンテナが装着されている。
パイオニア10号に搭載された
3基の推進機が探査機の回転速度の制御と速度の変更を制御し、推進機のパルシングや点火は地球からの司令により制御される。地球との交信は、低利得アンテナ、中利得アンテナ、受信機、および高利得アンテナともう一基の受信機のセットで行われる。探査機の温度は、摂氏−23〜38度の間に保たれる。送られてくるデータは、NASAのDSN(深宇宙通信網)により秒速2048バイトで受信される。
パイオニア10号は、惑星間磁場および木星の磁場を観測したほか、木星のオーロラおよび放射線帯を観測した。さらに木星と衛星イオの大気を測定し、木星と衛星を撮影した。
初の木星の探査はほぼ計画どおりに終了した。その後パイオニア10号の追跡や送られてくるデータの処理は続けられたが、予算不足を理由に1997年3月31日を以って終了した。以降、1998年1月7日に打ち上げられた月探査機ルナー・プロスペクター・プロジェクト(1999年7月31日に終了)に組み込まれ、データの回収が散発的に行われたが、2001年4月28日を以ってパイオニア10号との交信は途絶えた。
その後、2003年1月22日に122億キロの彼方から微弱な信号が届いた。しかし、パイオニア10号の推進燃料はほとんど尽きているため、この信号が最後となるようである。
パイオニア10号(および11号)の機体には、人間男女と太陽系の中の太陽と地球の位置を描いたプラーク(記念銘板)が取り付けられている。

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