マリナー9号

打ち上げ時期 1971年5月30日
軌道上の重量 558.800kg
  マリナー9号のミッションには、打ち上げに失敗したマリナー8号のミッションで予定されていた火星の地表の70%を撮影する作業が追加された。撮影は、当初ある一定の地域を5日毎に、次に狭あいな地域を17日毎に行われた。
 極地域は特に高い分解能で撮影された。マリナー9号の地表の撮影で、エベレストの3倍以上もある高さ2万6000mのオリンポス山、米国のグランド・キャにオンをはるかに凌ぐ長さ5500km、幅100〜180kmのマリナー渓谷、水の氷と二酸化炭素が凍ったドライアイスからなる両極の極冠の詳細な画像、50日間も続いたすざましい砂嵐の発生から終りまでを収めた画像、そして2つの衛星、フォボスとデイモスの画像が得られた。

オリンポス山のカルデラ マリナー渓谷の迷路のような地形

 マリナー9号の本体は、さしわたし1.27m、高さ45.7cmのマグネシウム製のフレームで構成された8角形の箱型で、上のフレームからは、幅90cm、長さ2.15mの4基の太陽電池パネルが伸びている。対角の2基のパネルは端から端までで、長さは6.89mになる。更に、2基の推進タンク、長さ1.44mの低利得アンテナが装着されたマスト、高利得パラボラアンテナなどが上のフレームに取り付けられている。下のフレームにはスキャン・プラットホームが装着されており、それには広角と狭角カメラ、赤外線干渉計、紫外線分光計、赤外線干渉分光計などの科学機器が取り付けられている。探査機全体の高さは2.28mである。通信、指令、制御を受け持つ電子装置は、本体の中に収納されている。

 1971年5月30日、アトラス・セントールSLV−3C型ロケットに搭載されたマリナー9号は、地球上空3億9800kmの火星軌道に向かって直接打ち上げられた。打ち上げの13分後に、マリナー9号を搭載したロケットがブースターから切り離された。4分後に太陽電池パネルが展開された。その36分後に、星感知器のセンサーが太陽に固定され、カノープス星へのセンサーの固定はそれから1時間後に完了した。火星軌道に乗るための中間軌道修正を6月5日終え、11月14日、5ヵ月余りの飛行後マリナー9号は火星軌道に到着した。マリナー9号は、地球以外の惑星を周回する初の探査機となった。

 マリナー9号が火星軌道に到着した時には、9月22日に発生した砂嵐が惑星規模に拡大していて、2万6000mと太陽系最高峰のオリンポス山と3つのタルシス火山の頂き以外は何も見えなかった。そのため、地表の撮影は嵐の和らぐ12月末まで延期された。

 マリナー9号は、近火点1398km遠火点1万77916kmの長楕円軌道で火星を周回しながら観測を行った。観測の目的は、火星の惑星としての形状、地形、質量の分布、重力場を含めた地形の精密な観測および上層と地表大気の気象観測であった。そのための 科学機器としては、侠角カメラ、広角カメラ、赤外線放射計、紫外線分光計、赤外線干渉分光計が搭載されていた。

 マリナー9号は、10月27日まで350日間、火星を698周して観測を行い、合計540億ビットのデータを地球に送ってきた。データには7329枚の火星全体の画像をはじめ、火星大気の組成、密度、気圧、気温、重力および地形の測量データが収められていた。

 マリナー9号は姿勢制御を司るガスが尽きたため、1972年10月27日に機能を停止した。約50年間、火星軌道を漂流した後、火星大気の中に落ちていくことになる。マリナー9号の観測に基づいて作成された火星の地形図は、次の火星探査機バイキング1号と2号(1997年に打ち上げられた)の着陸地点の選定に利用された。




マリナー・シリーズ