マリナー2号
打ち上げ時期 1962年8月27日
軌道上の重量 202.80kg

マリナー2号は、アトラス179D・アジーナBロケットに搭載されて打ち上げられた。マリナー2号の目的は、金星をのフライバイ(接近通過)と金星の大気、磁場、荷電粒子環境の探査および金星の質量の測定、更に、金星の接近通過前後の惑星間物質(惑星間に存在する塵、太陽からの荷電粒子や中性ガス)探査であった。
 マリナー2号の本体は、さしわたし1.04m、高さ36cmの六角形の平べったい箱型である。その中にはマグネシュウム製の6本のシャーシが嵌め込まれていて、科学機器を制御する電子装置、通信機、姿勢制御スラスターと推進用の燃料が充填されたガスボトル、発電制御装置、バッテリーそしてロケットエンジンなどが収納されている。上側の基部の上には、連続遠隔測定が可能な出力3Wの送信機、高利得アンテナおよびピラミッド形のマストの上に取り付けられた円筒の全方位アンテナがあり、地球との交信を司る。マリナー2号は、本体の底からマストに取り付けられたアンテナまでで高さが3.66mになる。マリナー2号の本体からは、幅76cm、長さが1.83mと1.56mの太陽電池パネルが伸びていて、その先端には地球からの指令を受信する指令アンテナが取り付けられている。

 科学機器のうち、磁力計はマストの全方位アンテナの下に、粒子検知器はマストの中間に宇宙線粒子検知器と並んで取り付けられている。宇宙塵検知器と太陽プラズマ検知計は上の基部の端に取り付けられている。マイクロ波輻射計と赤外線干渉計および放射計は、直径48cmのパラボラアンテナにしっかりと取り付けられている。放射計はマリナー2号が金星にごく接近した時にのみ作動する。

 打上げの9分16秒後に、マリナー2号を搭載したアジーナ・ロケットが点火され、高度118kmの地球を周回する待機軌道に乗った。それから18分14秒後アジーナ・ロケットの2度目の点火で、マリナー2号はロケットから切り離され、打ち上げから26分3秒で地球の重力圏を脱出した。2枚の太陽電池パネルが打上げの約44分後に展開された。2枚の電池パネルには、合計9800個の太陽電池が貼られており、196Wの出力があった。

 9月4日、地球から238万kmの距離にあるマリナー2号に、目標の金星から6万km以内を通過するための中間軌道修正の指令が、ジェット推進研究所(JPL)のゴールドストーン深宇宙追跡管制所から送られた。9月5日、3時間45分に及ぶ遠隔制御により軌道修正を終えた。この軌道修正から72時間後、飛行軌道の追跡の結果、マリナー2号は金星から3万5000km以内を通過することが確認された。9月8日、マリナー2号の姿勢制御が突然失われた。搭載されたスター・トラッカー(星感知器)が太陽と地球を見失う事態が発生した。この原因は微小隕石が衝突したため、搭載されたスター・トラッカー(星感知器)が太陽と地球を見失ったためであった。約3分後、このハプニングはジャイロスコープの操作で解決した。

 10月31日、太陽電池パネルの中の1枚の出力が突然下がったため、科学観測が中止され、1枚のパネルで必要な電力の供給ができるか、1週間確認試験が行われた。この結果、供給電力量が増加していることがわかり観測は再開された。11月15日、このパネルは再度故障して、完全に機能を停止した。しかし、残りのパネルで十分な電力を賄えるほど太陽に接近しており、むしろ太陽放射光のためにマリナー2号の本体が過熱される心配が出てきた。地球出発から109日後の12月14日、マリナー2号は金星から3万4773kmを最接近点として通過し、史上初の近接観測に成功した。12月27日、金星の軌道を離れ、て太陽を回る人工衛星となった。

 マリナ2号は金星とは逆にゆっくりと周回して、金星の18の地点を観測した。この観測で、金星の地表の温度摂氏425度と気圧は地球の90倍もあることがわかった。また、大気は二酸化炭素が多く、上層約60kmまでは常に雲で覆われており、大気の外側の温度は摂氏−15度、大気中の水蒸気は地球の大気の1/1000以下であることもわかった。金星には、磁場のないことも判明した。マリナー2号は、金星に接近するまでの間にも、惑星間粒子や太陽風の観測も行い、金星の惑星空間には常に太陽風がながれ込んでおり、周囲の宇宙塵の密度は地球近傍領域よりもずっと低いこともわかった。その他、マリナー2号の慣性飛行軌道を分析した結果、金星の質量の精度が高まった。

 その後、マリナー2号の追跡管制は続けられたが、1963年1月3日の交信を最後に、主電源経路のスイッチが切られ129日間の追跡の幕が下りた。マリナー2号のミッションは、距離にして8643万kmという世界初の超遠距離通信の記録を打ち立てた。マリナー2号は、エンジンの燃焼時間を算出する方程式にマイナス記号がつけ忘れられたために爆破されたマリナー1号のいわば予備機であったが、上記のように誇るべき成果を挙げた。



マリナー・シリーズ