マリナー10号

打ち上げ時期 1973年11月3日
軌道上の重量 502.40kg

 マリナー10号は、一つの惑星(金星)の重力を利用して加速するスウイングバイにより目標の惑星(水星)に到着した最初の探査機であり、水星に遭遇した唯一の探査機でもある。

 マリナー10号の本体は、8つのフレームで仕切られた8面体の箱型で、それぞれに電子機器が収納されている。本体のさしわたしは1.39m、高さは45cmである。 本体の上には、97cm長さ2.7mの太陽電池パネルが2基取り付けられている。
直径1.37mの全方位性の低利得アンテナは、55cmの焦点距離を持つ、表面がハニーコウムのパラボラ型反射鏡である。低利得アンテナを使い、マリナー10号はS帯とX帯での送信が可能になる。本体の上にはカノープス星感知器が、太陽電池パネルの先端には太陽光を感知するセンサーが取り付けられている。本体の内側は、上部と底部が多層の耐熱被膜で覆われている。打ち上げ後は、シェード(日遮け)が展開され、太陽に向いた機体の側面を保護する。

 マリナー10号の目的は、水星と金星の大気、地表および物理特性の測定で、そのための観測機器として、TVカメラ、磁場とプラズマの測定器、赤外線放射測定器、紫外線分光器および無線科学検知機が搭載されていた。

 1973年11月3日の打上げ後、マリナー10号は約25分間地球の待機軌道にあり、それから太陽を周回した後金星の軌道に向かった。金星への飛行でマリナー10号は、星間物質、太陽風などの観測を行った。12月24日に最初の軌道修正を行い加速して慣性飛行を続けた。1974年2月5日に再度軌道修正を行い、金星から4200kmまで最接近して、TVカメラ、磁力計、大気光紫外線分光計で観測を行なった。これと同時に金星の重力を利用したスウィングバイで、水星に向かうよう軌道を変換した。

 3月16日、軌道修正と姿勢制御を行いながら、大気紫外線分光計により水星を観測し、TVカメラで全体のモザイク画像を撮影した。3月29日、水星の表面から704kmの最接近距離を通過しながら第1回目の接近観測を行った。


マリナー10号が撮った水星のモザイク画像

 9月21日、4万7000kmまで接近して、第2回目の接近観測を行った。第3回目の接近観測は、翌年3月16日に327kmの距離から行われ、300枚の画像を撮影と磁場の観測(微弱であることが確認された)を行った。


マリナー10号の撮った水星の代表的な地形のカロリス・ベイスン

 マリナー10号は、これ等3回の接近観測を含め、合計4165枚の画像を撮影した。この他、マリナー10号の赤外線干渉計の観測により、水星の昼間の地表温度は摂氏350度に達して鉛も溶けるほどの焦熱地獄となり、太陽に最も近づく近日点では摂氏400度にも上昇することがわかった。また水星の夜には、地表の温度は摂氏−160度に下がる極寒の世界であることが確認された。水星には大気が存在しないこともこの観測でわかった。

 水星の観測は1974年3月16日以って終了したが、マリナー10号の追跡は、姿勢制御ガスが全て尽きた1975年3月24日まで続けられた。



マリナー・シリーズ